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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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征陸智己

「監視官、志恩からの情報でいけば、そろそろ目的地になります」
「わかった」
「段取りはどうする、常守」
「まず、宜野座さんひとりで接触してもらい、できるかぎり同行に応じてもらう。ダメなら、市民が拳銃を手に応戦していたことに対しての罪状で連行する。できるかぎり、応じてくれると助かる」
「ああ、わかった。可能な限り尽力する」

※※※

「監視官、あの辺りがそうみたいです。人だかりができていますね」
「ドローンで一帯を封鎖して一般市民を遠ざけましょう。唐之杜さんとの連携でお願いします、六合塚さん」
「了解」
 近くに停車し、その様子を伺う。
 ややしてドローンが現場に到着、あれよあれよと封鎖されていくと、人の垣根が消え、話題の中心人物を間近にみることができた。
「じゃあ、行ってくる」
 宜野座が車から降り、ふたりが交戦している中へと入っていく。
 ドローンに囲まれているというのに気にもせず互いの主張を繰り返している問題のふたり。
 宜野座はその片方、征陸に声をかけた。
「公安局刑事課の宜野座だ。街のど真ん中でなにをしている? とくにそこの……征陸智己、おまえが持っているその拳銃はなんだ? 武器を放棄し、こちらの指示に従え」
 宜野座が先に名乗った時、交戦しているふたりは宜野座の呼びかけに反応から示さない。
 ここにいるのはふたりだけで、ほかの人物はないものと思っているらしい。
 ところが宜野座が「征陸智己」と名を口にした瞬間、征陸の反応が一瞬だけ鈍る。
 その隙をついて狡噛が一撃を食らわせとどめのもう一発を入れ込もうとするが、すぐに体制を戻した征陸が防御、そうとう力強い一撃だったらしく、仕掛けた狡噛も反動でよろけてしまう。
 その背後に朱と六合塚がドミネーターを構え、
「狡噛さん、抵抗せずこちらの指示に従ってください」
 と、朱が同行を求めた。
 すると、狡噛は怪訝な顔つきをし、朱の顔と、手にしていたドミネーターを交互にみる。
「ドミネーターか、それは。そして俺のことを知っているとなると、公安局刑事課捜査一係の執行官、常守朱か、あんた」
 わずかに漂う他人行儀な雰囲気に朱は眉をひそめた。
 まったくの無関係であれば「誰だ?」と訪ねる。
 もし朱を知る狡噛なら、「久しぶりだな」くらいの挨拶がはいっても不思議ではない。
 なのに、目の前の狡噛は朱の存在を確認するようなことを訪ねてきた。
 さらに、
「おい、とっつあん。どうやら俺たちは出会ってはいけない奴らの目に触れてしまったようだぜ。ここはおとなしく従った方がいい」
 と、征陸に朱に従うよう促す。
「まったく、その通りのようだな。まあ、嬢ちゃん方、おてやわらかに頼むわ」
 と、持っていた拳銃を宜野座に託し、抵抗はしないと両手をあげた。

※※※

「無事連行できたみたいね。こっちは処理完了したわよ」
 公安局に戻ると唐之杜から世の中に出回ってしまった一連の動画の削除に成功したとの連絡が入る。
「ありがとうございます。それとふたりの血液検査もお願いできますか?」
「はいはい、そうくると思って準備はできているから、いつでも」
「助かります。お願いします」
 しばらくしてふたりを連行した朱たちが医務室にたどり着く。
 予告通り、準備を終え待っていた唐之杜にふたりの採血検査を頼み、ひとりずつ話を聞くことになった。
 朱は宜野座を同席させ、また別の部屋から六合塚や須郷たちにモニターで見てもらうことにした。

「常守朱といいます。同席しているのは執行官の宜野座伸元、この様子は録画され証拠となります」
「ああ、わかっている。警察ってところはどこでも大差はない。で?」
「あなたは誰ですか?」
「誰って、さっき嬢ちゃんたちが言っていたじゃないか、征陸智己と」
 その返答に朱は無表情でいたが、宜野座はいぶかしむような表情を見せた。
「そっちの、ああ、なんていったかな、執行官? 気に入らないって顔をしているな」
 あたりまえだ、ふさげやがって! と言ってやりたい心境の宜野座は征陸と名乗る男から視線をそらす。
「あなたが征陸智己であると仮定をして、話を進めます」
「ああ、そうしてくれ」
「あなたの職業、家族構成、そしてどこから来たのでしょう?」
「家族構成って……ああ、まあ、自慢できるものはないが、妻とは事実上の離婚間近の別居状態。息子がひとりいるが、妻が親権を持つらしいから、まあ、バツイチ独身ってところだな。職業は……、黙秘させてもらう。どこから来たか……も黙秘」
「そうですか。では、その別居中の奥様とご連絡がとれますか?」
「無理だな」
「それは離婚することでなにか決められた約束事があるからですか?」
「いや、そうじゃない。こっちにいたのでは連絡のつけようがないってことだ」
「こっちにいたのでは……とは? それは、別世界から来たと言っているのですか?」
「嬢ちゃん、あんた勘がいいな」
 とここまでのやりとりとを黙って聞いていた宜野座が机を叩く。
「いい加減にしろ!」
 ひょうひょうと対応していた征陸も、さすがにビクリと驚きを見せる。
「あんた、俺が宜野座と名乗っているのに、なにも感じないのか?」
「…………? なにを言っているんだ、こっちの執行官殿は」
「順序たてて話します。奥様の旧姓は宜野座ですか?」
「いや、違う。なんだ、もしかしてこっちの俺とあんたは親子ってことなのか? あちゃ、それはあれだ。コウじゃないが、かなりの失態だな、こりゃ」
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