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岸辺露伴はもうちょっと動け

原作: ジョジョの奇妙な冒険 作者: すずき
目次

『ユカコ』と『コーイチ』

ん…?
ああ、キミか

よく来てくれたね。うれしいよ

だってここに来たってことは、オレの話の続きを聞いてくれるってことだからね

正直、あきれて帰ったんじゃないかと思ってたよ

話は一人じゃつまらない
話を聞いてくれる相手がいてこそ、こっちも話に熱が入るってもんだからね

話をするなら、1人より2人が良い
それが3人ならもっとだ

…多分ね


で、何の話だっけ
ええっと…ああ、そうそう

オレの勘違いだったんだよね
人が地面に喰われてる、と思ったら階段を降りてただけだった

幽霊の正体見たりってヤツさ
わかってしまえばなんてことなかった
神秘的に見えた現象も、見慣れた日常の当たり前の景色に変わる

でもさ、それで一件落着ってわけにはいかなかったんだよね


だってさ、憶えてる?
オレは自転車で坂道を下っていて、その先には階段があるんだぜ

しかも下りの

そりゃブレーキかければ自転車はすぐに止まるよ?でもねえ

ついさっきまでとんでもない怪奇現象を目の当たりにしててさ、で、それが見間違えだったって気づいてホッとした

そんな時に自転車のブレーキのこと気にする余裕があるかな?

そりゃ確かに世の中にはそういうことに気が回るしっかりした人もいるかも知れないね
でも、自信を持って言うけどオレはそんなタイプじゃない

ってことで、オレは自転車ごと階段にダイブさ

ああ、そうそう

悪いけど、地面に喰われてた(と思ってたけど実はただ階段を降りていただけの)ヤツも一緒さ

悪いけど運がなかったね


ひとつ聞くけど、自転車で階段に突っ込んだ事ってある?
オレはこの時が初めてだったんだけどなかなかすごいもんだったよ

自転車は当然さ、坂の傾斜がそのまま続いてるつもりで進んでるだろ?
ところがそれが突然ふっと消えてしまう

でも慣性があるからある程度は、こう、そのまま進んじゃうんだよね

アメリカのアニメでよくあるみたいにさ、

坂がなくなったことにしばらく気づかないで、「あれっ?オレ、宙に浮いてるじゃん」ってなって、ワンテンポ遅れて坂がなくなったことに気づいてから落ちてくんだ
アレ、誇張じゃなくてホントにそう感じるんだなって…ちょっと感心したよね
そんな場合じゃないんだけど

そしてアニメと違うのは、まっすぐ落ちるんじゃなくて放物線を描きながらななめに落ちること

さらにこれがうまいことできてるなって思ったのがね
ちょうど階段の角度と一緒なんだよ
放物線の角度が

だから何て言うからこう…
落ちるんだけれど、落ちた先に地面がない

だからまた落ちる、

でもまた落ちた先に地面がない、

みたいな感じで、こう…ずーっと階段と平行に飛んでる感じ?
スペースシャトルがそうやってずっと落ちながら地球の周りを回ってくみたいにさ

おいちょっと待て、これはワンチャンいけるんじゃないか?みたいなね、気がしたんだよ

もしかするとうまいこと階段の最後までいけるんじゃないの?
無事着地してイェーイ、みたいな感じでハッピーエンドになるんじゃないの?なんてね

だとしたらオレ、マジすごくない?

って思ったんだけど、でもさすがにそううまくはいかなかったね
だってほら、階段降りてる人がいたからさ

オレが「人が地面に喰われてる」って見間違えた人

こっちが自転車で人生初ダイブ決めてる時にさ
うまくいったらバシッて着地して「オレってすげー!、マジかっこいい!」って、ヒーローになれるかもって思った時にさ

アイツが邪魔しやがったんだよ



「危ない!どけぇッ!」


オレはソイツに叫んだけどさ、まあムリだよね

「えっ?、えっ?、なに?」

ってビックリしているうちに、ガッシャーン!、さ
階段ダイブしてきた自転車と人間を上から叩きつけられるんだから、やられた方はたまったもんじゃないよね

「ウギャーーーーー!!!」

オレと自転車とソイツは、そのまま一緒くたになって階段を転げ落ちていったよ

蒲田行進曲かっての

しかもその階段が急な上に長いのなんの

オレの話を聞いてる君ならわかってくれると見込んで例えるけど、まんゆうきって漫画でさ、極楽大使が階段から落ちて死んだじゃん?

