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山姥切国広極めたらもう一人増えました

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: レジス
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一期一振という刀


「主さん、ただいま……」
「おぉ乱!よくやった!お前のおかげで山姥切長義を手に入れることができる!」
玄関で出迎えてくれた審神者を見た瞬間に私は「あ、これ駄目だ」と思った。
どれだけ暴力を振るってきたのかわかるくらい審神者には刀剣男士の恨みがまとわりついているのが見える。
長義もそれが見えたのか小さく舌打ちしたのが聞こえた。
「審神者殿、先に通達のあった通り俺たちがこの本丸の査定をすることになる。失望させないでくれよ」
すでに評価は最低だけれどな、と小声で付け足すのが私にだけ聞こえる。
「あぁ、政府から二振りは特殊な刀剣であることは伺っている。乱、二振りを客間にお通ししろ」
「うん、わかったよ」
そう言うと審神者さんは結局名乗りせずばたばたと去って行ってしまう。
「多分さっそく部隊編成しに行ったんだと思うよ」
こっち、と乱藤四郎が先頭に立って歩き始める。
私たちはそれについていった。
「意欲は十分なんだがな」
「えっと、二振りにも見えちゃったよね……」
「あぁ」
「うん」
「……僕ね、皆もだけど主さんのことも助けたくて長義を探してたの」
その言葉から、この乱藤四郎は審神者さんを恨んでいないことが分かる。
乱藤四郎の話が本当ならば彼も暴力は受けているはずだ。なぜだろう。
「僕はこの本丸の初鍛刀っていうやつで初期等の山姥切と同じくらい長く主を見てきた。だから今の主の状態がおかしいことがよく分かるんだ」
「なるほどな」
「つまり審神者さんの状態を正常化させることが出来ればいいのね」
私の言葉に乱藤四郎が頷いた。
どうすればいいのかわからないが正常化さえできれば審神者さんは長義を手に入れられて、本丸の運営は元に戻って、刀剣の扱いも良くなるはず。
私たちがめざすのはそこだな、と思った。
乱藤四郎に案内されて廊下を歩いていた所、例の刀剣男士と遭遇する。
「乱!どこに行っていたんだ!」
「一兄!ごめんなさい!」
「あぁ、お前が無事ならいいんだ……とうとう折られてしまったのかと心配したよ」
「それは大丈夫だよ。主さんは僕を折ったりしないから……僕は大切にされているんだもん」
乱藤四郎の言葉が所々気になったがそれよりも一期一振の状態に驚いた。
うちの本丸にいた一期さんはほわほわした笑顔をいつも浮かべているような刀剣男士だ、だけど今目の前にいる一期一振の視線は鋭く、乱藤四郎へ優しい言葉をかけながらこちらを警戒している。
それに気付いた乱藤四郎が慌てたように
「一兄!この人たちは新しい監査官の長義とその補佐役の国姫さんだよ!」
乱藤四郎に紹介されたので頭を下げておいた。
「新しい監査官、だって……?」
「そうだ。この本丸に特別に任務を与えに来た」
長義を見て一期一振がギリ、と歯ぎしりするのが聞こえる。
「今更……なんで今更現れたんですか」
「そこの乱藤四郎に請われたからだ」
一期一振の言葉に長義が答えた。
なんか歓迎されていない様子だ。
「そうだよ一兄、聚楽第の再調査。その先駆けを僕たちの本丸がやらせてもらえることになったんだ!長義が手に入るかもしれないんだよ!」
「あぁ……なんということだ。それはもうどうでもいいんだよ」
「え……どうでもいいって……?」
乱藤四郎の言葉を聞いて一期一振がようやく笑う。
その笑い方が何もかもを諦めたようなそれで、恐ろしくて私は思わず長義の袖を掴んでしまう。
「一期一振、お前何をしようとしている」
咎めるように長義が言う。
「お二方には関係のないことですな」
そう言って一期一振は乱藤四郎の手を引いて行こうとする。
乱藤四郎はその手を払って立ち止まった。
「僕は関係あるよね?何をしようとしているの一兄?!」
「私が、ではなく皆が、だよ」
「何だって……?」
皆?皆で何をしようとしているのだろう。
一期一振の様子から良い事ではないのは分かるんだけど……
ちらりと私達を見ると一期一振は諦めたように言葉を発する。
「もうすぐで呪詛が完成する。そうなればあの男は無事では済まないだろうね」
「う、嘘?!」
「当たり前です。それだけの事をあの男はしでかしたのですから」
「なんでそんな事をするの!今はちょっとおかしいだけなんだよ!長義さえ来れば元通りになるんだから!!」
「元通りなんて無理に決まってるだろう?私たちは傷つけられた。それを忘れて元通りになんてできるわけがない」
「そんな……」
一期一振の言葉にショックを受けたようで乱藤四郎が俯いてしまう。
「呪詛なんて使えばただでは済まないですよ」
私が言えば一期一振は私を見る。
何を言っているんだと馬鹿にしたような表情で言った。
「そんなの分かっているに決まっているでしょう?」
「っ!」
目にもとまらぬ速さで抜かれた刀が長義に向けられる。
「貴方も早くここを立ち去ったほうがいい。ここには貴方に恨みを持つ刀剣も多いですから」
「そうにもいかない理由がこちらにもあるんでね」
刀に怖気づくことなく長義が言い放つ。
その様子に少し驚いた様子の一期一振は刀を引くと乱藤四郎を置いて立ち去っていく。
「乱……」
私が彼を呼ぶと彼は私の手を掴んだ。
そして告げられたのは一つの懇願だった。

「お願い……主さんを助けて」
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