14話
「こんな若いのに苦労してると思ってはいたが…まさか家が借金取りに押さえられて、その借金のカタとしてこの店を運用させられてるだなんて思ってもみなかった。それを総悟のやつに泣きながら教えたそうじゃねぇか…何でそんなに追い詰められるまで…っ、親御さんを思う気持ちも、どうにか借金を返してやろうってお前の気持ちは分からねぇでもねぇ。けどなぁ…なんで大人を頼らねぇ。万事屋の野郎は頼りがいなくても俺がいるだろうが花子!?」
「いえ、あの、すみません。頭がついていかないので、どうしてそんな話になったかを教えていただけませんか」
扉を蹴破る勢いで入ってきた土方は、入ってくるなり両肩を掴んでいつもの5割増し開ききった瞳孔で問い詰めてくるものだから流石に驚いて動揺が隠せなかった。どうしてそうなった。
落ち着いてもらうためにお茶を出して話を聞くに、あの後沖田が土方のところへやってくると、いつもはバズーカなりなんなり撃ち込んでくるところをその日は部屋にも入らず廊下に立ったまま俯いていたらしい。事情を聞いてみれば、泣き出しそうな顔で前髪をくしゃりとかき上げて、「花子は健気なやつでィ…」とつぶやいたとか。
「花子?お前なんでアイツのこと…花子!?あいつがどうした!?オイ!泣いてちゃ分からねぇ!」
俯いたまま肩を震わせる沖田の肩を掴み、「落ち着け、落ち着いて話せ」と促すと、弱弱しく頷いた沖田が、静かな声で話し始めた。
「アイツ…実は実家が借金まみれで、首が回らなくなって借金のカタとしてあの店を運用させられているようなんでィ…」
「なっ…そんなひでぇ話があるか…まだガキなのにとは思っていたが…」
「今日、近藤さんと偶然花子に会ったんでさァ。そしたら、「私、もう辛くて」って…ありゃもう最悪のことまで考えたツラでィ…まあ仕方ねぇ…血もにじむ努力で稼いだ金も全部借金で取られちまったら追い詰められても無理はねぇ…はぁ…利子は膨らむばかり、あー花子あの後保険屋に行くっていってたなぁ…もしかして花子…」
生命保険なんて入っちゃったりすんのかなぁ…なんてもらすと、サッと血の気の引いた顔で「ま、まさか…そんな」と沖田の肩から手を放し、後退る。気丈に振舞っている彼女がそんなことをするはずがないと頭は否定しても、まだほんの子供だ。もしかしたら本当に追い詰められて。
「な、それって…おい総悟…」
「ああ、すいやせん…土方さんにこんな話してもどうにも出来やせんね…花子もなんか覚悟決めたツラしてやしたし、もう腹は決まってるんでしょうぜ。まぁ、俺はまだ知り合ったばかりで、とやかく言う立場じゃねぇ…花子の決めた道を見守ってやりやすね」
言い終えるか言い終えないかくらいに土方は立ち上がると、今まで俯いていた沖田は顔を上げて涙一つない表情でしてやったり顔をした。
「んな訳ねぇだろ土方ァ。ま、近藤さんに確かめに行かれたらバレるが、あの調子じゃあのまま花子のとこに行って騒ぎ立てるだろ。」
廊下を進みながらそうつぶやいた沖田はそのまま自室へと消えていった。
「まぁ、ハイ…実家は裕福という訳ではありませんが別に借金取りに追われている訳でもありませんし、借金のカタに売られたなんてこともありませんね」
「つ、つまり…?」
「十中八九、沖田さんの虚言です」
「総悟ォォォォ!?」
頭を床に叩きつけ、叫ぶ土方にいましがたやって来た銀時が「何してんのコイツ。ついにニコチンが脳にまで回ったか」と言いながら上がってくる。勝手知ったるだ。
「それが、沖田さんにからかわれたらしいです」
「あー沖田君ね。まぁあの子がからかうのはいつもの事だろ。今回はなんてからかわれたの」
「私の実家が借金取りに追われてるとか、そんな感じです」
「サラ子お前借金取りに追われてんの!?」
「あ、はい。もうその流れ一連済んでいるのでもういいです」
「んだよ冷てぇなサラ子」
大体が何故そういう流れになったのかすらわからなかった。
ファミレスで話している流れではこんなことになるだなんて微塵も思わなかったけれど、私のは「お/しん」か何かかと聞きたくなるような作り話だった。それにしても土方さんは案外純粋なひとらしい。普通はもうちょっと冷静にというか、近藤さんに確認を取れば嘘か本当かくらいは分かるはずだし、そもそも昨日今日会った人間のために下駄が脱げても走ってくるなんてことは到底考えられない。初対面では怖い印象しかなかったけれど、随分と優しい人らしいことがわかった。
「とにかくだ、借金でどうも首が回らなくなったら一旦俺に相談しろよ。全部何とかしてやるのは無理だがそれなりの人脈はある、会計士くらいは紹介してやる」
「オイオイ、そのくらいの人脈なら銀さんにもあるからね。借金で苦しんでる時にそんなとこに行ってる余裕なんてねぇんだよ。俺に相談しろよ、仕事紹介してやるからな」
「バカかテメェ、こいつはもう6時から19時の勤務形態で働いてんだよ。どこにそんな時間があるってんだ。ちょっとは考えてから発言しやがれ」
