ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

岸辺露伴はもうちょっと動け

原作: ジョジョの奇妙な冒険 作者: すずき
目次

『フェイク・ニュース』または『フェイクニュース』

この世は全てウソなのさ
そう思わないかい?

オレの名前は…名前に意味があるなんて思わないけど…そうだな、キミには『フェイク・ニュース』と名乗っておこう
『・』をとって『フェイクニュース』でもいい

どっちがいい?
『・』がない方?
そっちの方がスマホでオレの名前打つ時、入力しやすくない?

…え?どっちでもいい?
そうだよね、オレもそう思っていた

でも、それでも…
キミはオレのことを『フェイク・ニュース』と呼ぶべき
『・』をとって『フェイクニュース』でもいい

大事なことだから2度言ったんだぜ

なんでって、キミはきっとオレの言うことを信じない
これから話すオレの話は…キミにはきっと信じられないだろうし、たぶん信じたくもないだろうからね

事実とは異なるウソ
自分の都合のいいようにねじ曲げた作り話
キミはきっとそう思う

だからオレは『フェイクニュース』
『・』があってもなくても、そんなことはどうでもいい
オレの話がウソか本当かも、そのうちキミはどうでもよくなるだろうからね



あれはね…何て話せばいいのかな、難しい
オレは多分、普通のヤツだよ
どこにでもある町に住んでるような、どこにでもいるような、普通の人間

きっと、君と同じ町に住んでいるような
きっと、話せばそこそこ仲良くなれるような

そして町のどこかですれ違っても、君が気にも留めないような、ね

…普通のヤツ「だった」よ

オレが住んでる町は小高い所にあってね
よくあるだろう?山を削って、そこに一生懸命建売住宅を並べたり、道路を敷いたり線路を引っ張って駅を作ったり、スーパーやコンビニを作ったりしてこしらえたような新興住宅地

ある日、夜も遅くなって日付が変わって、そろそろコンビニに新しい週刊誌が並ぶ時間になったからってんで、自転車で家を出たんだ
オレはマンガが好きだからね

ここだけの話、自分で小説を書いたりもするんだ
将来は文章を書く仕事に就きたいなって思ってる

絵を書くのは苦手だから、言葉で物語を伝えるのさ

最近 YouTube で流行ってる漫画動画とか、あれのシナリオを書く仕事とかいいよね

もし仕事をもらえたら、一生懸命頑張ってみんなが喜んでくれる話を書いてみせるさ

ええと、ちょっと話がそれたね
ま、とにかくオレは自転車でコンビニに向かったんだ

退屈でくだらない毎日のちょっとした楽しみさ

で、オレん家からコンビニに向かう時ってゆるい坂を下って行くのね
いちいち自転車こがなくていいからすごい楽

勝手にコンビニに向かっていく自転車の上で「今週は『喧嘩商売』載ってるのかなー、プロなんだからちゃんと連載しろよなー、岸辺露伴の手の早さ見習えよなー」とか「そういや岸辺露伴の『ピンクダークの少年』ってどんなマンガなんだろうなー、読んでみたいなー」なんて思いながらだらだらとコンビニに向かってたのね
しつこいけど、オレはマンガが大好きだからさ

そしたらさ、びっくりするような光景が目に飛び込んできたんだ

薄暗がりの中でさ、歩道のはずれ、街灯の光がギリ届くか届かないか、くらいのところでさ

人が喰われてたんだよ、地面に
バクッ、バクッ、って

その、「バクッ」を一回やられる度に、人が地面に飲み込まれてくの
頭の位置がガクン、ガクン、って下がってくの

「えっ、マジ!?」って思うだろ?
もちろんオレも思ったよ

そういう時に人がとる行動って、どういう感じだと思う?

ビビってそのまま逃げる?
それとも近寄って、「アレは何だろう?」って確認する?

別にどっちが悪いとか正解だとかって言ってるワケじゃないんだよ
ここで言いたいのは、オレがとった行動は(─それは無意識と偶然が混ざりあった結果だったんだけど─)どっちかって言うと後者寄りだったってこと
きっと、未知の出来事に対しての恐怖より好奇心が勝ったんだと思う

…ただ、それが間違いの始まりだったんだよね

地面は依然として人を飲み込んでいたよ
一定のリズムで、機械みたいに淡々とね
飲み込まれてる人も普通なら悲鳴とかあげるだろうけど、不思議なことに悲鳴とか叫び声とか何も言わないんだよね

すごく不思議な光景だったよ
幻想的な映画を見ているようだった
シュールなショートムービーを見ているようだった

どう理解していいかわからなくて、ぼうっとして、そのままずっと見入ってたよね

でもその一方で、現実は淡々と進んでいくもんでさ
オレの混乱や戸惑いなんて関係なく進んでくんだよね

自転車はゆるい坂を下ってるから、ほっといても、オレが何もしなくても、重力に引っ張られて勝手に進んでいくでしょ?

そして地面に飲まれてる人をじっと見てると、体もいつの間にか、というか自然に、そっちの方を向くんだよね
そうすると、ハンドルもそっちの方に切られちゃうんだよ、…わかる?

顔が右を向くとさ、上半身もそれにつられて動くじゃない?で、上半身が動くとそれにつられて手も動く。そして手はハンドルを握っているから…
結果としてハンドルも顔につられて動くんだよね
顔が向いた方に、ハンドルも動く
ハンドルが動いた方に、自転車も動く

だから自転車は「人を飲み込む地面」の方にフラフラ向かっていたんだ

でもオレはそんなこと全然気づかなくて
ただぼうっと目の前の出来事に目が釘付けになるだけで

結果としてオレは、虫が誘蛾灯に引き寄せられるように、このあり得ない光景の中心に向かって突き進んでいたんだ

自分で自転車を操ってるって意識がある時はそのスピードなんてね、至極ゆったりしたもんに感じるけれど
そういう意識がない時だと、そのスピードって意外に速いもんだってその時知ったよ

ハッと気づいたら、オレは「人食い地面」の目と鼻の先…っていうと大げさだけど、感覚的にはそのくらい近くまで来てた

気づかなかったんだ
いつの間にかそんな間近まで来てるなんて

そして近くまできて気づいたんだ

「マジかよ!」って思った

オレが見ていた「人食い地面」は、地面なんかじゃなかった


オレが見ていた「人食い地面」は…









階段だったんだ







「バクッ、バクッ、って人が地面に食われてた」
すまん、ありゃウソだった

階段を一段一段下りてただけだったんだ

よく聞いてくれ
「人が階段に喰われてると思ったら下りていた」

何を言ってるか分からないかも知れないがオレには良くわかる



…な?、本当にどうでもいい話だろう?
ウソか本当かなんてなんの意味も無いような



あ、ちょっと待ってまだ帰らないで


気持ちはよくわかる気がするけど、もうちょっとオレの話を聞いてほしい
大事なのはここからなんだ

ここからがオレの…
いや、オレ達の

『愛』と『孤独』と『狂気』の話

オレが話したいのはそれなのさ
オレの真実はそこにある

オレは『フェイク・ニュース』
もしくは『フェイクニュース』
『・』があってもなくても、そんなことはどうでもいい

ウソか本当かなんて、そんなことはどうでもいいんだ


オレの話を聞いてほしい

できればキミに聞いてほしいんだ



次はもうちょっとうまく話すから
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。