ドフラミンゴの日記 その6
×月×日
誰もいない時に、ペラムに御志理探偵の最新刊の礼を言ったらとぼけていた。
この分なら、読みたい本があったらそれとなく言えば、また差し入れしてくれそうだ。
この最新刊はやけにぶ厚い。さっそく今日から読み始める。
ところで、最近この階にネズミが出るらしい。そのせいでネズミ嫌いのバーティが始終ビクついている。ネズミ捕りをそこいらじゅうに仕掛けて、さっさと退治すりゃいいと思うんだが。
×月×日
朝食の時、カスターが、本当はメニューの中にメロンが付くはずだったとブツブツ文句を言っていた。夜間にネズミにかじられたらしい。
「バーティがこの話しを聞いたら真っ青になるだろうな」と言うと、「まったくです」と返ってきた。
「それに私もメロンを楽しみにしておりましたので、ネズミが憎うございます」
コイツらも朝食にメロンを食う予定だったんだなと考える。
今日の食事は以下の通り。
朝食:紅茶(ブレックファーストブレンド)、ポーチドエッグ、ソーセージ、サラミ、アスパラやマッシュルーム等のオーブン焼き、トースト、レーズンとヨーグルト
昼食:魚介のジェノベーゼソーススパゲッティ
夕食:セロリのクリームスープ、パン、ホタテのガーリックソテー、牛テールの赤ワイン煮、温野菜盛り合わせ、チーズ、モンブラン、コーヒー
×月×日
夕食の時、ネズミが出た。運の悪いことに、今日の看守はバーティだった。
それにネズミも半端じゃなく強暴だった。あの強暴さはバーティでなくてもネズミが嫌いになる。
ネズミが出たのは食事の最後のほう…魚料理も肉料理も食い終わって、ワインを飲みながらチーズを食ってる時だった。
部屋の隅でカサコソと物音がしたから見てみると、でかいネズミが壁伝いに歩いていやがった。
バーティはおれのグラスにワインを注ごうとしていたが、ネズミに気付いて一瞬硬直した。おれはこいつがネズミを捕まえるために暴れ出すんじゃないかと思ったので、とっさにチーズに添えられていたアーモンドを指で弾いて、ネズミの頭に命中させた。
かわいそうに(かわいそうだと思ったのはこの時までだったが)、ネズミは一発で死んだ。
「びょえ~~っ!(“じょえ~~っ!”だったかもしれない)」
バーティは手で顔を覆って悲鳴を上げた。グロテスクな光景だったので、気持ちは分かる。
異変を聞き付けて、部屋の外にいた看守がやって来た。
「どうした?」
「ネズミだ」
失神しそうになっているバーティに代わって、おれが答えた。
「ネズミか…」
看守はズカズカと部屋の中に入ってきた。
給仕人は決しておれの側に近寄らないが、看守はそうではない。最も食事の予算が減らされて以降は、給仕人は料理を持ってきたらすぐにどこかに行ってしまうが。
「うわっ、死んでるぞ」
「…」
バーティが暴れたら、身を守るために逃げたり伏せたりしなくちゃいけないのが面倒で、それでネズミを始末しちまったが、ゴキブリならまだしもネズミを殺ったのはさすがにまずかった。海楼石を強いやつに変えられるかもしれねえ…と、おれは後悔した。
(見られたのがバーティだけだったら何とかなったかもしれねえが。まあ、しょうがねえか…)
バーティは真っ青になって、突っ立ったまま冷や汗をかいていた。
バーティが役に立たないと踏んだのか、看守はバタバタと部屋の外に出て行った。ネズミだゴミ袋だと騒いでいたので、ネズミの死骸を片付けてくれるつもりなんだろう。
「飯はもういい。引き上げるぞ」
「…はい」
デザートのミルフィーユを食い損ねることになるが、さすがにネズミの死骸が片付けられるのを待って飯を再開する気にはなれない。
そう言って、椅子から立ち上がった時だった。
ザワザワとした嫌な雰囲気を背筋に感じて、振り返ってネズミの死骸がある辺りを見ると、いつの間にか20匹以上のネズミが集まっていた。そいつらの目は異様な光を放っていた。
「びゃびゃ~っっ!!(じゃじゃ~っっ!!)」
バーティが悲鳴を上げるのと、ネズミが一斉におれ達に飛びかかってきたのは、ほぼ同時だった。
アーモンドを一匹一匹にぶつけてたんじゃ間に合わねえ。
覇王色の覇気もおれだとバレるから駄目だ。
バーティが自分の腰にさしていた剣を抜いた。
これだけの数のネズミを一度に殺るのはこいつには無理だろうと思った瞬間、腹は決まった。おれはバーティから剣を奪い取った。
剣を二度大振りして、ほとんどのネズミを真っ二つに切った。
わずかに残ったやつは覇王色の覇気で止めた。死んだのか気絶してるだけなのかは分からねえが、ネズミの死骸がこれだけあれば、その中に何匹か気絶してるのが混じってても、おかしく思われねえだろう。
そして、すぐにネズミの血で汚れた剣を無言でバーティに返した。奴も無言で受け取った。
廊下から「何だっ?!」「どうしたっ?!」という複数の看守の声と足音が聞こえた。さっきバーティがあげた悲鳴を聞き付けたのだ。
さっき来たヤツを含んだ3人の看守が部屋に入ってくるなり、バーティは床に膝をついた。そして「ネズミが…」と言い残して気を失った。
大量のネズミに襲われるという世にも恐ろしい体験をしたせいなのか、おれの覇王色の覇気にやられたのかは不明だ。
バーティは医務室に行き、代わりにペラムがきた。
事情を聞かれたので、ネズミを殺ったのはバーティだと言ったが、バーティがどう証言するかは分からない。
なるようになれ、だ。
