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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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裏付け捜査

「ええ、まあ。でも、報告するからにはしっかりと確証もしておかないと。六合塚さんと宜野座さん、一緒に来ていただけませんか?」
 こうして三人は、小さい縢くんを連れ、彼が買い物に来ていたという場所に建つ商業施設へと向かうことになった。

※※※

「保護された場所ではないわね」
 朱は小さい縢くんが保護された経緯の記述を思い出し、同伴している宜野座に確認するように視線を向けた。
「ああ。おそらく、見知らぬ場所にいたこと、両親とはぐれてしまったことで動転してさまよったのだろう。その際、ストレス上昇で色相に変化がでた」
 縢くんが保護されたところは、開発されず放置されている場所、ふきだまりのような場所にほど近いところだった。
 もし彼が百年前から時間を越えて来たというのなら、この見捨てられた未開発の場所は見知った光景であり、廃れていても気持ち的に安堵できるものだったのかもしれない。
 朱は縢くんと視線をあわすように中腰になる。
「ここがね、あなたがご両親と買い物に来ていた場所になるの。でもね、たぶん、縢くんが買い物に来た場所ではないんでしょう?」
「うん、違う」
「……そう。でもね」
 といいかけ、言葉を飲み込む。
 あるはずのものがない理由を今の縢くんにきいところで、朱たちが求める答えを得られそうにないからだ。
 となれば、別の方法を考えなくてはならない。
「あの、宜野座さん、六合塚さん。実は存在していたけれど、なにかの理由で隠蔽しなくてはならなかった……なんてことはないでしょうか」
「隠蔽するほどのなにかがあれば可能性はあるが……」と、宜野座。
「もしそうなら志恩が気付いていると思います」と、六合塚。
「……ですよね……」と落胆する朱。
「だが、可能性が出尽くしたわけじゃない。ここで諦めるのか、常守」
「まさか! いるべき場所に帰してあげられるまで諦めません。こういう時、征陸さんがいてくれたら……なんて、甘えですね」
「いくらあの人でも百年前のことまでは網羅してないだろう。だが、データとしてなら残っているものもあるだろう。徹底的に調べる。そこからでいいんじゃないか?」
「そうですね。では唐之杜さんに頼んでみましょう。縢くんの系図などもあるといいかもしれませんね」
「それなら、写真などもあるといいかもしれません。私の方から志恩に言っておきます」
「お願いします、六合塚さん」

※※※

「それで、どうする常守」
「そうですね。保護された場所も見ておきたいです」
「構わないが、その子を連れてか?」
「やはり危険でしょうか?」
「いや、昼間なら危険とまでは言わないが……わかった、行こう」
 六合塚が唐之杜に指示を頼み終えるのを待ち、移動をした。
 両親と買い物をしていたらしき場所での反応と違い、明らかに困惑した顔を見せる縢の姿がある。
「ねえ、どうしてここの地下鉄は動いていないの? あのね、僕ね、この地下鉄に乗って来たんだよ。でね、家の近くにも地下鉄の駅があってね、パパの会社はね、駅と繋がったビルの中にあるんだ」
 おそらく、自分の見知っている光景に似ているけれど、こんなに廃れてはいない。
 ついさっき乗ったはずの電車、下車したはずの駅が瞬く間に廃れてしまっているなんて……という困惑だろう。
 だとすれば、それを聞いている三人は縢くん以上に困惑した顔をするしかない。
 一瞬で廃墟のように劣化させてしまえる方法など思いつくはずもなく、ただただ夢を見ていただけだで片づけてしまいたくなる。
 宜野座は思う。
 常守じゃないが、あの人(征陸)がいたら、シビュラがにかった頃の記憶が鮮明に残っている分、この小さい縢と話があっただろう。
 そして彼の存在の説明も、もっともらしく説明してくれたに違いないと。
 しかし、その征陸はもういない。
 頼りたくても頼れないのだ。
 だとすれば、この小さい縢のために動けるのは自分たちしかいない。
「なあ、パパの勤めている会社の駅ってどこかわかるか?」
 聞き出せる情報はできるだけ聞きだし、それと今あるデータと照らし合わせていくしかない。
「えっとね、偉い人がいっぱい集まるところの駅だったかな」
「ほかには?」
「家の近くの駅には赤い電車が通っていてね、でね、おっきな建物があるの。すっごく大きくてね、ママとね、天国までいけそうだねって話したことがあるよ」
「電波塔のことでしょうか」と六合塚。
「それなら今の時代もあるが、単体で電波塔になっている場所は限られている」と宜野座。
 ふたりの会話を聞き、朱は近い電波塔に移動することを決める。
 その間、近くにある電波塔の地図を送信してくれるよう唐之杜に頼んだ。
 すでにいろいろ頼まれごとをされていた唐之杜からは当然のように不満が……
 そこで六合塚を手伝いに帰すので、代わりに雛河が来るようにと妥協案を出すと、今度は雛河を連れ、六合塚を連れ戻すために霜月監視官が動かなくてはならない。
 当然、唐之杜以上に不満を遠慮なく口にする霜月、それをなだめる六合塚の姿があった。
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