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【FGO】特異点Ω -私の故郷と記憶-

原作: Fate 作者: えせ
目次

第五節 過去との決別(最終話)

私は皆と別れ、一人歩いている。
母のかつての相棒、そして母を殺した張本人。

正直、すごくこわい。足取りも軽くはない。
ダヴィンチちゃんに「魔力流出を防ぐ」魔術をかけてもらったので、
他の皆が到着するまで、時間は稼げる。

でも、皆が私のところまでたどり着けなかったら・・・?

きっと私ができることは2つ。
1つは、令呪。
母譲りの魔力で倒す。だが、契約しているサーヴァントがいないと厳しい。
2つは、アイツが欲しがっている魔力の根源を断つ―
―つまり、自ら死ぬこと。

ダヴィンチちゃんいわく、根源である私が死ねば、この世界も崩壊するらしい。

本当にやばくなったら飲むんだよ、と渡された小瓶。

これを飲まずに済みますように・・・

進んでいくと、一気に闇が深くなった。
きっとこの先にアイツがいる。直感的にそう感じた。
イチかバチか。進むしかない。

突き当りにドアがある。
「これ、あの部屋の・・・」
母の部屋のドアだった。

思い切ってドアを開ける。
開けた隙間から、不自然なほどの黄金の光。

そこは、決して忘れもしない、あの光景。
西日で染まった、母の部屋のようだが、もう少し広い空間。
所々に見覚えのある家具。

そして窓際で、窓の外を見て立つ男。
差し込む光と同じ、黄金色の長髪。

ゲーティア。
その姿が見えた瞬間、私の記憶の底にあった、もやがかった記憶がすべて、よみがえってきた。

「うっ・・・!」
余りの情報量と所々の凄惨さに、頭痛がする。内側から殴られているような感覚。

「待ちくたびれたぞ、リツカ。」

振り向いたその姿、幼いあの時に共に生活し、時に母を襲い、幼い私も殺そうとした。
そして終局特異点で対峙した―――

「思い出してくれたかな」

私は頭を押さえたままゲーティアを睨みつける。

「あの時、君が母親の無残な姿を見たとき、君は私に見つかって、殺されると思っただろう?怯え切った眼をしていたよね。

だが、本当は違う。

私は君にあの日、忘却の魔術をかけた。
全てを忘れさせ、彼女と血のつながった君を奴隷にし、死ぬまで私と一体となり、強大な魔力を生み出し続けてもらうつもりだった。」

「だが、あの時は邪魔が入った。 あのキャスター・・・

あれから私は、お前たちの言う『人類悪』となって、回り道ではあったが、
数々の特異点を生み出しながら、新たな世界を創ろうとした。

そしてお前が成長し、私の前に現れ、“私の大部分”を抹消した。
私は、原点となるこの特異点にわずかに残る自分自身で新たに特異点を作り出し、
お前との再会を待っていた。

さぁ、今はもう邪魔はいない。私と2人で素晴らしい世界を創ろう。
死も苦しみも無い世界を」

「相変わらず、理解できないことをペラペラと・・・
昔から何一つ変わらないね」

「なんとでも言え。今のお前に何ができる?他のサーヴァントに助けを求めても無駄だぞ。
奴らは私の結界の中だ。そしてお前もな。」

ゲーティアが手を広げると、私はどす黒い結界の中に閉じ込められた。

気持ち悪い。体中に何かがまとわりついて、色々と持っていかれそうな感覚だ。
「うぅ・・・くそ、気持ち悪い・・・!」
試しにガントを撃ってみるものの、びくともしない。

「その結界はお前の魔力を吸い取る。魔力を使うほど、吸い取られるぞ」

くそ、じっとするしかないのか。
「そこで永遠に、私の魔力源になるがいい。あぁ、たまには可愛がってやる。2人きりの世界になるからな。私とお前の遺伝子を継ぐ子は、さぞかし強いだろうな」

