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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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合流

「さて、これからどうするつもりだ、監視官」
と、まじめな顔で狡噛が朱に聞く。
「こちらの世界に入れれば通信手段はあります。まず、宜野座さんと連絡を取りましょう。そしてこっちに残った狡噛さんを……呼んでも大丈夫ですか?」
 朱は同一だけど別人であると今ではしっかり認識し区別できているが、目の前の狡噛はどうだろうか。
 同一だけど別人である狡噛同士が顔を合わせるというのはどうなのだろうかと、チェ・グソン、征陸、そして槙島の顔をひと通りみた。
 三人が出した答えは「問題ない」とのこと。
 なぜなら、この世界で狡噛は逃亡者でホロをまとわないといけないわけで、ホロをまとっていれば自分を見ている感覚にはならないからだ……とのことだった。
 それを聞いて安心した朱は、早速、宜野座に連絡を入れる。

「宜野座さん……今、戻りました。そちらはどうですか?」
 間違いなく宜野座に連絡をしているのだが、相手は沈黙している。
 その沈黙の後に、聞き慣れた声がポツリポツリと耳に届く。
「……本当に、常守なのか?」
「はい、常守朱です。お待たせしました。ほぼ解決への糸口を用意して戻りました。あとはこちらにいるあちらの世界の人の自白、もしくは裏付けが取れれば解決です」
「……そうか。こちらも進展があった。情報交換をして共有したい。今、どこに?」
「自宅です。それで、まだ私は拉致されたままになっていると思うので、ここからはでられません。できれば、宜野座さんが出向いてくれませんか?」
「……常守、俺が単独で行動できるわけがないだろう?」
「わかっています。狡噛さんはまだ須郷さんのホロを?」
「ああ。須郷はここにいるという設定で動いているからな」
「こちらは須郷さんも戻っています。私の無事と須郷さんの入れ替わりを同時にしたいので、そこにいる狡噛さんには霜月監視官のホロをまとって行動してもらえませんか? その間、霜月監視官には身を隠してもらうしかないのですが」
「……それを、俺に説得しろと?」
「……ええっと、六合塚さんにお願いしてもらって、でも無理でしょうか?」
「……わかった。やれるだけはやる。もし、霜月が自分が行くと言ったらどうする?」
「それならそれで構いません」

 その十数分後、宜野座と霜月に扮した狡噛が朱の部屋を訪ねた。

※※※

 宜野座が自分の知る狡噛を目の前にした。
 できれば二度と顔を合わせたくない人物でもあり、またその逆の感情も持っている。
 無事でいたことが嬉しい。
 だが、それを表に出すことはなかった。
 ただ、「災難だったな」とだけ声をかけた。
 続けて、
「槙島聖護……?」
 と、意外な人物がいたことにも驚く。
「あの、宜野座さん。この槙島さんは……」
「わかっている。同一であって別人、なんだろう?」
 宜野座は自分を落ち着かせるように数回深呼吸をし、空いている場所に腰を下ろした。
 宜野座のあとに続いて入ってきた、霜月のホロをまとった狡噛は、霜月の姿と声のまま、
「チェ・グソン、遅い!」
 と、不満を口にする。
「だいたい俺は執行官というものがどんなものなのか、深く理解していないし、須郷の人物像も知らない。この数日は長かった……」
「すみません、狡噛さん。でも、待たせただけの収穫はあります」
「らしいな。槙島さんまでがくるってことは、相当なものなんだろう?」
「あ……槙島さんの場合は、身を隠すにはこちらにいた方が都合がよかっただけってことなんですけどね」
「……え?」
「ま、まあ。なにより、無事に乗り切れていたようでよかったですよ。で、こちらがこちらの世界の狡噛さん。どうです、もうひとりの自分をみた感想は」
「……チェ・グソン。そんな野次いれられるくらい余裕ぶっこいてたんなら、さっさと来い」
「あ~、怒らせてしまいましたか」
 そんなやりとりで場が和んでいく。

「さて、それぞれの緊張がほぐれたところで、情報の共有といこうか。嬢ちゃん、公安に残っている執行官と分析官とも共有をした方がいいんじゃないか?」
「……そうですね。私がすると話が脱線しそうなので、宜野座さん、六合塚さんたちに連絡を」
 きっと安否を心配していた唐之杜あたりは、朱の帰還を喜びながらも気遣うだろう。
 今はわずかでも時間が惜しい。
 とくに、公安内部に協力者がいるのだから、長い通話は傍受される可能性がある。
「ここにくる前、直接、唐之杜たちには説明をしてきた。唐之杜が海外サーバを経由してのネット通信を可能にしてくれている。といっても違法に近いため、常守が許可したということにしてしまった」
「いいえ、それで構いません。今も繋がっていますか?」
「ああ……」
「では、はじめましょう」

「まず、俺たちの方で得たことを先に報告させてくれ。どうやら、そっちの持っている情報の方が大きそうだ。なら、小物の方から提供した方がいいだろう」
 宜野座は、朱たちを見送ったあとの行動を要点だけまとめて説明をした。
 局長命令で狡噛追跡をしたこと、確保手前までいったが忽然と姿が消え、終えなくなったこと。
 それは何かの力が働き、別世界に飛ばされたのではないかと感じたこと。
 さらに、局長命令の数々に不審な点があること。
 そして、縢秀星の行動に疑わしいところがあること。
 もしかしたら、局長はすべてを知りながら、知らないフリをして自分たちを駒として使っているのではないか……ということを告げた。
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