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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第10話

第三幕

 仲山が生徒会長に立候補し、孟徳さんと再会した日から二日が経った水曜日。
 オンボロ寮で朝を迎え、身支度をして学校へ向かう。すると、学校内はどこか騒がしい雰囲気に包まれていた。なにかあったのだろうか?
 気になりつつも、たったか教室に向かう。
 と、教室内も喧騒に包まれていた。
「どうしたんだ?」
 近くにいたクラスメイトの萩原君に訊ねると、萩原君は一枚のポスターを俺に見せてきた。
「なんだこれ?」
「まあ、見てみろって」
「うぃー。ええっと、なになに……」
 手渡されたポスターを見ると、そこには大きな文字で、
『織館高校の全生徒に告ぐ。我が山中高校は来週の水曜日に織館高校へ宣戦を布告する。降伏すれば、我らにはそれを受け入れる準備がある。要検討されたし。
 山中高校生徒会長 土田光宙(つちだぴかちゅう)』
 と書いてあった。山中高校の生徒会長の名前、なんだよこれ。『ぴかちゅう』て。絶対いじめられるでしょ。よく生徒会長になれたな。
 しかしなるほど。これは学校中が騒がしくなるのも頷ける。
「宣戦布告……ねえ」
「うん。こりゃやばいっしょ? 今朝愛車のサイクロンマグナム(自転車)を停めてたらどっかから飛んできてさ、驚いたぜい」
「……たしかに」
 ポスターを萩原君に返した後、俺は教室内を見回す。
「……いない、か」
 目的の人物、仲山劉華の姿を発見することができなかったので、俺は溜め息をついて自分の席に着いた。
 多分、このことについてはHRで話があるだろう。
 ってなわけで、俺は鞄から読みかけのライトノベルを取り出して、空想の世界へと旅立って行った。


「えー、みなさんもすでに知っているかと思いますけど、この織館高校は山中高校に宣戦布告されました」
 朝のHR。いつもなら、
『今日も元気に頑張っていきましょー! うっうー!』
 なんて他愛もない挨拶だけで終わるのだが、今日はそうもいかなかった。
 宣戦布告。
 つまり、『戦争システム』による戦争を仕掛けられるということ。
「今、織館高校には生徒会長がいません。このクラスの劉華ちゃんが、生徒会長になるために動いてくれてるけど……色々と手続きがあったりして、正式な生徒会長になるには時間がかかります」
 長宗我部先生の言葉を聞いた後、ちらりと横目で仲山を見る。
 仲山は、申し訳なさそうに俯いていた。別に仲山は悪くなんてないのに。
「ですが、今回の場合、『臨時生徒会長』という制度が適用されます。これは、『宣戦を布告された時に生徒会長がいなかった場合、希望者が臨時の生徒会長となって学校の指揮をとれる』というものです」
 つらつらと、何か薄っぺらい本を片手に長宗我部先生は説明を続けていく。多分、あの本はこの学園都市内の規則やらシステム概要などが書かれているものなんだろう。
「このままいけば劉華ちゃんが臨時の生徒会長になると思うけど……他にも希望する人がいたら今日中にわたしのところまで来てください。それでは、HRを終わります」
 その言葉を皮切りに、教室内が騒がしくなっていく。
『おいおい。こんな状況で大丈夫なのか?』
『これ、降伏した方がいいんじゃね?』
『そうね。降伏すれば受け入れるって書いてあったし……』
『いや、でも嘘かもしんないだろ? 噂じゃ、配下になった学校の生徒は、それこそ奴隷のような扱いを受けるって聞いたぞ』
『誰から?』
『もう一人のボクから』
『『『『『『 誰だよそれっ! 』』』』』』』
 ……うん。うちのクラスは今日も元気だな。
 ただ、話を聞いている限り、戦争に対する士気はあまり高くないらしい。
 生徒会長不在、生徒数2百未満……。立地的には背後を海で守られているので悪くはないけど、正直勝てる要素は限りなく少ないし、当たり前といえば当たり前だけど。
「……でもなぁ」
 呟きを漏らしつつ、もう一度仲山の方を見る。
 仲山は、クラスメイトの女子(名前は忘れた)と一緒に、一枚の紙を見ながら何かを話し合っているようだ。
 その目からは、諦めた様子は伝わってこない。多分、降伏はしないつもりだろう。
「……はぁ」
 降伏派と戦争派。全校生徒がこの二つの派閥に分かれた場合、戦争に勝つことは不可能になるだろう。
 ただでさえ戦力が少ないのに、内部に反乱の不安を抱えたままでは、勝負にならない。
 それならば降伏したほうがいいように思えるけど、俺は降伏には絶対に反対だ。
 たとえ俺以外のみんなが降伏するとしても、俺は一人で戦う。
 そのくらいの覚悟は、ある。

 なぜならば、俺には絶対に越えなければならない壁があるから。
 天才と呼ばれた、幼馴染みという名の巨大な壁が。

 ……そのために、大帝国学園の圧倒的な力がほしかったんだけど……。正攻法で戦っても孟徳さんのいる蒼龍館学院を叩き潰せるような。
 まあ、過ぎたことを嘆いてもしょうがない。
 今は目の前に迫る障害をなんとかしないとな。
 ……現状、俺にできることはあんまりないけど。仲山ともまだ話せてないし。

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