「お宅なに、そこまで把握してんの?やーねぇ」
「んだとコラァ!?」
何とか誤解は解けたらしいが、何だか他の問題が起きそうだ。
「いえ、あの、すみません。頭がついていかないので、どうしてそんな話になったかを教えていただけませんか」
扉を蹴破る勢いで入ってきた土方は、入ってくるなり両肩を掴んでいつもの5割増し開ききった瞳孔で問い詰めてくるものだから流石に驚いて動揺が隠せなかった。どうしてそうなった。
落ち着いてもらうためにお茶を出して話を聞くに、あの後沖田が土方のところへやってくると、いつもはバズーカなりなんなり撃ち込んでくるところをその日は部屋にも入らず廊下に立ったまま俯いていたらしい。事情を聞いてみれば、泣き出しそうな顔で前髪をくしゃりとかき上げて、「花子は健気なやつでィ…」とつぶやいたとか。
「花子?お前なんでアイツのこと…花子!?あいつがどうした!?オイ!泣いてちゃ分からねぇ!」
俯いたまま肩を震わせる沖田の肩を掴み、「落ち着け、落ち着いて話せ」と促すと、弱弱しく頷いた沖田が、静かな声で話し始めた。
「アイツ…実は実家が借金まみれで、首が回らなくなって借金のカタとしてあの店を運用させられているようなんでィ…」
「なっ…そんなひでぇ話があるか…まだガキなのにとは思っていたが…」
「今日、近藤さんと偶然花子に会ったんでさァ。そしたら、「私、もう辛くて」って…ありゃもう最悪のことまで考えたツラでィ…まあ仕方ねぇ…血もにじむ努力で稼いだ金も全部借金で取られちまったら追い詰められても無理はねぇ…はぁ…利子は膨らむばかり、あー花子あの後保険屋に行くっていってたなぁ…もしかして花子…」
生命保険なんて入っちゃったりすんのかなぁ…なんてもらすと、サッと血の気の引いた顔で「ま、まさか…そんな」と沖田の肩から手を放し、後退る。気丈に振舞っている彼女がそんなことをするはずがないと頭は否定しても、まだほんの子供だ。もしかしたら本当に追い詰められて。
「な、それって…おい総悟…」
「ああ、すいやせん…土方さんにこんな話してもどうにも出来やせんね…花子もなんか覚悟決めたツラしてやしたし、もう腹は決まってるんでしょうぜ。まぁ、俺はまだ知り合ったばかりで、とやかく言う立場じゃねぇ…花子の決めた道を見守ってやりやすね」
言い終えるか言い終えないかくらいに土方は立ち上がると、今まで俯いていた沖田は顔を上げて涙一つない表情でしてやったり顔をした。
「んな訳ねぇだろ土方ァ。ま、近藤さんに確かめに行かれたらバレるが、あの調子じゃあのまま花子のとこに行って騒ぎ立てるだろ。」
廊下を進みながらそうつぶやいた沖田はそのまま自室へと消えていった。
「まぁ、ハイ…実家は裕福という訳ではありませんが別に借金取りに追われている訳でもありませんし、借金のカタに売られたなんてこともありませんね」
「つ、つまり…?」
「十中八九、沖田さんの虚言です」
「総悟ォォォォ!?」
頭を床に叩きつけ、叫ぶ土方にいましがたやって来た銀時が「何してんのコイツ。ついにニコチンが脳にまで回ったか」と言いながら上がってくる。勝手知ったるだ。
「それが、沖田さんにからかわれたらしいです」
「あー沖田君ね。まぁあの子がからかうのはいつもの事だろ。今回はなんてからかわれたの」
「私の実家が借金取りに追われてるとか、そんな感じです」
「サラ子お前借金取りに追われてんの!?」
「あ、はい。もうその流れ一連済んでいるのでもういいです」
「んだよ冷てぇなサラ子」
大体が何故そういう流れになったのかすらわからなかった。
ファミレスで話している流れではこんなことになるだなんて微塵も思わなかったけれど、私のは「お/しん」か何かかと聞きたくなるような作り話だった。それにしても土方さんは案外純粋なひとらしい。普通はもうちょっと冷静にというか、近藤さんに確認を取れば嘘か本当かくらいは分かるはずだし、そもそも昨日今日会った人間のために下駄が脱げても走ってくるなんてことは到底考えられない。初対面では怖い印象しかなかったけれど、随分と優しい人らしいことがわかった。
「とにかくだ、借金でどうも首が回らなくなったら一旦俺に相談しろよ。全部何とかしてやるのは無理だがそれなりの人脈はある、会計士くらいは紹介してやる」
「オイオイ、そのくらいの人脈なら銀さんにもあるからね。借金で苦しんでる時にそんなとこに行ってる余裕なんてねぇんだよ。俺に相談しろよ、仕事紹介してやるからな」
「バカかテメェ、こいつはもう6時から19時の勤務形態で働いてんだよ。どこにそんな時間があるってんだ。ちょっとは考えてから発言しやがれ」
「お宅なに、そこまで把握してんの?やーねぇ」
「んだとコラァ!?」
何とか誤解は解けたらしいが、何だか他の問題が起きそうだ。
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