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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT229    『ゼリータ再び』


「……アッカネン大尉、まさか……連邦の戦艦を襲う気ですか?」

 エリク・ユーゴ中尉は、通信室で顔を不安げに曇らせていた。自分の上司であり、恋人でもあり、そして密かな監視対象でもあるゼリータ・アッカネン大尉は、いつにも増して好戦的な貌をしている。セックスの時よりも、獣らしい表情だ。敵を襲う気になっている時にしか、そんな顔になることはない。

 右目に備わる赤い義眼が、オーラを放つ。戦いに焦がれる獣は、宇宙を睨みつけているようだった。

「ライバルを潰す!!……それが、レースに勝つための最良の手段だって、パパとかママから教わらなかったのか、私のエリクよ?」

「……あちらも、不死鳥を追いかけている部隊だと?」

「当然だろう?」

「……ええ。そうですね。おそらく、99%の確率で、そうでしょう」

「ならば、残りの1%のことなど、考える必要はないぞ。そんなことを心配していたら、宇宙空間をモビルスーツで飛び回ることなど出来やしないってもんだよなァ?」

「否定は出来ませんね。大尉は、あのコロニーにいる戦力と、あの巡洋艦が、合流すると見越しているのですね」

「当然じゃないか。異論を挟み込む余地は、ない。何故ならな、エリク。お前もそう革新しているからだよ」

「……否定は出来ませんね」

「する必要がない。さっさと攻撃するぞ?……こちらは、タカ派のテロリスト集団である『袖付き』のマネをしているんだ。わざわざ、貴族趣味のバカみたいな改造制服を着ているのは、こんなときのためだろう?」

「はい。そうですね。我々の行動は、『袖付き』を隠れ蓑にして行われるべきです」

「都合の悪いことは、『袖付き』ちゃんたちのせいだってコトにするわけだ。まったく、どこの首相が考えたプランかは知らないが……ろくでもない作戦方針だなァ」

「……作戦の出所など、知らぬ方がいいです」

「分かっている。さてと、準備をしろよ、エリク。お前にも私の護衛をしてもらうとするさ……撃墜スコアを上げていた方が、出世には有利だろうからな」

「撃墜させてくれるのですか?」

「私が討ち漏らした敵をな……あの巡洋艦を、沈めさせてやろうか?」

「いいえ。大尉がなさりたいことを、邪魔する気はありません」

「……良い子だ。そうでなくてはなァ……お前はな、エリク。私の部下なのだから」

「……ええ。そうですよ、大尉。私は、貴方の部下ですから」

「裏切らないでいてくれよ?……私の精神は、とても不安定だってことも、モナハン・バハロには伝えておけ。そっちの方が、Ⅱネオジオングを使った時の言い訳にもしやすいだろう」

「まさか、あんな巡洋艦相手に、使うつもりですか、あのオプションを?」

「不死鳥がやって来るかもしれないからな。ユニコーンガンダム3号機は、アイツら地球連邦軍が開発した機体だ……輸送機を引き裂いたという情報、私の右目が、違和感を察知しているんだ」

「どういう、意味ですか?」

「おそらく、NTDってヤツだろう。地球連邦軍がニュータイプや強化人間対策にするために、モビルスーツに搭載しているという、クレイジーなオペレーションシステム。不死鳥にも、そのシステムが搭載されていて、活性化している」

「活性化?……あの襲撃は、不死鳥のパイロットの意図したものではないと?……いえ、パイロットは……死んでいる」

「生死は不明だが、意志は感じられた。無差別殺戮を喜ぶような種のパイロットではないのだ。あの市民への攻撃は、NTDが触発されてのことだ……ふむ。興味深い」

「……NTDは、ニュータイプを感知して機動するシステムだという報告もありますね」

「賢く考え過ぎるなよ、エリク。損しちまうこともある。他の獲物に気を取られていたらなァ……不死鳥に殺されるぞ」

「……っ。そうですね。私たちは、ユニコーンガンダム3号機に集中するべきでしょうね」

 エリク・ユーゴ中尉は、上官の忠告を素直に聞くことにした。ゼリータ・アッカネン大尉は、紛れもなく特異な能力を有しているのだから。

 フルフロンタルとのレースに破れはしたものの、それに勝るとも劣らない能力はデザインされていた存在だ。ヒトの上に立つには、少々、ユニーク過ぎるところがあるため、シャアの再来にはなれなかったわけだが……。

 強化人間としての……人工的なニュータイプとしての能力は、間違いなく、有能なレベルにある存在だ。彼女の忠告を無視することは、リスクを感じさせる。

 NTDが反応する存在は、ニュータイプ……襲撃された輸送船のなかには、ニュータイプがいたのかもしれない。ジオン共和国軍のリストに記載されていない、未知のニュータイプが……魅力的ではあるが、人材の確保は、自分の仕事ではない。

「集中することにしましょうね、私のゼリータ・アッカネン大尉」

「そうすべきだ。NTDが機能し始めているなら、地球連邦軍に対しての忠誠も見せるかもしれんし……人工的なニュータイプである私に対しても、凶暴かもしれんよなぁ」

「ならば、あの巡洋艦を攻撃すれば……不死鳥は、呼び寄せられる?」

「期待し過ぎるもんじゃないが……そう考えちゃうよねえ?」

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