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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第十一話 つかの間の休息

態度には表さなかったが、ローはこの言葉に歓喜した。タビーに許してもらえるかどうかが、ここ数日間のローの最大の気がかりだったのである。
「それから…」
ローの心中など知る由もないタビーは、鬼哭について自分が分かっていることを、静かな口調で話し始める。
「あなたの鬼哭のことだけど、私にもよく分からないの。今まで鬼哭のことは、見たことも、名前を聞いたこともない。でも、鬼哭が私に何かを伝えてきたのは確かだと思う。私がこの船に乗りこんだのも、鬼哭がそうすれば良いって教えてくれたからなの」
「…」
ある日突然、自分の刀が何かに反応して予想外の現象を引き起こしたのだ。このせいでローが心を乱すのも、不思議はないとタビーは考えていた。そして最後に、少し冗談めかした口調で付け加えた。
「それと、あなたから鬼哭を奪うつもりはないわ。そもそも、私には大き過ぎるし」
ローはこれを聞いて、多少は冷静な思考回路に戻りながら、タビーが考えていることは分かったが、鬼哭が考えていることは何も分かっていない…つまり、「鬼哭がこの女に惚れた」説は残っているのだ…と、ぼんやりと考えた。しかしそれでも、今のローの頭の中は「この女はもう怒ってねえ…。良かった…」という能天気な感情が占める割合のほうが大きかった。
二人の間にしばしの沈黙が流れていた時、バタンと音を立ててドアが開いて、いきなりゾロが顔を出した。
「おおっと、いたのか。邪魔してすまねえ」
ゾロは驚いた顔をしていた。
「お邪魔だなんてことないわ。こっちに座って一緒に話さない?」
タビーがにこやかにゾロに返した。ローはタビーと二人きりの時間が終わってしまったことで、少し不機嫌になった。それを二人に悟られることはなかったが。
ゾロが二人に説明した。
「いやなに、甲板から釣り糸を垂らしてたんだが、珍しい魚が釣れたんで、しばらく生け簀で飼うことになったんだ。魚はもう生け簀に入れたから、この部屋の中から見てみようと思ってよ」
「まあ、どんな魚なの?」
「体の色は普通なんだが、背ビレが赤くて、しかも髪の毛みたいに広がってて…」
ゾロは魚の形状をタビーに説明していて、情けないような気持ちになっていた。どうして自分はもうちょっとマシな形状の魚を釣らなかったのだろう…。
「そんな魚、見当たらないわ。どこにいるのかしら」
タビーは生け簀の中を熱心に覗き込んでいる。
「生け簀は広いからな」
廊下から複数の話し声が聞こえてきた。他の連中もゾロが釣った魚を見に来たのだ。大勢が入ってきて、部屋は一気に賑やかになった。なぜだかゾロは少しホッとしていた。

ついにゴルジカ島への航海4日目の朝が来た。サニー号は、すでに夜明け前にマルゼイヨ港に入っていた。そろそろみんなが起き出して、活動を始める時間である。
「なんだ、もう港の中に入っていたのか」ゾロが手足を伸ばしながら甲板に出てきた。
「ええ、風向きが良かったから、予定よりも少し早く着いたの」ナミが答える。
マルゼイヨは大きな港だった。陸の上に並んだ美しい街並みから、朝早くから働く人たちの活気が伝わってきていた。船の上からその様子を楽しんでいるゾロに、甲板にいたルフィーがいきなり言った。
「タビーはもう行っちまったぞ」
ゾロは思わぬ衝撃を受けた。一瞬、目の前が白くなったような気さえした。
「何だって?!行っちまったって…」
ルフィーは、さも何でもない事のように続けた。
「ああ、これからの道のりが長いから、できるだけ早く出発したほうがいいって言ってな。サニー号が港に着くと同時に行っちまった。お前らによろしく言っといてくれって頼まれたぞ」
タビーの出発に立ち会えたらしいチョッパーとサンジが、残念そうな様子で言う。
「大丈夫かな。くれぐれも無理はするなって言っといたけど」
「朝飯くらい一緒に食ってけばいいのによ」
ゾロはパニックになりかけながら大声で喚いた。
「お前らっ、どういうことだか説明しろ~~!」
「な、何だよいきなり…。つまりだな」
麦わら以下3名の説明によると、その時間の見張り役はルフィーとチョッパーだった。タビーの容体がある程度良くなってからは、チョッパーはもう医療室に泊まり込んでいなかったので、見張り役が回ってきていた。
船から港が見えだした頃、まず航海士であるナミが起き出してきた。夜明け前の、ほの明るい空の下で、船を港に入れることにする。やがてサンジも朝食の用意のために起きて甲板に出てきた。
そして、そこにすっかり身支度を整えたタビーが現れた。
「みんなを起したら悪いって言うからよ、その場にいた奴だけで見送ったんだ」
ちなみに、船長のこの発言は若干正しくない。ロビンはタビーを見送るためにわざわざ一度起きて、その後、もう一度寝た。
説明を聞いても、ゾロの理不尽な腹立ちは収まらなかった。
「お前ら、なんで引き止めなかったんだっ!」
「だって早く出発したいって言うだから、しょうがねえじゃねえか」
「レディの望みは黙って聞くのが男ってもんだ。それに弁当は持たせたぜ」
「一応、具合が悪くなった時に飲む薬も持たせたぞ」
「タビーがそうしたいって言ったのよ。無理に引き止めることはできないわ」
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