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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第十二話 ゾロの決心

そこへようやく起き出した連中がやって来て、さらに騒々しくなった。
「タビーはもう行っちまったのかあ。水くせえなあ」
「最後にご挨拶できなくて残念ですねえ~…」
「みんなによろしくって言っていたわ」
「無事に目的地まで送り届けたんじゃ。これ以上の干渉はかえって迷惑かもしれん」
「おめぇらがうるさく付きまとうから、さっさと出てっちまったんじゃねえのか~?」
ゾロは納得できずに腹を立てたままだったが、最後の一言にぐっと言葉を詰まらせた。そんなつもりは全くなかった。しかし、タビーにはそう思われていたのだろうか…。
ゾロの苦悩をよそに、能天気な麦わら達の関心は他のことに移り始めていた。
「ルフィーさん、この港にはどのくらい停泊するおつもりですか~?」
「ん~、まだ分からん!」
「この島の名物は何だ?」
「海鮮料理と温泉と、岩壁でのロッククライミングが有名だ。ファッションの町でもあるらしい」
「有名な靴のブランドの本店があるのよ」
「行ってみたいわね」
ゾロの戸惑いと怒りは、仲間たちの賑やかなおしゃべりにかき消されてしまいそうだ。
この時、ゾロはローの姿が見えないことに気が付いた。
「トラ男がいないぞ…?」
「用があるって言って、どっか行った。しばらく別行動だってさ」
ルフィーがあっけらかんと答えた。
「いつ出てったんだ?」
「う~んと、タビーが出発して、すぐだったよな?」
ルフィーはチョッパーやサンジの顔を見ながら言った。ゾロは直立不動のまま動かなくなった。
「まったく、自分勝手ねえ」
「電伝虫は持ってったから、連絡は取れるぞ」
「しばらくというのは、どのくらいじゃろうの?」
「さあな」
各自の意見や質問に、ルフィーはいつもの調子で答えている。やがてそれらも尽きてきて、一同はそれぞれが思っていることを好き勝手に口にしながら、ダイニングキッチンに入って行こうとしていた。
「腹減った~。そろそろ飯にしようぜ」
「今日の朝飯は何だ?」
その時、ゾロが仲間達の背中に向かって大声をあげた。
「ちょっと待て、お前ら!おれもしばらく船を離れるっ!」
全員が一斉にゾロのほうを振り返った。やがて、誰からともなく声があがった。
「やめとけやめとけ。道に迷って戻ってこられなくなるぞ」
「そうよ、アンタは船からあんまり離れないほうがいいわ」
一瞬、ゾロは口をへの字に引き結んだが、すぐに力強い声で言った。
「いいや、決心は変わらねえ。しばらく自由にさせてもらうぜ。船には必ず戻ってくる」
少しの間、沈黙が流れていたが、船長であるルフィーは、思い切りよくニカッと笑って言った。
「分かった!必ず戻ってこいよ!」
「!!」
たちまちその場は騒然となった。誰ともなく声があがった。
「許可するのか?」
ルフィーは、これに対してちょっと小難しい顔で答えた。
「だってトラ男に良いって言ったのに、ゾロには駄目とか言えねえし…」
「ゾロは究極の方向音痴だぜ。本当に戻って来れるのか?」
「誰か付いてってやれよ」
「おめえが付いてけよ」
これにはゾロ自身がきっぱりと断った。
「付き添いなんぞ不要だ。一人で行く」
なぜかちょっとふんぞり返って、自信ありげに豪語している。
ここで大胆にも、ロビンがゾロに対して次の質問を放った。
「タビーを追っていくつもりなのね?」
ゾロを始め、全員が一瞬言葉を失う。仲間達からの反応は様々で、「それははっきり言うなよ」というものと、「そうだったのか」というものと、両方があった。ロビンは構わず続ける。
「どうやって追いかけるつもり?手掛かりはあるの?」
沈黙の中、ロビンはさらに続けた。
「ただ人づてにたずね歩くだけでは、何年かかっても見つけられないわよ。それと、私にはよく分からないけど、見聞色の覇気って人探しもできるのかしら?だとしても、何の当てもない状態では難しいと思うわ」
ロビンの話しを聞いて、ゾロは照れ隠しの否定などしないほうが良いことを悟った。
「あの女に手合わせを申し入れていたんだが、その暇もねえまま行っちまった。しかし、あれだけの手練れと手合わせもしねえまま別れるのは残念でならねえんだ」
ゾロはロビンに真っすぐ向いて訊ねた。
「ロビン、あの女を探す手掛かりが、お前には何かあるのか?」
「ないことはないわ。ただ、確実という訳でもないの」
この問いに、ロビンは大輪の花のようにほほ笑んで答えた。

ロビンは説明を始めた。
「タビーにはボルドール地方の訛りがあったわ。ボルドール地方というのは、この島の内陸にある地方よ」
誰かが口を挟む。
「でもよ、訛りがあるってだけで、これからその地方に行くだろうってのは短絡的過ぎねえか?」
するとロビンは、ニヤリと笑いながら言った。
「このマルゼイヨ港を指定したのはタビーよ。その時、マルゼイヨ港に行けない場合は、サントポペ港でもいいって言ってたわよね、ナミ?」
サントポぺ港とは、ここから西に700キロほど行ったところにある港である。ナミが答える。
「ええ、そうよ。でも特に問題がなかったから、第一希望のマルゼイヨ港にしたのよ」
「マルゼイヨ港とサントポぺ港の共通点は、海岸部からボルドール地方へ行く街道が通っていることよ。タビーがボルドール地方に向かったと考えても、そんなに間違ってはいないんじゃないかしら」
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