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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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3人の面談の模様… その7

午後2時。カスターの面談が始まる時刻である。
会議室にはすでに全員が揃っていた。テーブルのこちら側にはカスターが落ち着いた様子で座り、向かい側には昼休みにパワーをフル充電してきた3人の人事担当者が座っている。

(この人の経歴についても、詳しいことは全然分かってないのよね…)
事前調査によると、カスターは27歳の時に天竜人の資格を放棄してインペルダウンに就職している。また、カスターが10歳の時に父親が隠居している。いずれも理由は不明だ。

この人は、私達に自分のことをどのくらい話してくれるだろうか?
ペラムの面談はお世辞にも成功とは言えなかった。でも、バーティの面談はまあまあ上手くいったと言っていいと思う。
この人の面談を、自分達の手で成功させなければいけない。相手の一挙一動から心の奥底までも見透かしてみせる。

人事担当者達は気合いが入りまくっていた。そもそも、こういう仕事をしている人間には、面談や面接が大好きな輩が多い。

これまでと同じように、担当者1が面談を進行させた。
「本日はわざわざ時間を取っていただいてありがとうございます。この面談では、新設される長期休暇制度のことと、普段の勤務状況などについてお伺いさせていただきます…」

まず、長期休暇制度について説明がされ、カスターに希望や意見があるかどうか訊ねられた。前の二人の例からすると、ここで一波乱あってもおかしくないが…。

「私のほうからは、特に希望などはありません。現行の案で結構でございます」
予想に反して、カスターは穏やかに微笑んでこう答えた。

これは本心からの発言だろうか?
「少し立ち入った質問をさせていただきますが、休暇で旅行などをされるご予定はありますか?セキュリティ面で何らかの対策をしなければいけない場合は、こちらでも対応を考えなければいけないと思っておりまして…」

「休暇がいただけたら、マリージョアにいる両親のところか、妹のところを訪ねるつもりです。セキュリティに関しては特に問題はありません」

この人は何の危険もなく自分の家族に会いに行ったり、旅行に行ったりすることができるらしい。
…本当だろうか?
「前のお二人からはいろいろな要望が出されたのですが、カスターさんは本当に何もございませんか?こんな機会は滅多にありませんので、遠慮なくお話しいただければと思っておりまして…」

担当者1がさり気なく突っ込むと、担当者2と担当者3も援護射撃にでた。
「前のお二人は、本当にたくさんの要望や意見をお話しされましたよ。奇抜なアイディア…もとい、先進的な考え方なども伺えて大変参考になりました」
「実態に沿った制度を作るには、その制度を使う人達のごどを知らなげればなりません。当人達が小さなごどだと思っでいるごどが、実は制度を作る上でのキモになるごどだっだというごども少なくありません」

3人とも相手に威圧感を与えないように気を使いつつ、真剣に語りかけた。その気迫が直に伝わってきて、カスターはまるで愛を告白されているかのような気分になった。
そして、思わず吹き出しかけた。

「私達に対して、随分興味があるようですね」
カスターは笑いをこらえながら言った。
「分かりました。そうですね…。私に関しては、インペルダウンの外に出たとたんに誰かから襲われるかもしれないという事情は持ち合わせておりません」

人事担当者達はほっと息をつき、互いに顔を見合わせた。
「了解しました。この件については問題ないということですね」

カスターはそれ以上誰かが何か言う前に、看守の増員のことを話し出した。
「長期休暇制度よりも、私はこちらのほうが気になっているのですが…」

人事担当者達は、カスターの話しに集中して耳を傾けた。
「マゼラン副署長は4時間しか働けませんので、私達の勤務時間が変則的になるのではないかと危惧しています。変則的な勤務というものは負担がかかるものでして…」
カスターは自分の意見を余すところなく話した。人事担当者達は、この件に最良の方法で対応することを約束した。

そして、他の項目も含めて、カスターの面談は比較的短い時間で終了した。人事担当者の立場から見ると、この面談も概ね成功と言えるだろう。

「予定していた面談の終了時刻まで、もう少し時間がありそうですね」
カスターが思わせぶりな笑みを浮かべた。
「話ついでに、私の身の上話しをお聞きになりたいですか?」

「は、はい…」「ぜひ…」
人事担当者達は、直感的にカスターがこれから語ることの内容に恐怖を感じたが、言われるがままに承諾した。聞いてみたいという気持ちがあったのも確かだったが、自分達に拒否権がないように思えたせいもあった。

自分でも気が付かないうちに、3人は肩を寄せ合って、互いの手を握っていた。青ざめた顔を真っすぐカスターのほうに向け、わずかに肩を震わせている。

カスターは思わず笑った。3人がこんなに怖がるとは思っていなかったのである。
「ほっほっほ。大丈夫、この話しを聞いたからと言ってどうにかなるようなことはありません。でも、心配されているようですので、少し手を加えた形でお話しすることにしましょう」

3人は頷いてみせたが、肩の震えは止まらなかった。
カスターは話し始めた。「むかしむかし、あるところに…」
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