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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT172   『チーム・オーガその3』



 ガトリングしかないグフなど、恐れるに足らずというか?

 ……悪くない勇敢さだが、舐めてもらっては困るぜ。隊長は目前に迫るビーム・サーベル二刀流にマニューバで対抗する。

 ステップとスラスター、そして、身を伏せる動作を融け合わすように連携させて、隊長のグフ・カスタムは流れる水のように滑らかに、まったくの抵抗を感じさせないステップ・ワークを発揮していた。ビーム・サーベルの斬撃が空振りさせられる。

 隊長はこの獲物を仕留めることも出来たが、今はこの獲物の相棒から殺してやることを決めていた。

 二刀流の特攻をサポートするために、ジム・スナイパーが控えていた。前衛と後衛。前衛は派手に見えたし、実際のところ隊長を本気で仕留めてしまう気でもあったようだが……戦術上で、トドメを刺す役割を持たされていたのは、このジム・スナイパーである。

 戦場を見渡す隊長の古強者の瞳は、連邦軍のモビルスーツ・パイロットの戦術を見切っているのだ。

『こ、こっちに来る気かッ!?』

「イージーなターゲットから狩るというのも、時には有効なもんでね」

『くそ!!』

 後衛が襲われていることに気がついた二刀流のジェガンが、あわてて背後を振り向いた。

 隊長のグフ・カスタムを追撃しようと腰を低く落とし、スラスターの出力に頼ろうとした瞬間―――オーガ4の放った遠距離ビーム・ライフルがスラスターを貫き、バックパックごとジェガンを爆破してしまっていた。

 スラスターの燃料にも引火したのだろう、その爆炎の火力は凄まじく……ジム・スナイパーは迫り来る隊長のグフ・カスタムの姿も動きも、僚機の爆炎に塗り潰されてしまっていた。

『み、見えないッ!!』

「そうだろうよ!!」

 デザインしていた動きではある。隊長……オーガ1と組んでいるのは、オーガ4である。

 前衛と後衛の関係ではあるのだ、戦場を縦横無尽に走り回りながらも、そのコンビネーションのルールは失われてはいない。オーガ1が目立ち、オーガ4が精密に敵を仕留めていくのだ。

「いいコンビネーションだぞ、オーガ4!!」

『人生最後のミッションですからね!!オレだって、隊長に迫るスコアを稼ぎたいんですよねッ!!』

「生意気だな!!だが、それでこそ、オレの二番機だッ!!」

 グフ・カスタムが跳び、ジム・スナイパー目掛けて空中から砲弾の雨あられを浴びせていた。

 ダルルルルルルルルルルルルルッッ!!

 唸る機関から放たれる暴力的な砲弾の群れによって、ジム・スナイパーの装甲が引き裂かれてしまっていた。

 爆発は起きない。起きない程度に殺したのだ……破壊したくなかったものも、そこにはあるのだから。

 ビーム・ライフル。地上に降り立ったグフ・カスタムの腕が、片膝を突いてその場に沈黙しているジム・スナイパーから、その凶悪な兵器を奪い取る。

 隊長はすぐさま後方を振り返ると、3機のジェガンに襲われているオーガ2とオーガ3を援護するために、ジム・スナイパーの高出力ビーム・ライフルをぶっ放す!!

 3000メートル先の敵も、隊長の狙撃は精確に射抜いた。そして、すぐさまにビームを放ち、ジェガンをもう一機撃墜するのだ。

 ジム・スナイパーも乗り手も死んではいるが、バックパックから繋がるエネルギー・ケーブルは生きている。

 動けなくなったジム・スナイパーからエネルギーは送られているのだ、このビーム・ライフルに。連射することが可能なビーム・ライフルは貴重なものだが、機体に搭載しているエネルギーをガンガン消費してしまう。

「死んだ敵から、そのエネルギーを奪うのであれば、問題ないというわけだよ」

 隊長はオーガ4の背後に迫っていたジムⅢに、そのビームを浴びせて撃破する。

『ありがとうございます、隊長!!』

「例など要らない、愉しめ!!」

『イエス・サーッッッ!!!』

 オーガ4も戦場の鬼となるのだ。エネルギーを使い果たす寸前だった、ビーム・ライフルを交戦中のジェスタのコクピットに突きつけて、暴発させるようなやり方で、ジェスタのコクピットを焼き払っていた。ジェスタのビーム・ライフルを素早く奪い取る。

 見事な早業を、オーガ4は見せつけてくれる。そのまま、遠距離射撃により、隊長に迫ろうとしていたジェガンを射貫いていた。

 爆炎と断末魔が、あちこちで発生する。太平洋に太陽は沈み、夕闇が青から黒へとその姿を変えていく。隊長は、信号弾を放つのだ。

 戦場の上空に輝く、赤い光を見たとき、オーガ隊はその仕組みを解禁する。灰色だった装甲の色が深い青へと姿を変えていく。

 色彩を変えただけではあるが……こちらのカラーリングの方が、よりグフらしいし―――何よりも、闇により深く融けることが出来るのだ。

「このまま、闇に紛れて敵を殲滅して回るぞッ!!」

『了解ですッ!!』

『ハハハ。生き残れちまいそうな、勢いだぜッ!!』

『……オーガ3、そんな言葉は不吉だぞ。死を覚悟して、戦おうッ!!』

『ジンクスを信じるか。オレたちには、そういう風習ってのは、無かったハズだぜ』

「……今夜ぐらいは、構わんさ」

『隊長がそう仰るのなら、まったくもって問題はないってことだよなァ……今日は、いつにも増して、自由なもんだぜッ!!』

 特別な日であることを、皆が理解している。今夜の戦いを、オーガ隊が生き残れる確率など、皆無なのだ。ここを攻撃すれば、周辺の基地からも援軍が届くことになっている。

 ルオ商会が売りつけた、ガラス・ケーブルが地下を走っている。光に近しい通信速度で、その救難信号は届くのだ。ミノフスキー粒子対策である、有線の通信だ。敵は、最初からオーガ隊を二重、三重にも包囲しているのであった。



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