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岸辺露伴はもうちょっと動け

原作: ジョジョの奇妙な冒険 作者: すずき
目次

みんなちょっとずつ違ってるけど、みんなそれで良いのか

「我を忘れる」って瞬間、あるよね
オレはこの時が初めてだったんだけど…ビックリしたよ

本当に自分じゃなくなってしまう…んじゃない。
違う自分がもう一人出てくるんだ

今までの自分が知らない別の自分が出てきて、そいつが自分を思い切り掴んでブンブン振り回してしまうような感じ

振り回されて、周りの景色もよくわからなくなりながら、それでもオレは「一体今何が起こってるんだろう?」って必死に考えてるんだ
事態を把握しようとしてるんだ

それはオレが事態をもう一度自分のコントロール下に収めたいからで、そういった意味でオレはオレとして存在している

となると、だ
じゃあオレを振り回してるコイツは一体何なんだろう?

オレの中にいるもう一人
オレの知らないオレ

便宜上「オレ」と言ってはいるけど、コイツは本当にオレなんだろうか?
オレの割にはオレとは思えないほどオレと違うし
オレじゃないとするなら…じゃあコイツは一体誰なんだろう?

オレの知らないどこかで、
運命は定まり続けていく
オレは運ばれていく
謎は深まり続けている



「はあーぁ?」
「何知った風なこと言ってんだ?このクソ女」

オレはそう言って、ユカコに向かってニヤリと口角を上げた
普段のオレからは想像もつかないけれど

あの女を叩き潰してやる、
あの上から目線をメチャクチャにしてやる、

そんな事を想像して、ものすごく興奮してた
ハイな気分ってヤツになってた

こんな経験は初めてだった


「セオリーをずらして笑いを取る?
それが私のオリジナル?

そんなん誰でも思いついてんだよッ!」

「くだらないし大しておもしろくもないからやらないだけだッ!」

「オマエ、自分の事おもしろいと思ってんだろ?
他のヤツらと違ってセンスあるとか思ってんだろ?

全っ然ちがうわ!

オマエは自分を勘違いしてるだけ!
オマエが考える程度の事は他人も考えとるわ!

身の程知っとけこの厨二!」

「オマエがやってる事はな、デートに行く時にシャワーも浴びずにノコノコ出かけてくのと同じなんだよ
自分の股がどんだけ臭ってるか気付いてもいないだろ?
キチンとお手入れしなけりゃマナー違反って考えてもいないだろ?」

「基本的なトコで無知なんだよオマエはッ!」

「オマエみたいなのは一人で布団の中でオナニーしてろ!」

「異臭騒ぎ起こしても被害者がいなけりゃ世界は平和ってもんだぜッ!」


「オマエはくせぇーッ!ゲロ以下の臭いがプンプンするゼッ!」

「この腐れ×××!」
「臭レマン湖!」


言い切った

ユカコは下を向いて震えている
悔しさのあまり──フン!泣いたか?

いや

…なんか違う

震えている、というよりは…


いや

震えているんだけど…

…なんか違う


泣いている、というよりは…

怒り


怒りで震えている


『ゴゴゴゴゴゴ』

って音がユカコの後ろで踊ってるような…
そんなエネルギーの振動が、映像(ビジョン)としてオレの脳内に変換されて浮かんで来るような…

ゴゴゴの音に合わせて、
髪が、
ザワザワと

震えている…
踊っている、
蠢いている

うねる髪が、蛇のように鎌首をもたげてる、

オレを狙って──

そして飛びかかって来た


思い出した
オレはこの『感覚』を知っているッ!
どこかで見たこの異様な妄執が襲いかかって来るこの『感覚』ッ!



ブラフォードだッ!


黒騎士ブラフォード!
イギリス人なら誰もが知る、伝説の騎士!
ジョジョの奇妙な冒険の一部で見たッ!

実際には存在しない、荒木飛呂彦センセイの想像したキャラクター!




…え、ブラフォード?


髪を操るならラブ・デラックスじゃないの?

山岸由花子じゃないの?


「うるさいわねッ!ゴチャゴチャとッ!!」

「言うに事欠いて『腐れ×××』ですッて!?」
「よくもレディに向かってそんなクソ下品な言葉を!」
「くびり殺してやるわッ、この不衛生なタートルネック野郎ッ!」

ユカコの髪は一瞬、ぶくっ、と膨れ上がり──次の瞬間、オレに向かってどっとなだれ込んできた
波が押し寄せるように、ユカコの髪が四方八方からオレを襲う

「逃げるなッ、殺してやるッ!」

バチン、と髪同士がぶつかり合う音がして、オレは息を呑んだ
どう逃げたのか自分でも憶えてないが、オレの目の前で髪同士はもみくちゃになって絡み合った
すんでのところで避けたんだ。助かった


「うるせぇッ!いい加減にしろッ!」


いや、違った

これも違った


オレは自分で避けたんじゃなかった

何かがオレをガシッと掴んで、一瞬で後ろに引き寄せたんだ


目の前にあったユカコの髪の群れが
次の瞬間には足元へ移動し、

更にみるみるうちにオレの足元のはるか下へと遠ざかっていく

オレが上へ移動してるんだ

成人男性一人を一瞬でひっつかんで後ろへ、更に上へ移動させるだけの圧倒的な力

そして大きさ


──オレはまた思い出した

オレはこの『感覚』を知っているッ!
どこかで感じたこの圧倒的で絶対的な『パワー』!
生きた岩山に頭を鷲掴みにされるようなこの『感覚』ッ!



タルカスだッ!


黒騎士ブラフォードと並ぶ、イギリス人なら誰もが知る伝説の騎士!
ジョジョの奇妙な冒険の一部で見たッ!

実際には存在しない、荒木飛呂彦センセイの想像したキャラクター!


…え、タルカス?

大男なら条太郎じゃないの?

っていうかコイツ、コーイチとか呼ばれてたんじゃないの?


由花子じゃなくてブラフォード
条太郎でも康一くんでもなくタルカス

なんなんだこれは


みんながみんな、

ちょっとずつ違う
ちょっとずつ自分じゃない
ちょっとずつズレた別の誰かみたい

これは一体…
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