ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

METAL GEAR SOLID the ROCK

原作: その他 (原作:メタルギアソリッド) 作者: gekco
目次

第一話

6月7日、午前1時。
カリフォルニア州・サンフランシスコ上空―。
1機のコンバットタロンが、漆黒の空を静かに飛行していた。
その機内で、降下準備を整えた兵士が一人、タバコを吸いながら静かにそのときを待っている。
「降下地点に到達。システム正常、タービュランスなし。現在、降下条件に支障なし。」
機内のスピーカーから声が響く。
「スネーク、そろそろ時間だ。準備してくれ。」
やれやれ、とかぶりを振ると、スネークと呼ばれた男はゆっくりと立ち上がり、吸っていたタバコを携帯灰皿に落とした。
酸素マスクをかぶると、マスク内の無線から再び声が聞こえる。
「ザ・ロックにHARO(高高度降下、低高度開傘)降下で降り立つのは、たぶん君が最初で最後だろう。カッコよく決めてくれよ」
「オタコン、スカイダイビングじゃないんだ。」
そう答えると、スネークはハッチを開けた。
6月とは思えない冷たい空気が機内に吹き込み、ハッチの向こうに漆黒の空間が広がる。
「それじゃスネーク、幸運を。」
「幸運より休暇をくれ。」
そう言い残すと、スネークは漆黒の虚空へ身を投げ出した。
マスク越しでも感じられる、強烈な風圧の中で、スネークは今回の発端を思い起こしていた。


6月6日、午後21時。
スネークとオタコンが活動拠点としているコンバットタロン「ノーマッド」機内―。
「オタコン、俺たちは便利屋でも傭兵でもない。こんなミッション、引き受ける義理はないだろう。今回はパスだ。」
ミッション概要が記載された資料をテーブルに投げ出し、スネークはタバコを吸い始めた。
「そう言うなよ、スネーク。」
やっぱり断られた。そう思いながら、オタコンは話を続ける。
「僕らの活動、フィランソロピーのメタルギア監視告発活動には資金が必要だ。今回の件、報酬は悪くない。クライアントはアメリカ政府だからしっかりしているし、潜入任務は君の十八番だろう?」
「そのアメリカ政府に、メタルギアごと空爆で吹き飛ばされそうになったのは俺たちだ。第一、アメリカ国内のテロ事件ならアメリカ政府が自分でどうにかすればいいだろう。」
「そのあたりを、クライアント直々に説明してくれるそうだ。何せ、今起きているテロ事件の依頼だからね。向こうも必死なんだろう。そろそろ、通信が入るはずだよ。」
オタコンの言葉を待っていたかのように、通信音が機内に響く。
「ほら、噂をすれば、だ。こちらノーマッド、通信OKだ。」
「どこのお偉いさんだかな。」
そう言いながら通信モニターを見つめたスネークの目に、意外な人物の顔が映し出された。
「久しぶりだな、スネーク。元気そうで何よりだ。」
「大佐?」
かつて共に戦場を生き抜いた上官、キャンベル大佐。その顔に一瞬、表情を緩めたスネークだったが、すぐに険しい顔に戻った。
「オタコン、すぐに通信を切れ。どうせろくな依頼じゃない」
「まぁ待て、スネーク。今回の件、君にも関係のある話だ。それに」
キャンベルはニヤリと笑う。
「私と君との、仲じゃないか。」
大きくため息を吐くと、スネークはモニターに向かって座り直した。
「それで、何があったんだ?」
「君たちに送ったブリーフィング資料に記載した通り、サンフランシスコ湾に浮かぶ監獄島、アルカトラズが、現役の海兵隊員14名からなる武装組織に占拠された。知ってのとおり、ザ・ロックは今や観光名所だ。島を訪れていた観光客81名を人質にとり、VXガスを搭載した巡航ミサイル15基を武器に、アメリカ政府に脅しをかけている。」
「毒ガスミサイルだと?」
「島を乗っ取る前、海軍武器庫を襲撃して持ち去ったものだ。彼らは、アメリカ政府に現金1億ドルを要求、この要求が満たされなければ、人質全員を殺害し、サンフランシスコ市内にミサイルを撃ち込むと警告してきている。首謀者は・・・合衆国海兵隊、ハメル准将。フランシス・ハメル准将だ。」
「知り合いかい?スネーク」
そう尋ねるオタコンに、スネークは昔を思い起こすように答えた。
「ああ。俺がFOX HOUNDに入隊する前、海兵隊との合同訓練で教官だった男だ。」
「その前は、私とベトナム戦争を戦った戦友だよ。」
キャンベルが懐かしそうに付け加えた。その表情は、どこか憂いを帯びている。
「あのハメル将軍が・・・大佐、なぜだ。なぜ、ハメル将軍ほどの男が、こんなテロ工作を。」
「私にも理解できなかったが、彼の要求はこうだ。非合法作戦に従事し、見殺し同然に戦死した部下たちが、戦死の事実すら公表されず闇に葬られている。遺族には賠償金はおろか、埋葬式すら行われていない。この政府の過ちを公表し、遺族に正当な賠償金を支払う。1億ドルはその原資にする。」
スネークは絶句した。
新兵を虫けら同然に扱う教官しかいない中、ただ一人、人間として新兵に接してくれた人望厚いハメル将軍の顔が浮かぶ。
確かに、あのハメル将軍なら、戦死した部下の名誉回復のために蜂起することはあるかもしれない。
しかし、その男が、数万のサンフランシスコ市民に毒ガスミサイルを撃ち込もうとしている。
スネークの理解が追いつかない中、キャンベルは説明を続ける。
「彼らの要求まで残された時間はわずかだ。ホワイトハウスはこの要求には従わない方向で決定、人質もろとも空爆するのもやむを得ないとしている。」
「米軍が起こした事件だろう。米軍でカタをつければいいじゃないか。」
「すでにSael’s部隊が海中から潜入、人質の奪還と彼らの武装解除を試みたよ。そして先ほど、全滅した。一人を除いてな。」
「一人?」
「スネーク。君に依頼する任務は3つ。敵が保有するVXガスミサイルの発射能力を除去すること。人質を無事に奪還すること。そして、ハメル将軍率いる14名の海兵隊員を武装解除することだ。君が失敗すれば、14名の海兵隊員もろとも、81名の人質がアメリカによる空爆で命を落とすことになる。」
「あるいは、サンフランシスコに死のガスがばら撒かれるか。」
オタコンが付け加える。
「スネーク、VXガスは強力だ。微量でも吸い込めば死に至る。もしミサイルが発射されれば、サンフランシスコは廃墟と化すだろう。彼らの武装は、核武装に匹敵するものだ。」
「相手はSeal’sを全滅させるほどの実力者だ。首謀者がハメル将軍とあっては、米軍全体の士気にも関わる。スネーク、君にしか頼めない任務なのだよ。」
スネークは大きくため息を吐いた。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。