「冗談じゃない!・・・あぁっ・・・」
あがく間にも魔力はだんだんと吸い取られていく。何か手はないのか・・・ 


魔力がダメなら、物理攻撃はどうだ。


私は護身用に持ち歩いているナイフを突き立ててみた。

「ああああああああああああっ!!」
その声を上げていたのは私だった。
痛い、いたい、イタイいたい痛いいたい。
左足に激痛が走った。熱い。焼けるような痛み。

「よせ、やめろ。その結界の中のお前と、私は繋がっているのだ。その結界を壊そうものなら、お前も死ぬぞ」

「そうか、良いこと聞いたよ。
うっ・・・あああっ・・・!!!はぁ・・・はぁ・・・!」

私はいろいろな場所にナイフを突き立てた。そのたびに激痛が体に走るのだが、もうやるしかなかった。ナイフを突き立てたとき、一瞬だが私にまとわりつく結界が弱くなった気がしたからだ。

もしこの結界が皆のいる道にも繋がっているとしたら。

弱めない手はない。

何度刺し続けただろう。激痛で足が動かなくなってきた。動く右手で絶えず結界に刃を突き立てる。

「やめろ!お前も死のうとするのか!許さない、許さないぞ!!」

まずい、ちょっと意識がもうろうとしてきた。やりすぎたかな。

このまま取り込まれるなら、と小瓶に手をかけようとした瞬間。

「!!」

壁が崩れ、砂埃の中から現れた見慣れた2人の顔。
「マスター!お待たせしました!ご無事ですか?」
「リツカちゃん!よく頑張ったね、ここからは任せな。」

「アル・・ジュナ、ダヴィンチ・・ちゃん・・。」


2人がゲーティアと戦い始めると、私を取り巻く結界も弱まっていった。

ぼーっと見ていると、私の傷も効いているのか、あまり余力はないらしく、
霊基も消えそうになっていた。


「・・・インドの英霊。」
「・・・何だ」
「お前、リツカを愛しているな」
「・・・お前には関係ない」
「マスターへの恋慕の情は、狂気に変わるぞ。・・やめておけ、リツカが大事なら」
「・・・?貴様が何を偉そうに」

「私も、もとは彼女(リツカの母)を愛していた」
「・・・!・・では、なぜ・・・」
「彼女は、私を受け入れようとはしなかった。私の思想も、私の体さえも
魔力の相性は最高だというのに。私と彼女なら最高の世界を創れるのに。」

「・・だから、彼女を殺したのですか」

「私は殺していない。」

「え?」
そうなの?ではなんで・・?

「彼女は、私に取り込まれる前に、自ら死んだ。」

「・・・・!」

そうだったんだ・・・お母さん。

「私が死に追いやったようなものだ。」
「だからって、なぜリツカに」「彼女が忘れられないからさ」「・・・・・」
それは、母自身を愛していたのか、母の魔力への執着なのか、もうよくわからなかった。
「だからお前は、大事にしろよ」

「言われずとも」

そして、宿敵―ゲーティアは消えていった。
「霊基の完全消滅を確認。
・・・お疲れ様。じきにこの特異点は崩れるよ」

「マスター、立てますか。」
「ありがと、アルジュナ。」

「先輩!!やっと着きました!・・・あれ?もう終わっていたのですか・・?」
「なんだ、俺の出る幕も無かったな」

「さぁ、帰った帰った。来てくれてありがとう。リツカちゃん。私も報われるよ。
―あの時はお母さんを救えなくてごめんね。」

レイシフトでカルデアに戻る途中、思い出した。
あの日、ゲーティアから私を守ってくれたのは、あのキャスターは、ダヴィンチちゃんだった。父の契約サーヴァント。魔術で母の危険を察知したダヴィンチちゃんを、父が海外から飛ばしてくれたらしい。

ーーーーーー

「うーーーん・・・むにゃ・・・」
「起きてください、先輩。」
「あ、マシュ、おはよう。」
「おはようございます!先輩。先ほどはお疲れ様でした。
メディカルチェックのお時間ですよ。」

「そっか、了解~」

ダヴィンチちゃんのもとへ行く。
ーーーー

「ダヴィンチちゃん・・・」
ダヴィンチちゃんはうっすら泣きそうになっているようだった。


「本当に強くなったね」

ーーーー

メディカルチェックを終え、廊下を歩いていると
「マスター、いえ、リツカ。」



その声は、大好きな



「アルジュナ!」
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