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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第20話

第四幕

 臨時生徒会役員が発足された翌日の昼休み。
「はい。これが例のブツだよ」
 中庭のベンチへと喜多村に呼び出され、告白かとウキウキして行ってみれば、茶封筒を渡された。随分大きなラブレターだね。ラブレターだよね?
「例のブツって?」
「地図だよ。この第十五学区の地図」
「……ああ。地図か。そっかそっか。さんきゅ」
 ラブレターじゃなかった。
「裏道抜け道からおすすめデートスポット、美味しいレストランなどの情報満載だから、上手く使ってくれ」
「おお、そりゃすごいな。ありがたく使わせてもらう」
 特にデートスポットは。
「ところで、そっちのクラスの様子はどうだい?」
「あー、それを聞くってことは、喜多村のクラスも?」
「うん。ちょっと居心地が悪いかな」
 実は、今朝からクラスメイトの様子がちょっとおかしかった。
 仲山と冠、そして司馬はあまりクラスメイトと話さなかったから大して変ってないものの、俺に対して妙によそよそしいというか、距離を置きたがっているというか。そう、自己紹介の後の数日間のような感じになっている。あー、思い出したくねーっ!
「おそらく、理由は生徒会のことだろうね」
「だろうな」
 朝のHRで、臨時生徒会役員が決定したことが発表された。昨日の全校集会のこともあるから、役員の俺と話すのは気まずいってとこだろう。
「この様子じゃ、戦争に参加してくれる生徒も少ないんじゃないのかな」
「……かもしれないなぁ」
 今の状況じゃ、多く見積もっても十人程度のはず。十人でどう戦えばいいんだよ。竹中重治さんは、十六人で城を落したというけど。残念ながら俺にそんな能力はない。
「まあ、戦争まで後数日あるし、そこは会長殿の仁徳に期待かな」
「……そうだな」
 体育館のステージの上で緊張しまくってた仲山の姿を思い出す。本当に大丈夫なのだろうか?
「じゃあ、僕は教室に戻るよ」
「えー、昼飯一緒に食べようよ」
 一緒に食べる人、今の状況じゃ司馬くらいしかいないし。それは死んでもごめんだ。
「ほー、それはデートのお誘いかな?」
「どう受け取ってくれてもかまわないよ」
「そうかい。照れるね。でも、せっかくだけど遠慮しておくよ。すまない」
 ショックッ!!
「でも、山中高校に友人がいるというクラスメイトとのランチだからね。すっぽかすわけにはいかないのさ」
「あー、情報収集か。なら仕方ないな」
「ご理解いただけて嬉しいよ。じゃあ、僕は行くね」
 そう言ってベンチから立ち上がると、喜多村は校舎の方へと歩いていく。その途中、
「また、放課後に生徒会室でね」
 俺の方へと振り返り、微笑みながらそう言った。これが恋愛ADVならCGゲットだね。
 なにが言いたいかっていうと、それくらい、今の喜多村は可愛かったってことだ。
「……はっ!?」
 ひょっとして……これが恋!?
 んなわきゃねーよ。もし俺が恋なんてしたら、日本沈没だよ! 嘘だけどね!
 そんな感じで、一人黙々とカップル達に混ざって惣菜パンを食べましたとさ。しょっぺ。

◇ ◇ ◇ ◇

 あっ!
 と言う間に放課後。生徒会室には、俺と喜多村と司馬のみ。仲山と冠は、資金集めと生徒へ戦争参加を呼び掛けに言行っているので、ここにはいない。どうやるか方法はわからないけど、頑張ってほしい
「そうかい。ありがとう。では、土曜日に。……ふぅー」
 携帯電話をポケットにしまい、一息つく喜多村。喜多村は、山中高校の情報を集めるためにいろいろと奔走しているらしい。さっきから、何度も誰かに電話している。それだけ交友範囲が広いんだろう。俺も見習わないと。
「ふうむ……では、このルートを通って敵部隊に背後から奇襲、というのはどうだ?」
 地図をシャープペンで指さしながら話す司馬。俺と司馬は、対山中高校戦の作戦を考えていた。
 何故司馬が、と思うかもしれないが、それは至極簡単なこと。冠が司馬を、
『いらねーよ、むしろ邪魔だっつーの』
 と置いていったかから。交友関係も狭い司馬のため、情報収集も満足にできない。というわけで、自然に俺と一緒に作戦を考える係になった。勘弁してほしい。
「そこは中立エリアだから通行禁止。したがって奇襲も無理」
「むむむ……」
 それでも、案外司馬は役に立っていた。
 漫画とラノベとエロゲ(本人は十八禁じゃないぞ! って言っているけどそれエロゲじゃなくね?)と歴史SLGで手に入れた知識で、ひっきりなしにさまざまな作戦を立案してくるので、俺はその作戦のあらを見つけ指摘する。
 たったそれだけだが、それによって俺自身いろいろと気がつかされることがある。
 あれだ、テスト勉強のとき、『人に教えるのって、復習にもなるから大丈夫だよ』と言う奴の気持ちがわかった気がする。
「うぅむ……なら、ここから石を落して――」
「死人がでるだろアホ!」
「むむ! ならば、この織館高校につながる道をこの山道以外封鎖。その山道にて我輩が一人長坂の戦い時における張飛翼徳のごとき活躍で敵を――」
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