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『遊戯王-デュエルモンスターズ外伝 The end of Endless Rondo』

原作: 遊戯王 作者: コモン
目次

ターン002:悪夢再び



 「……っ!寒ぃ。痛ぇ…」

とある夜の広場。ゴミ山の中で眠っていた青年は、寒風と背中の痛みに叩き起こされた。

どこぞの整備士の様なくたくたのツナギを着た青年は、大きなハート柄のタオルを頭に絞め直し、どっこいしょとその場に胡座をかいた。


飲み過ぎて道端で寝てしまったのか。

酒回りはもうなかったが、意識はぼんやりとして時間の感覚が無い。今日は何曜日だったろうか。

「うう。昨日は確か…。(我らがyuiちゃんのライブがあって、その後仲間と騒いで、三次会行って…うーん)」

などと記憶を辿るものの、手に持っていた筈の、好きなアイドルの記念ポスターやCD等を詰め込んだ買い物袋を紛失している事に気が付き、考えるのを辞めた…。

その代わり、青年は自分が別のものを持っていることに気が付いた。
首には首輪が、左腕には"とある機械"が取り付けられていたのだ。

 「"デュエルディスク"だ……」

…俺は何でこんなものを持っているのか。
ここはどこなのだろうか。

いろいろ聞きたい事もあるが、一体誰に聞けば良いんだ。と青年は自問するしかなかった。



 はてさて、ここは童実野町バスターミナル裏の青空公園の様だ。青年は、入り口の奇妙なモニュメントと中央の時計台に見覚えがあった。

この場所は日中は、若者やサラリーマンやスケボーマンや野良ネコや鳩達の集まる憩いの場所だ。
しかし夜には、静閑な星明かりと街明かりの中に溶け込む、不良やアベック達の格好の隠れ家的空間へと変わる。そんな公園だ。

現在、時計台の時計の針は丁度4時44分を指している。

月影も沈む朝の前兆の闇の中。
ホラーかよ。と青年は思った。

しんと静まりかえり過ぎる異常な人の気配の無さだ。どこかでヤンキー達が隠れて待ち伏せをしているかの様な、怪しい雰囲気。
見た事のない黒霧の漂う薄気味のわるーい空気感。
ホラーかよ。と青年は思った。


 「……ふあぁあぁあああぁ~あ!!!!」

 「ひやぁ!!」

青年は飛び上がった。
背後から謎の雄叫びがした為だ。

見るとその正体は、ただのあくびをするラッコ顔のコアラっぽい巨漢であった。

 「…ん?何だよ!?見世物じゃねぇぞコァラァ!」

気持ち悪いものを見るような目で見ていると、ラッコ男に威圧された。
青年は慌てて、他の何かを探している体〈テイ〉で周囲を見渡しやり過ごすのだった。

同じ状況下に置かれたのが自分一人では無いことに親近感を覚える青年だったが、驚いたのはまだそれだけではなかった。


改めて見渡す黒霧の中に、他にも複数人の人影を発見したからだ。それはまるで事故現場を思わせる様な、あまり気持ちのいい光景ではなかった。

同じ時刻に同じ場所で10人近くの人が倒れているのだから当然である。


ホスト風のイケメン。

セーラー服の美少女。

金髪のチャラそうなおじさん。

どう見ても893のスキンヘッド。

性格がヤバそうなパンキー・ガール(パンチラ)。

ジャガイモみたいな妖怪少年。

外国人俳優の様なスーツの男。

中性的な容姿の短パン小僧。

奇抜な戦士?のコスプレイヤー。


普通に考えて普通ではない光景…。
何故、何の目的でこんな事故現場の様になっているのは不明だが、この謎を解くヒントになりえそうなモノが唯一つだけあった。
 
"デュエルディスク"。

それは、青年とラッコ男を含めた、何故かこの場で横たわっていた11人全員がデュエリストという事を示している。
インスタ映えも良いとこである。


 ラッコ男「コーァラ!無視をする気か?オイ!?なに見てるんだと言ったんだゾウ」

 青年「何でもないっすよ。何なんスか貴方」

 金髪「……うっせーなーオイ。ぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあヨォ!!」

ラッコ男の怒鳴り声に感応して、横たわっていた人達が次々に目を覚まし始めた。

 妖怪少年「…うーん…。俺はどこ…ここは誰なんだぞぉ~?」

 セーラー少女「えー!?何でアタシ外で寝てるのよー!?えー何で何で何でー??」

 イケメン「…何なんだい君達は?イベントか何かかい?」

 戦士「……what's? no wa~y!アリエナーイ!」

 ラッコ男「なに人だよお前…」

皆、口々に驚きの声を上げていく。
どうやら自分達の置かれた現状が信じられない、ありえないと言った様子で、まるで夢を見ているかの様な。という風だった。


 「……ん!?!?!?」

 ──12月18日(日) 4:44 圏外 32%
ツイートしようとした青年だったが、取り出した携帯を見て目を疑った。

ふと振り替えった時計台。その針は先程と全く同じ時を刻み続けていた。秒針だけが空しく周っている…。

 青年「…?壊れてるのか…?」

 外国人俳優「…君、ちょっと良いかな。私は確かホテルで休んでいた筈なんだが、気付いたらこんな所にいた。…何か事件に巻き込まれたのだろうか?」

 青年「あ?こっちが聞きてーよ」

 893「…チッ(電話が通じない…)」


皆が抱える疑念や違和感や一抹の興味がノイズとなって充満していく。

やがて冷たい風がそよぎ、木葉が舞った。

黒いモヤがを濃度を増し、周回する。

暗雲が星天を覆い、うねり始める。

物陰が波打ち、まるで生き物の様にぐにゃぐにゃと歪んでゆく。


 セーラー少女「…きゃっ」

そして、逆巻いた一陣の突風が一同の間を駆け抜けた瞬間、ターミナルの屋根の棟先に一人の男が姿を現した。

 「……よぉ!漸く全員お目覚めのよ"うだなぁ。調子はどうだ?くくく」

鎖留めの付いたフードを被り素顔を隠した謎の人物。ギザギザの長髪から覗く鋭い眼光と褐色の素肌が特徴的な青年だ。

男はニヤニヤと不気味に笑った。


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