誰もいない時に、ペラムに御志理探偵の最新刊の礼を言ったらとぼけていた。
この分なら、読みたい本があったらそれとなく言えば、また差し入れしてくれそうだ。
この最新刊はやけにぶ厚い。さっそく今日から読み始める。
ところで、最近この階にネズミが出るらしい。そのせいでネズミ嫌いのバーティが始終ビクついている。ネズミ捕りをそこいらじゅうに仕掛けて、さっさと退治すりゃいいと思うんだが。
×月×日
朝食の時、カスターが、本当はメニューの中にメロンが付くはずだったとブツブツ文句を言っていた。夜間にネズミにかじられたらしい。
「バーティがこの話しを聞いたら真っ青になるだろうな」と言うと、「まったくです」と返ってきた。
「それに私もメロンを楽しみにしておりましたので、ネズミが憎うございます」
コイツらも朝食にメロンを食う予定だったんだなと考える。
今日の食事は以下の通り。
朝食:紅茶(ブレックファーストブレンド)、ポーチドエッグ、ソーセージ、サラミ、アスパラやマッシュルーム等のオーブン焼き、トースト、レーズンとヨーグルト
昼食:魚介のジェノベーゼソーススパゲッティ
夕食:セロリのクリームスープ、パン、ホタテのガーリックソテー、牛テールの赤ワイン煮、温野菜盛り合わせ、チーズ、モンブラン、コーヒー
×月×日
夕食の時、ネズミが出た。運の悪いことに、今日の看守はバーティだった。
それにネズミも半端じゃなく強暴だった。あの強暴さはバーティでなくてもネズミが嫌いになる。
ネズミが出たのは食事の最後のほう…魚料理も肉料理も食い終わって、ワインを飲みながらチーズを食ってる時だった。
部屋の隅でカサコソと物音がしたから見てみると、でかいネズミが壁伝いに歩いていやがった。
バーティはおれのグラスにワインを注ごうとしていたが、ネズミに気付いて一瞬硬直した。おれはこいつがネズミを捕まえるために暴れ出すんじゃないかと思ったので、とっさにチーズに添えられていたアーモンドを指で弾いて、ネズミの頭に命中させた。
かわいそうに(かわいそうだと思ったのはこの時までだったが)、ネズミは一発で死んだ。
「びょえ~~っ!(“じょえ~~っ!”だったかもしれない)」
バーティは手で顔を覆って悲鳴を上げた。グロテスクな光景だったので、気持ちは分かる。
異変を聞き付けて、部屋の外にいた看守がやって来た。
「どうした?」
「ネズミだ」
失神しそうになっているバーティに代わって、おれが答えた。
「ネズミか…」
看守はズカズカと部屋の中に入ってきた。
給仕人は決しておれの側に近寄らないが、看守はそうではない。最も食事の予算が減らされて以降は、給仕人は料理を持ってきたらすぐにどこかに行ってしまうが。
「うわっ、死んでるぞ」
「…」
バーティが暴れたら、身を守るために逃げたり伏せたりしなくちゃいけないのが面倒で、それでネズミを始末しちまったが、ゴキブリならまだしもネズミを殺ったのはさすがにまずかった。海楼石を強いやつに変えられるかもしれねえ…と、おれは後悔した。
(見られたのがバーティだけだったら何とかなったかもしれねえが。まあ、しょうがねえか…)
バーティは真っ青になって、突っ立ったまま冷や汗をかいていた。
バーティが役に立たないと踏んだのか、看守はバタバタと部屋の外に出て行った。ネズミだゴミ袋だと騒いでいたので、ネズミの死骸を片付けてくれるつもりなんだろう。
「飯はもういい。引き上げるぞ」
「…はい」
デザートのミルフィーユを食い損ねることになるが、さすがにネズミの死骸が片付けられるのを待って飯を再開する気にはなれない。
そう言って、椅子から立ち上がった時だった。
ザワザワとした嫌な雰囲気を背筋に感じて、振り返ってネズミの死骸がある辺りを見ると、いつの間にか20匹以上のネズミが集まっていた。そいつらの目は異様な光を放っていた。
「びゃびゃ~っっ!!(じゃじゃ~っっ!!)」
バーティが悲鳴を上げるのと、ネズミが一斉におれ達に飛びかかってきたのは、ほぼ同時だった。
アーモンドを一匹一匹にぶつけてたんじゃ間に合わねえ。
覇王色の覇気もおれだとバレるから駄目だ。
バーティが自分の腰にさしていた剣を抜いた。
これだけの数のネズミを一度に殺るのはこいつには無理だろうと思った瞬間、腹は決まった。おれはバーティから剣を奪い取った。
剣を二度大振りして、ほとんどのネズミを真っ二つに切った。
わずかに残ったやつは覇王色の覇気で止めた。死んだのか気絶してるだけなのかは分からねえが、ネズミの死骸がこれだけあれば、その中に何匹か気絶してるのが混じってても、おかしく思われねえだろう。
そして、すぐにネズミの血で汚れた剣を無言でバーティに返した。奴も無言で受け取った。
廊下から「何だっ?!」「どうしたっ?!」という複数の看守の声と足音が聞こえた。さっきバーティがあげた悲鳴を聞き付けたのだ。
さっき来たヤツを含んだ3人の看守が部屋に入ってくるなり、バーティは床に膝をついた。そして「ネズミが…」と言い残して気を失った。
大量のネズミに襲われるという世にも恐ろしい体験をしたせいなのか、おれの覇王色の覇気にやられたのかは不明だ。
バーティは医務室に行き、代わりにペラムがきた。
事情を聞かれたので、ネズミを殺ったのはバーティだと言ったが、バーティがどう証言するかは分からない。
なるようになれ、だ。
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