ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
目次

見えてくる真実

「じゃあ、話を戻そう」
 槙島はひと口、水を口に含み飲み込む。
「飛ばされた狡噛くんをチェ・グソンが保護、そして連れ帰れば問題は解決するはずだった。縢秀星も飛ばされていたというのはイレギュラー。なにより、征陸刑事も飛ばされている……あの女はなにがしたいのか、まったくわからなくなった。だから、チェ・グソンが持ち帰る情報だけが頼りだったんだが……」
「槙島さんでも、縢や征陸さんのことはわからないんですね」
「だけど、仮説はたてられるかな。縢が飛ばされたこど事件性を疑うよね。というか、事件性を疑ってほしいという流れにするには、縢と同じ世界の刑事かいればいい。どの世界も刑事は特別だ。刑事がいうならと疑いもせず鵜呑みする。そうだったんじゃないかな?」
「ええ、その通りよ。仮に疑ったとしても、この世界のことを知らない私たちにはなにが真実でなにが偽りなのかはわからない」
「そう、今、常守監視官がいったこと、そのままですよ。そして、常守監視官と執行官をわずかでも引き離したかった。できれば別世界に……」
「つまり、私たちが作り上げた偽りごとはハレているってことね。その上で彼らは乗っかり、騙されたふりをし続けている。だとしたら、残っている彼らが危険だわ」
「その通りです。だが、仮説の域を出ないので、結論は征陸刑事の結果を待ちましょう」
「あの、ひとつ、聞いてもいいですか?」
「どうぞ」
「人が変身することは可能でしょうか?」
 朱は東金朔夜のこと、朔夜を父と呼ぶ秀星のことを話した。
「それ、チェ・グソンもみたの?」
 と槙島が問う。
「すべてではありませんが、秀星が朔夜をパパと呼んだのは事実です」
「そこだけみたんだね」
「キミたちは多重人格というのを知っているかな?」
 朱は書物で読んだ程度、狡噛と須郷も同じ、チェ・グソンも詳しくは知らないが耳にした程度だと返した。
「別の人格が現れると姿も少し変わることもあるらしい。だけど、そうだね。一番現実的なのは、本当に朔夜と秀星は親子だってことじゃないかな。征陸刑事待ちになるけど、僕の読みが正しければ……答えは少しだけ待ってもらえるかな、常守監視官」
 朱は静かに頷く。
 ここまできたら、推測程度の情報はいらない。
 確実な証拠だけを持ち帰り、早く彼らを助けなければと強く思う。

 そのころ、征陸智己は……

「すまないね、青柳検事」
 こちらの世界の青柳璃彩は検事になっていた。
「征陸刑事にはいつもお世話になっていますから、協力できることはいたします。それで、電話では縢家のことを知りたいとのことですが」
「ああ。俺の記憶が正しければ、随分前に縢家は警察絡みの事件に巻き込まれていたと思う」
「記憶が正しければとはずいぶんとざっくりな言い方ですね。警察のデータベースに事件等のことは残っているのでは?」
「それなんだがな、なぜだか閲覧できなくなっている。紙の資料はデータ化し終えた時点で破棄、確認のしようがない」
「警察組織が過去の事案を隠蔽しているということですか? それはそれで大問題ですよ? 一応、今は非公式なので聞かなかったことにしておきますが」
「ああ、助かる。それで……」
「極論からいえば、縢家に気になる点は一切ない、ということになりますが」
「……が、ってことは、なにかあったんな?」
「ええ、さすが敏腕刑事と言われるだけのことはありますね、征陸刑事。随分前になりますが、乳母に預けた子供が消えるという事件がありました。ほんの少し目を離した隙きに。慌てた乳母は外出中の旦那様と奥様に連絡、すぐに知人の刑事に直接連絡をするようにと指示を受け、その通りにしました。知人の刑事が友人を装いやってくる、そのわずかな間に、消えたはずの赤ん坊が戻っていた。乳母の記憶違い、または忙しすぎて気が動転していたのではないか、また精神的においつめられていたのではないか、縢家で働く使用人の労働内容などの見直し、そして乳母には精神鑑定が実地されています」
「やはり……」
「ですが、これはほぼ非公開、箝口令が敷かれている事案で、知っている刑事もわずかだと思います。よく覚えていましたね」
「その非公開案件がここに残っていたという方も奇跡だな」
「まあ、非公開、箝口令とはいえ、知りたがる者もいれば、金次第でご主人を裏切る者もいるということです。これには続きがあって、精神を病んでいると鑑定結果がでた乳母が鑑定医師を訴えています。ただ、圧力でもみ消されている形跡がありますね。おそらく、征陸刑事がこの件を記憶しているのは、この乳母が自分の証言が正しいと訴えるため、縢家の前で焼身自殺をしたからではないですか?」
「……ああ、それだ! なぜそれに気づかなかったんだ俺は!」
「記憶操作が完璧ではなかったため、断片的に残ってしまい、それをどうにかして繋げようとして、縢家、事件と記憶を書き換えたのでは? その辺は私は専門外なので、資料程度の知識しかありませんが」
「記憶操作?」
「体質により、そういった捜査にかからない者もいます」
「それを警察組織がしたのか、縢家の事件に関わった刑事全員に!」
「ええ」
「証拠は?」
「語ってくれた人の命に関わることです。いえません」
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。