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山姥切国広極めたらもう一人増えました

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: レジス
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君の名は……


わからない、そう答えると審神者は困ったように眉を寄せた。
「……あの、気が付いたら『私』が目の前にいて。本当に何も分からないんです」
いきなりあの山姥切国広の仲間を助けて欲しいと言ってもさらに困らせるだけだ。
だから私の心の整理がつくまでは記憶が無いってことで納得してもらおう。
「その体になった理由に心当たりも無いってことね?」
「はい」
「じゃあ仕方ないわね。しばらくウチで預かりましょう」
「預かる?」
「えぇ、顕現した状態で倒れていたという事は恐らく貴女には主がいるはずよ。だから主が見つかるまでここにいるといいわ」
「あ、ありがとうございます!」
私に主なんていないんだけどね。
でも本当なんで顕現した状態で倒れていたんだろう?
普通に鍛刀からの顕現でも良かったはず。
まぁ今になっては理由を聞こうにもあの山姥切国広とコンタクトを取る方法が無いからどうにもならないけど。
「となると呼び名が必要ね」
「山姥切だと俺と被ってしまうからな」
「え?えっと……お任せ、します」
楽しそうに呼び名を考える審神者に断ることも出来なかった。
「女の子の国広だから国姫なんてどうかな?」
「ひ、姫ぇ?!」
「いいじゃないか国姫」
「おま、自分の呼び方じゃないからって!!」
「じゃあ国子とかでもいいのか?こいつのセンスは最悪だぞ?国姫が出てきたのが奇跡なくらいだ」
「えぇ……」
国子はさすがに嫌だ。
諦めるしかないのだろうか。
審神者も期待するような目でこちらを見ている。
「じゃ、じゃあそれで……」
「よろしくね国姫!私は祭(まつり)!こっちは山姥切!」
「俺は紹介しなくてもいいだろ」
審神者、祭さんは嬉しそうに私の手を握って笑った。
「よろしく、お願いします」
そう言うと外から廊下をどたどたと歩く音が近づいてくる。
何かを悟ったのか山姥切国広は少し愉快そうな表情で廊下のほうを見た。

「おい、偽物くんが偽物くんを連れ帰ったとは本当か?!」

バシン!と音がするほど強く障子を叩き開けたのは銀の髪が美しい青年だった。
「あぁ、長義。今帰ったぞ」
「今帰ったぞ。じゃない!」
「じゃあただいま」
「あぁおかえり。じゃなくて!!」
なんだろう今のやりとり、コントかな?
青年と山姥切国広のやり取りを見て祭さんは笑っている。
これは日常的なやりとりのようだ。

「この期に及んで偽物くんが増えるなんてどういう……偽物くんじゃ、ない?」

青年の視線が私のほうへ向いて、困惑の表情になる。
というか偽物くんってなんだろ。
首を傾げて見ていると青年は困ったように私から視線を外して祭さんの方を見た。
「国姫、こちらは山姥切長義。貴女の本歌よ」
「長義……?本歌?本歌……」
「あ、主?この偽物君みたいな子は一体……」
山姥切って言ってるし本歌ってあれかな。山姥切国広の写しコンプレックスの原因で本物の山姥切。
だから山姥切国広に対して偽物くんって言ってるのか。
珍しく頭フル回転したぞ。
「この子は国姫。しばらくウチで預かることになったからよろしくね」
「預かるって君……」
「長義、皆に紹介もかねて大広間に案内してあげて」
「あ、あぁ。分かったよ」
まだ言いたいことがありそうだったが山姥切長義は審神者に丸め込まれた。
なんだろうこの人ちょろいのかな?
「……行くぞ」
そう言われて私は席を立つ。
ちらりと山姥切国広の方を見ると言って来いと言われてしまった。
どうやら祭さんとまだ話があるらしい。
そういう関係だし積もる話もあるでしょうね。と思い私は山姥切長義の後について部屋を後にする。

****

「主」
「えぇ、わかってる。国姫はブラック本丸の刀かもしれないわ」
「例のブラック本丸は?」
「三日前と同じよ、証拠不十分で摘発できていないわ。春がブラックだってわかってるのに摘発できないって悔しそうに言ってた」
「そうか……こんな状況なのに国姫を受け入れてくれて感謝する」
「あら。山姥切が珍しく拾いモノをしてきたんだもの。捨てるわけないでしょ?」
「あいつは野良犬じゃないぞ」
「わかってるわよ」
「国姫が記憶を取り戻した時、どうなるかわからないが……」
「そこはまぁ大丈夫でしょう。私の勘は大丈夫だって言ってるもの」
「主の勘は当たるからな」
「えぇ、じゃあ私たちも行きましょうか」
「そうだな」

****

山姥切長義に連れられて大広間というところに来た。
なんと驚くほど大量の刀剣男士がいる。
見たことの無い男士ばかりで驚いた。
祭さんはどれくらいの期間審神者をしているんだろう?
かわるがわる自己紹介されたがさすがに全部覚えきれないと言えば追々覚えていけばいいと山姥切長義は言った。
「皆―おまたせー!」
私達より少し遅れて祭さんと山姥切国広が入ってくる。
「今日は山姥切の修行お帰り祝いと国姫のいらっしゃい祝いにしまーす!」
ちょいちょいと手招きされたので祭さんの隣に立つ。
「はい。自己紹介!」
「え?!あの?!えっと!や、山姥切国広こと国姫です。よろしくお願いします!」
「いえーい!!」
祭さんの声に合わせるように皆がイエーイと言った。
ちょっと皆さんテンション高くないですかね?

こうして私はこの本丸にお世話になることになった。
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