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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第11話


 放課後。俺は寄り道もせずにまっすぐ寮に帰っていた。
 寝間着に着替えた後、六畳一間の室内の中央に置かれた机の上に、長宗我部先生から借りてきた本、『よくわかる学園都市』を広げる。
 そう、今朝長宗我部先生が持っていた、この学園都市に関するルールやら学園都市のシステムの説明などが書かれたものだ。
 これ、生徒に貸してもよかったのかと心配になるけど……まあ大丈夫っしょ!
「……よしっ!」
 電気ケトルで沸かしたお湯を、紅茶のパックが入ったコップに注いでいく。
 飲み物の準備もできたし、これで集中して勉強に励むことができるね!
 そう、俺が今できること。それは、この『戦争システム』に何か抜け道がないかを調べることだ。
 まだ生徒会長と大きな接点がない以上、できることはこのくらいだろう。
 戦争資金やらは、仲山に任せる。俺にはよくわからないし。
「ええと……なになに」
 本を開き、最初にある目次を見る。
一・学園都市の歴史
二・学園都市創設時に起きた問題
三・歴代学園長の顔ぶれ
四・学園都市がもたらす効果
「……ここら辺は飛ばしてもいいかな」
 歴代学園長の顔とか覚えても意味ないだろうし。
六・『有能人材育成システム』について
七・その他のシステムについて
八・学園都市内に存在する学校名簿
「この辺りから見ればいいのかな……」
 俺が調べるのはシステムの抜け穴だから、おそらく合っている……はず。
 そんなわけでページをめくり、本を読み進める。

・『有能人材育成システム』について
 このシステムは、中国史、特に前漢後漢三国時代や日本の戦国時代を参考に作られたシステムである。
 各学校の生徒会長が君主となり、学園都市内を統一することを目指し、切磋琢磨することを目的とする。
 君主たるものは、生徒に選ばれる人望、資金運用や人材登用などの政務、戦争に勝利するための知識や機を読む能力などを兼ね備えておらねばならず、仮に優秀な君主たりえるものは、将来世界に様々な恩恵をもたらす者となることだろう。

「なるほどなぁ」
 たしかに、学校という狭い世界とはいえ、生徒を治め、学校を繁栄させていける人物ならば、将来世界に恩恵をもたらす者、たとえば優秀な政治家だったり、それこそ大統領や首相になれる人材が育つってことか……。
 まあ、言ってることはわかるし、納得もできる。
「……まあいいや、次はっと」

一・戦争について
 『戦争』は、『有能人材育成システム』における最重要の項目である。
 学園都市内は二十五の学区に分かれており、さらに学区内も複数のエリアに分かれている。
 エリアは、それぞれ学校が所有する領土と、ショッピングモール、学生寮などの中立エリアの二つがある。
 戦争とは、他校の領土へ侵攻し、奪うことを言う。戦争中、中立エリアに侵入することは不可能である。仮に侵入した場合は、失格の後、罰則を与える。
 各エリアにはそれぞれ『拠点』が一~五か所あり、各エリアは過半数の拠点を押さえている学校の所有領土となる。
 最終的な戦争の勝利条件は、それらエリアを奪い、敵校の校舎を占領することである。敵校に校舎以外に所有エリアがある場合も、校舎を占領することは可能である。
 校舎を占領する方法は、自校の校旗を敵校の屋上に掲げるか、敵校の降伏を受け入れることでのみ可能である。
 生徒会長が戦闘続行不可能となった場合も勝利となるが、その場合はただ戦争が終了となるだけで、エリアや校舎は占領されたことにならない。
 戦争に敗れ、校舎を占領された学校に所属する生徒は、原則として占領した学校の生徒となるが、占領した学校はその受け入れを拒否してもよい。そうなった場合、敗れた生徒の処遇は学園都市側が決定する。
 戦争開始時刻は、一律で午前十時からとする。やむを得ず戦争開始時刻が遅れる場合は、翌日へ延期とする。
 戦争は、午後六時をもって強制中断となる。そのときに戦争を続行するか否かを生徒会長同士が決め、講和が成立すれば戦争は終了。講和が成らなかった場合は翌日の十時より戦争を再開する。再開する際は、戦争に参加している学校の生徒全員が戦争終了時とまったく同じ状態で再開すること。もし違った場合は、無条件で敗北となる。
 他校に戦争を仕掛ける場合は、一週間以上前に戦争を仕掛ける学校へ宣戦布告する義務がある。宣戦布告をしなかった場合、ペナルティとして5万ポイントを支払わなければならない。支払えない場合、その戦争は無効となる。
 他校から戦争を仕掛けられた学校は、戦争終了時より二週間の間、戦争をした高校に攻め入ることも攻められることもできなくなる。
 やむを得ず戦争続行不可能な状況になった場合は、両校ともに二週間の講和がなったものとする。
 中断、続行不可能などの判断は、派遣される『ジャッジ』が降す。ジャッジの判断には必ず従い、従わなかった場合は警告の後、ペナルティを与える。

「うーん……」
 戦争の勝利条件はわかった。でも、何かしらの抜け穴らしきものは見つからない。
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