十九章 正式謁見
翌日、ダジュールとクラウディアはレイバラルの王と王妃としてカーラ帝王、ルモンド・カーラ二世に正式謁見をした。
ダジュールはクラウディアを妻にした報告、これからも変わらない和平のために尽力を惜しまないこと、友好関係が続くようにとレイバラルから持ってきた品々を献上した。
クラウディアは昨夜の非礼を詫び、さらに手厚い看護をしてくれたことに感謝の意を述べる。
体調が戻ったことを喜び、是非この後の茶会にも参加してほしいとの言葉を受けた。
午後には歓迎パレードがあり、またその後には観光地への視察も入っている。
これでは自由に動けるのは夜中しかないというもの。
それに、クラウディアの体調を気にするダジュールは、歓迎パレードは休んだ方がいいと言う。
実はその間は王宮内の警備が手薄になるので、偵察するにはチャンスだと提案をした。
でも、クラウディアはともにパレードに参加することを望む。
「だって、堂々と街の中をみることができるのよ。偵察は王宮内だけじゃないから。できれば養父さんの家族も捜したい」
「そういうと思った。俺には隠密的な偵察はできない。それに関してはクラウディア頼りだ。すまない」
「だから、もう謝らないの。でも、ひとつだけ頼みがある」
「なんだ?」
「少しでいいから、肩を貸してほしい。重心をかけさせてもらえたら、休めるから」
「それでいいならいつでも。辛いとき遠慮するな」
ふたりは手を重ね、クラウディアは時折ダジュールの肩にもたれかかる。
その様子を見たカーラの宰相や大臣は体調不良なのに王妃の立場を優先する王妃という印象が強くなる。
彼らはそんなクラウディアをみて、とある人物を連想した。
まさか良かれと思ってしたことがクラウディアの危機を招くことになるとは、まだふたりは知らない。
滞りなく一日目の予定を終了し王宮に戻ったのは夕暮れをとうに過ぎた時間だった。
カーラは昼が長く夜が短い。
すでに夜の帳が空を覆っているので、レイバラルでの感覚でいえばもう真夜中を過ぎた頃だろう。
過密なスケジュールにしたのは、余計なことをさせないためかもしれない。
だからといって、諦めるつもりはない。
クラウディアはダジュールが湯浴みをしている間に少しだけでも偵察してこようと部屋を出た。
カーラ帝国の王宮は近年建て替えられており、元々は城を改築したものだった。
外見は近代的な王宮造りだが、中は時代を感じさせるような装飾品が残り、城の名残が色濃くある。
たとえば、聳えるような造りになっているとか。
地下には牢屋が残っているとか。
上の方には塔が残っていて、隠れ通路で行けるとか。
それらの情報を知らないままのクラウディアだったが、いくつもの建物に侵入しカルミラの宝石を盗む怪盗をしていただけのことはある。
少し造りをみただけでそれがどんな建物であるかがわかるのだ。
城が基盤となっているのであれば、かなり厄介である。
昔ながらの城は城主しか知らない抜け道が多く、まだ住人でさえ認識していない部屋も多い。
ようするに迷子になりやすいのだ。
来た方向、向かう方向だけはしっかりと覚えておかなくては、何かに追われて逃げる時にも迷い追いつめられてしまう。
慎重に王宮内を散策、いや偵察をしている時だった。
近づく足音に身を隠していると、こんな夜更けであるのにカーラ二世が廊下を歩いていた。
時折辺りの気配を確認しながら歩く光景に、クラウディアはなにかを感じ、後をつけることにした。
カーラ二世は奥へ奥へと入った後、隠し通路から階段で上へと向かう。
隠し通路を使ったのは一回だけではない、何度も隠し通路を使う。
さすがにこれ以上つけるのは危険と察し、引き返そうとした時だった。
「どうした、もう諦めるのか?」
去ろうとするクラウディアに声をかけてきた。
「隠れることはないだろう。姿を見せたまえ、クラウディア・レイバラル妃。いや、それとも別の名があるのかな?」
これはまずい!