あのレベル

なんでただの住宅街にあんなに急で長い階段があるんだって思ったよ
なんにしろ尋常じゃなかった

真夜中だからさ階段の脇には街灯がついてるんだよね
その階段をゴロゴロ転がってくとさ、何て言うかこう、太陽がモノすごいスピードでグルグル回ってく、そんな気になるんだよね

朝と晩が何度も何度も繰り返してく
モノすごい勢いで一日が過ぎていく
日が昇って沈んで、昇って沈んで、…それをモノすごい一瞬に超早送りで濃縮した感じ

あーこれは宇宙が一周するわ、人間のキャパ超えるわ
そんなふうに思ったよ

そして最後にダーン!ってどこかに投げ出された感覚があった
頭の中も周りの世界もグルングルン回ってるけど、ゴロゴロ転がってる時の体をあちこちにぶつける衝撃がなくなって、

「ああ、やっと階段が終わったんだ」

って、そう思ったよ


なんとか生きてる
それだけでラッキーだ


気がついたらそこは見たこともない夜の公園でさ

ここに住んでてけっこう経つけど、こんな場所があるなんて全然知らなかったね

体中しこたまぶつけたけど、奇跡的に骨とかは折れていないみたいだ

そういやオレと一緒に転がってたアイツは?
地面に喰われてると思ってたらただ階段を降りていただけだったアイツ

…あ、オレの下にいた

よく見るとものすごくデカいヤツだった
身長は190センチ超えてるんじゃないのかな

えーと、もしかしてコイツがクッションになってくれて、そうやってオレは助かったのかな?

だって、よく見るとすごいことになってるんだ
全身血まみれだし、あっちこっち腕や足が変な方向に曲がってる
意識も、ないんじゃないかな…大丈夫か?


「大丈夫なわけないだろッ!バカ野郎!」


クワッと目を向いてソイツは怒鳴った
ビックリしたね

だって普通ならどう考えたって、その…死んでるんだよ、ソイツ


首が180度後ろを向いてる
エクソシストみたいになってんだよ、顔面血まみれで
それで怒鳴られてみ?
ビックリするでしょ普通


あっけにとられるオレを尻目に、ソイツは一人で喋っていた

「ああ、ああ、なんてことしてくれんだこの野郎!体中の骨が…バキバキに折れちまってるじゃねえかッ!」

なんだこいつは?
なんでこんなに平気な顔して喋ってんだ?

「これじゃあ動けやしねーじゃねーかッ!
ユカコに会いに行けねーじゃねーかッ!」

??
ユカコ?、誰?

「一緒にトラックに轢かれようって言ったのに…
一緒に死んで生まれ変わろうって約束したのに…」

死ぬって…
いや、もう死んでるんじゃないの?オマエ
なんでこれで生きてるんだよ

「いや、オレは行く!
這ってでもユカコに会いに行く!」

そう言って、ソイツは手足を一生懸命動かし始めた

動くんだ

と思ったけれど、なにせ変な方向に体中が曲がってるから、思ったように進めてない

きっと前に行こうとしてる…と思うんだけど、右行こうとしてるんだか左に行こうとしてるんだか、てんでまとまりがない

にもかかわららず、口だけはムダに流暢にに動く

「オィッ!いつまで乗ってんだ!」

「さっさとどけッ、バカ野郎!殺すぞテメェッ!!」

「オレは会いに行きてぇんだよ、ユカコに!」

ユカコ?って女の子?にうまいこと会いに行けないのはオレが原因ではないと思うけれど、確かに上に乗ってるのは申し訳ない

まあまあ、そこはどかなきゃね

はいはい立ちますよ
よっこらせと


ああ、しかしだ
オレは考える

「これは一体どういう状況なんだ?」

オレはただコンビニに漫画を読みに行きたかっただけなのに、漫画以上におかしな状況に置かれている

目の前にいる男はどう見たって死んでるハズなのに、今から一緒に女の子と死ぬためにどこかへ行こうとしている

この奇ッ怪な風景はなんなんだ

斉藤清六風にいうとなんなんなんだ

「人が地面に喰われる」なんて怪奇現象はオレの見間違いのハズだった
そんなモノはオレの錯覚で、現実はなんてことない日常の風景だったんだ

だとしたら、

それならやっぱりこの状況も、オレの見間違いなんじゃないのか?

だってほら、だいぶ頭も打ってるし

目を閉じて深呼吸して
なんなら素数でも数えて

心を落ち着かせてもう一度目を開けば、きっとちゃんとした現実が見えて聞こえてくるはずだ 

オレはそっと目を閉じて深呼吸をした

スー ハー

スー ハー

素数も数えてみた

2…
3
5…
7…
11…
13…17
……19

さあ、もうダイジョウブ


カッ、と目を開く

さあ、かかってこい現実!


「コーイチ!あんたコーイチなの!?
どーしたのよ、その姿!」

後ろから女の子の声がした


「…ユカコ? ユカコーーーッ!!」

目の前に居るのは、相変わらずバカデカくて全身が奇妙な方向に曲がった男だった


コレが現実?
誰かウソだって言ってくれよ
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