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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

ドフラミンゴの日記 その5

×月×日
昨日の朝にカスターがぶった切った天蓋の柱は、昨夜、寝室に戻った時は半分から上がない状態(切りっぱなし)だったが、今夜は全ての柱が長さを調整して切り取られて、切り口もきれいに整えられていた。
天蓋なしのベッドに改造されちまった訳だが、別に文句はねえ。それになかなか丁寧な仕事ぶりだ。

今日も飯がうまい。

朝食:コーヒー、ハムエッグ(黄身は半熟だった)、ソーセージ、生野菜とカッテージチーズのサラダ、トースト、グレープフルーツ

昼食:なぜか中華点心だった。小籠包、肉まん、海老焼売、中華ちまき、杏仁豆腐など。烏龍茶を飲みながら食う

夕食:コーンポタージュスープ、パン、蒸したロブスター丸ごと1匹、鶏の胸肉の香草焼き、かぼちゃやアスパラ等の野菜のオーブン焼き、チーズとナッツ、レモンのムース、コーヒー

好物のロブスターが出た。カスターが手配したんだろう。蜘蛛を取ってやった甲斐があった。


×月×日
今日の新聞に、御志理探偵シリーズという推理小説の最新刊の広告が載っていた。

御志理探偵シリーズとは、七三分けのジェントルな探偵が主人公の硬派なファンタジーミステリー小説で、シリーズ累計数百万部を超える大ヒット作品である。

おれもこのシリーズのファンだから、最新刊が出たんなら読みたい。
新聞の差し入れが認められているなら、本も認められるんじゃなかろうかと考える。

朝食:紅茶(キーマン)、ポーチドエッグ、キッパー、マッシュポテト、生野菜、チーズ、トースト、ブルーベリーとヨーグルト

昼食:ビーフシチュー、パン、ピクルス

夕食:キノコのコンソメスープ、パン、ニジマスのグリル、ポークソテークリームソース添え、グリーンサラダ、チーズ、ザッハトルテ、コーヒー


×月×日
さっき、ペラムに監視されながら独房から寝室に移動する途中、廊下にゴキブリが出た。ゴキブリは前方の床の上にいたので、おれが先に見つけた。
立ち止まって、「おい」とペラムに声をかける。

「あそこにお前が嫌いなもんがいるが、どうする?」
するとペラムは「ひえっ…」と声を上げ、硬直して動かなくなってしまった。

「おい、固まるなよ…」
ペラムに持たれている海楼石の鎖をぐいぐい引っ張ってみたが、ビクともしねえ。やれやれと思いつつ、足を軽く蹴飛ばしてみようとした時、前方の奥から他の看守が歩いてきた。

(まずい)
おれはとっさにそう思った。
その看守はおれ達が立ち止まっているのを見つけて「おい、何を立ち止まっている」と言って、こちらのほうに速足で近付いてくる。

すると予想通り、じっとしていたゴキブリが、速足でやって来る看守に追い立てられるように、おれ達のほうに向かってきた。しかも、飛びやがった。真っ直ぐおれ達のほうに飛んで来やがる。

「ぎゃぴ…」
ペラムが悲鳴を上げかけた。しかし、おれはそれを途中でとめた。手刀を振って、空中のゴキブリを壁に叩きつけたのだ。

「気を付けろ。お前のせいでゴキブリがこっちに飛んで来たぞ」
おれはその看守に言ってやった。
「こいつはゴキブリが嫌いだから、えらい騒ぎになるところだったぜ」

「…そりゃ悪かったが、こっちもわざとじゃない。お前らが立ち止まってたら確認しにくるのは当然だ。ペラム、しっかりしろ。囚人をさっさと寝室に連れて行くんだ。おれも一緒に行ってやる」

看守のこの言い方からすると、ペラムのゴキブリ嫌いは有名なのかもしれない。

ペラムはしばらくそわそわとゴキブリが壁にぶつかって落ちたあたりを目で探っていたが、気を取り直したようだ。

寝室のドアの前に到着すると、付き添って来た看守に「ありがとう。ここで大丈夫だ」と礼を言って帰した。どうせこの部屋の前には見張り役の看守が二人ほどいるのだ。

寝室の中に入った後、ペラムはおれの鎖を寝室の壁のフックに繋いで鍵をかける役目がある(この鎖はベッドを離れて洗面台に行くこともできるくらい長い)。

おれはわざとしょんぼりとうなだれて、さっき手刀でゴキブリを跳ね飛ばした右手を差し出し、
「手を洗いてえ…」
とつぶやいた。左手の指でまぶたの辺りを押さえる。

これを見たペラムはぶっ飛んで、「す、すぐに水と石けんをお持ちします~~~っ」と言って部屋を出て行った。
おれはおかしくて声を殺して笑ったが、反省した。暇だからと言って看守をからかってはいけない。

奴は水差しと石けんを持ってすぐに戻ってきた。
しかし、ペラムに水差しから水を注いでもらいながら洗面台で手を洗っている最中も、悪いと思いながらも、落ち込んだふりをするのをやめられない。

時間をかけて丁寧に手を洗い、やっと元気になったような顔をして、おれは言った。
「そういやあ、今日の新聞に御志理探偵シリーズの最新刊の広告が載ってたな」

「お好きなのですか?」
ペラムは目を見開いていた。

「まあな。ここに入る前は新刊が出たら必ず買ってた」
おれからはこれしか言っていない。この後、ペラムは普段通りに退室した。


×月×日(数日後)
朝、カスターが朝刊と一緒に御志理探偵シリーズの最新刊を持ってきた。

「どなたかから差し入れのようですね…」
「ありがてえな。読みたかった本だ」

おそらく、ペラムの仕業だろう。後で礼を言わなくちゃならん。
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