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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
目次

ACT171    『チーム・オーガその2』



『く、くそうッ!?』

 ジェスタのパイロットは屈辱を噛みしめながら、歪んだ顔になりつつ、接近して来た灰色のグフ・カスタムを睨みつけるのだ。連邦軍モビルスーツの伝統的な装備である頭部のバルカン砲を唸らせる。

 ダルルルルルルルルルルルルルッッ!!

 砲弾の群れが斬り裂いたのは、鬼の影だけであった。隊長は愛機であるグフ・カスタムにマニューバを打ち込んでいたのだ。

 ニュータイプのような勘の良さなどなくとも、連邦軍のモビルスーツが取る行動パターンなど、彼はとっくの昔に把握している。

 相手のパイロットがジェスタにどんな防御手段を取らせるのかを、隊長は経験値で知っているのだ。

「10年も20年も、同じテクニックに頼るもんじゃないな!!」

 グフ・カスタムは地を這うように低く沈み、バルカン砲の弾丸の雨を回避していた。そして、回避と共に反撃は行われるのである。

 隊長はすでにマニューバを打ち込んでいる。グフ・カスタムは体を浮かび上がらせながら、ヒートブレードの一撃をジェスタのコクピットに叩き込んでいた。

 ジェスタのコクピット・ブロックが破壊されて、その場所にいたコクピットにヒートブレードが迫り、彼は大火傷をするが……死にはしない。

 隊長のグフ・カスタムはヒートブレードを抜くと、素早くジェスタの背後へと回り込み、ジェスタを背後から串刺しにしてしまう。

 シールド付きガトリングが稼働し、その姿を変える。左腕の動きを邪魔しないように、ガトリングと装甲が肩に近くにまでせり上がっていた。

 グフ・カスタムは自由になった左手で、ジェスタを串刺しにするヒートブレードを把握する。そして、隊長は愛機の右手にジェスタの持っていたビーム・ライフルを握らせるのであった。

「……派手に、暴れるとしよう」

 獣のような闘志は愛機に移り、グフ・カスタムは串刺しにしたジェスタを持ち上げたまま前進を開始する。

『敵が突撃して来るぞ!!』

『やめろ!!撃つな、味方機が盾にされている!!』

『卑劣な……ッ!!し、しかし、あの機体のパイロットは生きているのか?』

「生きちゃいるぜ。今のところはだがなッ!!」

 生きているから人質にもなる。隊長はそう冷酷に考えながら、ジェスタから奪い取ったビーム・ライフルを撃ち放つのだ。

 バシュウウウウウウウウウウウウッッ!!

 宙を焦がしながらビームの奔流が戦場を駆け抜けていく。ビームが狙ったのは拠点防衛用の対モビルスーツ銃座であった。ビームはそれに命中すると、銃座とその場にいた十数名の兵士たちを爆炎により塗りつぶしていた。

『クソッ!!』

『反撃は……ッ!?』

『ま、まて、彼は生きている。生きているんだぞ』

「指揮官としては、失格だな。助からない者を助けようとして、攻撃の手を緩めてしまう。人道的ではあるものだが―――それでは、戦場を生き抜けやしないぞ」

 隊長はビーム・ライフルを連射させて、近寄ろうとしてくる連邦軍のモビルスーツを次から次に撃破していく。

 3機のモビルスーツを立て続けに失ったことにより、モビルスーツ隊のリーダーも覚悟を決めることが出来たらしい。

『やむを得ん!!彼ごと、仕留めろッ!!』

『了解!!』

『恨むなよ、オレたちだって、撃ちたくはねえんだッ!!』

 連邦軍のモビルスーツはビームを連射してくる。ジェスタに当たり、ジェスタのパイロットがビームの余波を浴びて今度こそ焼け死に―――隊長はビーム・ライフルを乱射して、さらに二機のモビルスーツを潰していた。しかし、それで限界だった。

 盾として使っていたジェスタが被弾し、爆発の兆しを見せる。大尉はヒートブレードごと、盾にしていたジェスタを放棄すると、素早い後退を実行していた。

 限界を迎えたジェスタが爆炎へと変わる。核エンジンが吹き飛ぶことは無かったが、それでもかなり大きな爆発だった。その爆熱と閃光と煙に向けて―――隊長はグフ・カスタムを走らせていた。

 爆炎を隠れ蓑にしたのである。強烈な爆炎に身を隠すようにして、グフ・カスタムは加速していた。

 連邦のモビルスーツが味方機の爆炎に意識を奪われていたのは数秒のことではあるが……その数秒があれば、グフ・カスタムは最大戦速にまで加速し、敵の群れに接近し、ガトリング砲の掃射を浴びせることが可能となるのだ。

 ダルルルルルルルルルルルルルッッ!!

 グフ・カスタムのガトリング砲が再び唸り声を上げて、一機のジムⅢを蜂の巣にしていた。

『ぐううッ!?』

『敵は、敵は、突撃して来るのかよッ!?』

「そうだ。戦場で敵が見せた動きに、期待し過ぎるものじゃない。それを狙って、動くような知恵を持つ者だっているのだからなッ!!」

 グフ・カスタムのガトリング砲は、さらに一機のジェガンを撃破していた。突撃してきた猛者に対して、一機のジェガン乗りが現れる。

 ビーム・サーベルの二刀流だ。隊長のグフ・カスタムがヒートブレードを失ったことに気づき、そこを突こうとしているらしい。

『ヤツは、ガトリングしかない。格闘戦で潰してやるぞッ!!』

 

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