クラウディアはカーラ二世の問いかけを無視、来た通路を戻ろうとした。
ところが行く手は壁で遮られてしまう。
「無駄だ。この通路は敵をおびき寄せるためのもの。今のおまえのように逃げ道を遮り孤立させそして捕らえる。なにが目的なのか、口を割ってもらうぞ」
クラウディアは身軽さを得意としていた。
少しくらいなら交わして引っかき回して逃げることができる。
しかし、カーラ二世は細い通路でも難なく動き、身軽なクラウディアの動きを薄暗い通路の中でも追ってくる。
剣を抜いて攻撃してくるのも、限られた幅の中で優雅にそして鋭い殺意を持ってクラウディアを意図も簡単にしとめたのだった。
「なかなかおもしろい余興だ。その動き、芸人かなにかか? さあ立て。そのキズは大したことはない。皮を少し切っただけだからな。俺についてこい。逃げようと思うなよ? レイバラル王の近くには俺の意のままに動く暗殺者が待機しているということを覚えておけ」
つまり、クラウディアの態度次第ですぐにでもダジュールを殺すことができると言っているのだ。
なにが友好関係だ。
なにが和平だ、停戦だ。
隙あらばいつでも攻撃できると言っているようなものだ。
これがカーラ帝国の帝王……
ダジュールはクラウディアを妻にした報告、これからも変わらない和平のために尽力を惜しまないこと、友好関係が続くようにとレイバラルから持ってきた品々を献上した。
クラウディアは昨夜の非礼を詫び、さらに手厚い看護をしてくれたことに感謝の意を述べる。
体調が戻ったことを喜び、是非この後の茶会にも参加してほしいとの言葉を受けた。
午後には歓迎パレードがあり、またその後には観光地への視察も入っている。
これでは自由に動けるのは夜中しかないというもの。
それに、クラウディアの体調を気にするダジュールは、歓迎パレードは休んだ方がいいと言う。
実はその間は王宮内の警備が手薄になるので、偵察するにはチャンスだと提案をした。
でも、クラウディアはともにパレードに参加することを望む。
「だって、堂々と街の中をみることができるのよ。偵察は王宮内だけじゃないから。できれば養父さんの家族も捜したい」
「そういうと思った。俺には隠密的な偵察はできない。それに関してはクラウディア頼りだ。すまない」
「だから、もう謝らないの。でも、ひとつだけ頼みがある」
「なんだ?」
「少しでいいから、肩を貸してほしい。重心をかけさせてもらえたら、休めるから」
「それでいいならいつでも。辛いとき遠慮するな」
ふたりは手を重ね、クラウディアは時折ダジュールの肩にもたれかかる。
その様子を見たカーラの宰相や大臣は体調不良なのに王妃の立場を優先する王妃という印象が強くなる。
彼らはそんなクラウディアをみて、とある人物を連想した。
まさか良かれと思ってしたことがクラウディアの危機を招くことになるとは、まだふたりは知らない。
滞りなく一日目の予定を終了し王宮に戻ったのは夕暮れをとうに過ぎた時間だった。
カーラは昼が長く夜が短い。
すでに夜の帳が空を覆っているので、レイバラルでの感覚でいえばもう真夜中を過ぎた頃だろう。
過密なスケジュールにしたのは、余計なことをさせないためかもしれない。
だからといって、諦めるつもりはない。
クラウディアはダジュールが湯浴みをしている間に少しだけでも偵察してこようと部屋を出た。
カーラ帝国の王宮は近年建て替えられており、元々は城を改築したものだった。
外見は近代的な王宮造りだが、中は時代を感じさせるような装飾品が残り、城の名残が色濃くある。
たとえば、聳えるような造りになっているとか。
地下には牢屋が残っているとか。
上の方には塔が残っていて、隠れ通路で行けるとか。
それらの情報を知らないままのクラウディアだったが、いくつもの建物に侵入しカルミラの宝石を盗む怪盗をしていただけのことはある。
少し造りをみただけでそれがどんな建物であるかがわかるのだ。
城が基盤となっているのであれば、かなり厄介である。
昔ながらの城は城主しか知らない抜け道が多く、まだ住人でさえ認識していない部屋も多い。
ようするに迷子になりやすいのだ。
来た方向、向かう方向だけはしっかりと覚えておかなくては、何かに追われて逃げる時にも迷い追いつめられてしまう。
慎重に王宮内を散策、いや偵察をしている時だった。
近づく足音に身を隠していると、こんな夜更けであるのにカーラ二世が廊下を歩いていた。
時折辺りの気配を確認しながら歩く光景に、クラウディアはなにかを感じ、後をつけることにした。
カーラ二世は奥へ奥へと入った後、隠し通路から階段で上へと向かう。
隠し通路を使ったのは一回だけではない、何度も隠し通路を使う。
さすがにこれ以上つけるのは危険と察し、引き返そうとした時だった。
「どうした、もう諦めるのか?」
去ろうとするクラウディアに声をかけてきた。
「隠れることはないだろう。姿を見せたまえ、クラウディア・レイバラル妃。いや、それとも別の名があるのかな?」
これはまずい!
クラウディアはカーラ二世の問いかけを無視、来た通路を戻ろうとした。
ところが行く手は壁で遮られてしまう。
「無駄だ。この通路は敵をおびき寄せるためのもの。今のおまえのように逃げ道を遮り孤立させそして捕らえる。なにが目的なのか、口を割ってもらうぞ」
クラウディアは身軽さを得意としていた。
少しくらいなら交わして引っかき回して逃げることができる。
しかし、カーラ二世は細い通路でも難なく動き、身軽なクラウディアの動きを薄暗い通路の中でも追ってくる。
剣を抜いて攻撃してくるのも、限られた幅の中で優雅にそして鋭い殺意を持ってクラウディアを意図も簡単にしとめたのだった。
「なかなかおもしろい余興だ。その動き、芸人かなにかか? さあ立て。そのキズは大したことはない。皮を少し切っただけだからな。俺についてこい。逃げようと思うなよ? レイバラル王の近くには俺の意のままに動く暗殺者が待機しているということを覚えておけ」
つまり、クラウディアの態度次第ですぐにでもダジュールを殺すことができると言っているのだ。
なにが友好関係だ。
なにが和平だ、停戦だ。
隙あらばいつでも攻撃できると言っているようなものだ。
これがカーラ帝国の帝王……
※会員登録するとコメントが書き込める様になります。