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仲間・親友・それから…

原作: その他 (原作:ハイキュー) 作者: 久宮
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第1話

いつからだろう
この男が必ず視界に入っているのは
いつからだろう
隣を歩くこの男に、こんな感情を抱いたのは

隣に座っている男が、こんなことを考えていたなんて…知るはずがなかった。

花巻貴大。
青葉城西高校3年、バレーボール部、ポジションはWS、背番号3。
どこにでもいるような、明るい普通の男子高校生。
クラスにも、移動教室に一緒に行くような友達もいるし、休み時間には男女関係なくくだらないことを言い合える友達も多い。
それとは別に、仲間と呼べる友達もいる。
それが、部活のメンバーだ。ふざけ合ったり、勉強の話をしたりはもちろんだが、何よりも一緒のコートに立って、同じ目標を持った仲間たちは、他の誰とも違うと思う。

「花巻、今日は飯どうすんの?」
3時限目が終わり、次の移動教室へ向かいながら、クラスメイトの河野が聞いてくる。
「あー、今日はアッチ行かなきゃなんだわ」
花巻が答えると、河野の向こう側にいた水瀬が
「了解。じゃ、4限が終わったら学食ダッシュだな」
と、河野に話しかける。
「教科書とか、教室に持ってってやるよ」
花巻は二人に言うと、「助かるわ」とお礼の言葉を言われた。
今日の昼食は、登校中にコンビニで買ってきているので、どのみち教室には戻らなきゃならないのだ。
4限目が終わり、友人の教科書を預かり教室に向かう。学食や購買に向かう生徒の間を向けながら歩いていると、「なんだ。荷物持ちしてんのか」と声が聞こえた。
その声の主は、同じバレーボール部の副キャプテンの岩泉一だった。
「おう、岩泉」
花巻が声をかける。岩泉の手には、大きめの弁当箱がある。
「俺だけ教室戻るから、ツレの持って行ってやるって言ったのよ。優しいでしょ」
と、3人分の教材を軽く上げる。岩泉は、たいして興味なさそうに「ふーん」と話を流した。
「じゃ、先行ってるからな」
と、花巻に声をかけ、岩泉は屋上に向かった。
花巻も「おう」と答えると、そのまま教室に向かった。
今朝買ってきたコンビニの袋と財布を手にして、教室を出て自販機に向かう。紙パックのイチゴミルクを買うと、のんびり屋上に向かった。
「おつー」
花巻はそう言いながら、先に来ていた岩泉と同じくバレーボール部の松川一静のところに腰を下ろす。
「及川は?」
4人で昼を食べるという話だったのに、キャプテンの及川徹がまだ来ていなかった。
「教室覗いたけどいなかったから、置いてきた」
岩泉は弁当のご飯を口に運びながら言う。
「あとでギャーギャー言われても知らねーよ」
花巻はコンビニの袋から、菓子パンを取り出しながら言った。
とりあえずは3人で、だらだらと話しながら昼を食べ始めていると、案の定、屋上のドアの方から大きな声がした。
「あー、みんな先に食べ始めてる」
及川の登場は、だれが聞いても分かりやすい。
「お疲れ。で、何してたの?」
花巻が及川に声をかける。
「監督のとこに行ってきた」
及川は岩泉の横に腰を下ろし、顔には似つかわしくない大きめの弁当箱を開け始めた。
「監督に何の用だったんだ」
岩泉が及川に質問する。
「来月に連休があるじゃん。その時に、合宿できないかと思って聞いてきた」
唐揚げを箸でつまんだまま答える。
「合宿?」
それまで黙って聞いていた松川が反芻する。
「うん。しばらくは大きな大会がないけど、今のうちから基礎力を強化しておくべきじゃないかなって」
「へー。キャプテンらしいこと言ってんじゃん」
花巻が茶化すように言う。
「キャプテンなんです」
すかさず及川も反論する。
「いいかもね、合宿。次の大会が終わったら、俺らは終わりだし、そのあとは今の2年中心にやっていくんだから、今のうちに覚えられるもん覚えてもらうのも」
あまり表情を変えずに松川が言った。
「それもそうだな」
松川の意見に岩泉がうなずく。
「とりあえず、今日明日中に返事もらえるって」
及川が言うと、
「ま、合宿がなくても、通常練はあるもんな」
と花巻が答えた。

そろそろ昼休みが終わりに近づき、4人が屋上を後にする。
屋上からの階段を下りながら、松川が
「今日、掃除当番だから、少し遅れるわ」
と話す。すると
「あっ、俺もだった。ってか、忘れてた」
と花巻が続いた。
「二人ともなんだ。了解。終わったら早めに合流してね」
と及川が答える。
「おっけー」
と花巻が返す。そして、そのままそれぞれの教室に向かって歩いて行った。

授業が終わり放課後になった。
花巻は掃除当番を終わらせ、部室に向かった。部屋に入ると、当然のことながら誰もいなかった。自分のロッカーを開け、荷物を置き、練習着に着替える。タオルやボトルなど、練習に必要なものをバッグから取り出し、ベンチに腰掛ける。シューズの片方の靴紐を結んでいると、ガチャと部室のドアが開いた。
「あ、お疲れー」
入ってきたのは松川だった。
「遅かったじゃん」
もう片方の靴紐を結びながら話しかけた。
「じゃんけんで負けて、ごみ捨てもさせられた」
松川は答えながら、自分のロッカーの扉を開けた。松川の答えに、笑いながら「そりゃ災難」と返し、花巻はベンチから立ち上がった。すると、
「ちょっと待ってて。すぐ準備するから一緒に行こうよ」
と、着替えながら松川が言ってきた。
「何、かわいいこと言ってんの」
と花巻は、また笑い出した。
「えーいいじゃん」
バタバタと着替えをする松川が言う。
(まぁ、今から行ったら、アップするのは松川とペアだろうし…)
そんな事を考えながら、花巻はベンチに腰掛けた。
「仕方ないから、待っててあげようかね」
と、花巻が答えると、
「サンキュ。じゃ、急ぐね」
と松川が笑顔を見せた。
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