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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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制御

「だけど、今は教えないよ」
「構わないわ。東金朔夜の暴走を止められる手だてがあるというだけで今はいい。だけど、よく美沙子が認めたわね」
「そりゃそうだよ。朔夜が父さんの意識を飲み込んでくれたら半分力をそいだも当然だし。本体と半分の脳だって、東金の力を借りないことには蘇生もできない。それは俺も同じ。だけど、美沙子もバカじゃない。縢の人間を消して縢の持つ財力権力を手にしたって、誰も認めないし、むしろ警察の反感を買い、返り討ちにあうのはわかっているから、俺たちを殺すことはできない。結局はうまくやっていくしかないんだけどさ。別世界に介入しだした頃からその関係性が崩れだしている。それを、朱ちゃん、あなたに頼みたい」
「どうして私なの?」
「公平に対応してくれそうだから。俺、こっちに来て、誰かを傷つけたりした? 誰彼構わず殺したいわけじゃないし、そういうのにだって美学やポリシーみたいなのってあるわけよ。それと、結構、朱ちゃんのこと気に入っちゃったからさ、こっちの世界での縢秀星の思いでみたいなのを汚したくもないわけ。信じられないかもだけど」
「……そんなこと、ないよ」
「家族ごっこもそれなりに楽しかったよ。母親役がぜんぜんだったけどさ、極々当たり前の家族っていうの、俺、知らなかったから。それだけでも白旗あげる理由になる。それと、征陸刑事とも知り引きしたい」
「……なんだ?」
「東金美沙子、今、拘留中だったよね?」
「ああ」
「起訴できそう? 有罪にできそう? 東金財団を壊滅できそう?」
「起訴。有罪には追い込めるだろうが、財団壊滅は難しいだろうな。上層部の一掃、財団縮小、国からの援助なし、くらいにはなるだろうが」
「俺はどう?」
「少年法の適用は十歳までだ。赤ん坊の件までは少年法で守られるだろうが、それ以降は難しいな。難しいっていうのは、あんたがやった罪だと立証することがだ。凶器を提出したところで、今のおまえは殺しをした時のおまえではない。指紋なんかが違っているだろう。せいぜい、精神病んでるってことで病院送りだな」
「そうか。俺はさ、ただ父さんと普通の親子でいたかった。罪をもみ消してほしかったわけでも、入れ替わって長生きしたいわけでもない。縢の財産も別に。だけど、今はその財産と権力は手放したくない。俺と父さんが本来の体に戻り、普通の生活ができるまではそれなりのお金と時間がかかるからだ。そしたら、自主してもいい。それまでの時間、見逃してほしい。代わりに、警察が手にしていないだろう東金の悪事を証言する」
「悪くはない取引だがな、俺の一存では決められんな」
「やっぱ、そうか。そう都合よくはいかないか。じゃあ、朱ちゃんの方だけでいい。この世界が俺たちのいる世界に介入しないようにしてほしい。そして俺たちもシビュラの世界に介入はしないと約束する」
「わかった、とは断言できない。でも、そうなるよう善処はします。上と掛け合い、内通者を捜したり、やることはまだまだありそうね」
「……ああ、うん、そっか、そうだね。朱ちゃんにも立場ってものがある、ここで言えないこともあるか。いいよ、善処で。それで、俺はなにをしたらいい? こっちの世界に関わるなって条件だした手前、こっちの世界からきいてる奴らはすべて回収して連れ帰らないと」
「それだったら、縢くんが知っている内通者に聞くのが一番じゃない? もちろん、私たちも、内通者は誰だって聞いたりしない。それで、いいわね?」
 と朱はこの場にいる面々に同意を求めた。
 征陸は、
「まあ、同じ世界からきた者としては、回収して帰還するのは当然だな。見つけ方は各々あるだろうし、詮索しないって方向にしてくれると俺としてもありがたい」
 またチェ・グソンも、
「そうですね。私たちも同意です。とはいえ、私たちの組織からは私たち三人だけですので、お手伝いがあるのなら……という立場でいることにします」
 と立場はわきまえていると主張し、朱の同意に頷いた。
「それじゃあ、今日のところはここまでにしましょうか。申し訳ないけど、縢くんにはこのまま監視をつけさせてもらいます」
「……構わないよ」
「ありがとう。では須郷さん、お願いします。それと交代要員として狡噛さんにも手伝ってもらってもいいですか?」
「俺は構わないが……」
 といいながら、宜野座のことを見た。
 宜野座は「反対だ」と言ったが、
「人手不足なので。心配でしたら、狡噛さんと宜野座さんで対応してください」
 と、セットにされてしまい、宜野座は不服そうな顔を崩さなかった。
「唐之杜さんと六合塚さん、雛河くんが交代で朔夜の監視を。私と霜月監視官も適宜に交代で休みをいれます。それ以外は臨機応変に、人手が足りないところの補充に回ります。征陸さんたちも交代で休憩を入れつつ、補助要因として手伝っていただけると助かります」

 朱はそのように指示を出し、先に霜月に休むように言う。
「私はさっそく上とかけあってくるので、何かあったら連絡をしてください」
 そう告げて向かった先は、禾生局長のいる局長室ではなく、地下、それも地図に記されていない地下の下の地下だった。
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