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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
目次

ACT048    『遭遇』




 エンジニアの言葉と、自分の経験―――そして、ニュータイプもどきである自分の感覚を過大に頼るようにして、ジュナはターゲットの予測を完了させる。ジムⅢが2機、ジェガンが3機。

 連邦軍機に……ロンド・ベル所属機に対しても攻撃をする。『フェネクス』もまた連邦の系譜には連なる機体だ。規格外の存在だったとしても……ジオン系のモビルスーツに比べれば、連邦軍機を相手にした経験値の方が、対『フェネクス』には有効に作用するだろうと考えていた。

 この宙域には、ジュナの見方は一人もいない。全てのモビルスーツが、ナラティブを見つければ襲いかかって来るように設定されているのだ。その設定で、こお激戦区を長時間生き抜ける。それは奇跡みたいな行為であり……ジュナは、何故かそれを型遅れのナラティブでこなしていた。

 必死に逃げ回りながらも反撃して、敵を撃破する。彼女は、並みのモビルスーツ・パイロットなどではないのだ。中の上の能力に……ニュータイプもどきの感知能力が、彼女の生存能力を押し上げてくれているのが事実であった。

『……では、攻撃を開始して下さい』

「……ああ。ミノフスキー粒子が少しでも薄くなる場所と、角度を選ぶ。理想的には、こちらのマニューバについて来てくれたら、最高なんだがな」

 高機動装備を装着して、シャトルのように巨大化しているナラティブは、それらのターゲットたちの周囲を回転するようにしてスピードを見せつけている。

 ビーム・ライフルが撃ちまくられてくるが、今のナラティブにはかすることはない。

 圧倒的なスピードではある。この戦闘に参加しているモビルスーツでは、ナラティブを超える機体はいないだろう。『フェネクス』の通常スピードに対しても、十分に対応することは可能だ。

 ……スピードには慣れた。使いこなせるだろう、サイコスーツの助けも借りることで。あとはこのスピードで兵装をどこまで使いこなせるかってコトよね……。

 速く動くほど当たりにくくなる。あちらからも、こっちからもね。でも、幾つか方法論はあるわ。とくに、このミサイルポッドを命中させるのには、コツがある。背後を取らせることだ……危険?ええ、本当に危険ね。

 でも、根拠はある。スピードで圧倒的に有利なこちらを仕留めるためには、ナラティブの後ろを取るしか敵にはない。背後から狙えば、当たりやすい。長距離のビーム兵器なら、『平面上の動き』でこちらを狙える。

 ほかの角度からでは、とてもじゃないけれど当たるはずがないものね。四次元的な予測を行うには、高機動パック装備のナラティブはあまりにも速すぎるんだから……。

 でも、背後に飛び込んでくれるのなら、こちらの思うツボでもある。背後に飛び込んで、加速しながらついて来なさい。そうすれば、平面上の動きで狙えるのは、こちら同じなのよ。

 それに……高速でナラティブを追いかけるということは、そっちの動きも単調になっているということなのよね……ッ。

 警報音がけたたましく鳴り響く。背後を取られた。こちらのマニューバが甘かったせいではなく―――仕掛けた罠に食いついてくれた。

「ミサイルポッド、射出!!」

 シュドドドドドドドオオオッ!!

 ナラティブの装着しているミサイルポッドから、連続して10発ものミサイルが射出される!!……ミサイルはナラティブを狙って背後に入り、加速していたモビルスーツ3機に対して降り注ぎ、その全てが命中していた。

 リスクを取った行動ではあったが、計算通りの行動でもある。ジュナ・バシュタは戦術を完璧に実現したのであった。3機のモビルスーツを仕留め、あとは2機だ。

 大きく旋回しながら、ナラティブの前方にビーム射撃で牽制してくる2機を捕らえる。ビームの射程ギリギリの距離から攻撃しているが、ナラティブのスピードにはついてこられない。

「……遠距離の撃ち合いじゃね、こっちの方に分があるのよ!!ハイメガキャノン、発射ああああああッッ!!」

 ナラティブは追加搭載された最強出力のビーム兵装をぶっ放す!!漆黒の宇宙に真紅に輝くエネルギーの奔流が放たれて、超長距離射撃をしていた2機のモビルスーツたちを、ハイメガキャノンの一撃が粉砕してしまう……。

「……現実でも、誇張無く、この威力だっての……?」

『ええ。物理学上、そのままの威力が出ますよ。戦艦だって、一撃で沈める。コロニーに対して使えば……コロニーを破壊することだって容易いですよ……』

「……そう。ヒトって、恐ろしい兵器を創る――――――――っ!?」

 ナラティブにマニューバを刻む。反転して、逃げるために、大きな旋回動作を開始する。うなるビーム砲撃が、一瞬前までナラティブがいた空間を焼き払っていた。

 全身の産毛が逆立っているような気がするし、事実そんな現象が彼女の体には起きていた。分かる。分かってしまった。

 吐き気がするほど、本能が逃避を推奨してくる。戦場のはるか遠方に、その機体はいたのだ。RX-93……『νガンダム』。

 その有名すぎる機体を操縦したパイロットは、今もこれからもただの一人だけと決まっているのだ。

「……地球連邦軍最強のモビルスーツ・パイロット、アムロ・レイね……『隠しキャラ』って……そりゃ、そうだわ。アクシズを蹴飛ばしたような、伝説のバケモノと戦うなんて……そりゃあ、自虐もいいところよね…………っ」

 勝てるハズがない。20キロ先から、ミノフスキー粒子の霧がかかっているはずの宙域でも、危うくビーム・ライフルの一撃を当てられるところだった。

 回避していなければ、ナラティブのコクピットが焼き払われていたという報告が、ヘルメットの内部ディスプレイに表示されていた―――。


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