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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT132    『フェネクスの戦い』




 金色に輝く機体だ。うつくしい、うつくしくて、でも―――。

「意味が分からないなァ!!そんな目立つ色をして、何様なんだよ!?……軍用機ってのは、もっと地味なカラーリングをしているべき存在だろうがッ!!」

 赤い瞳が輝いて、ゼリータ・アッカネン大尉の戦闘意欲がサイコミュ経由でシナンジュ・スタインに伝わる。

 通常のモビルスーツでは不可能なほどに素早い加速で、シナンジュ・スタインが宙を駆け抜けていく……怒りのままに『フェネクス』に向かうのだ。理解している。コイツは強敵であり、自分が倒すべき存在なのだ!!

「私が狩ってやるぞ、不死鳥ッ!!……本物のニュータイプに、本物のガンダム!!なり損ないの私たちで超えてやるッ!!そうすることで、私たちは、『原石止まり』ではないということを証明するぞ、シナンジュ・スタインッ!!」

 シナンジュ・スタインは彗星のような勢いで加速し、『フェネクス』目掛けてハイ・ビーム・ライフルの底部に付けられたロケット・バズーカを放つ!!

 自らに迫り来るロケット・バズーカに対して、『フェネクス』は冷静だった。それはそうだろう、不死鳥……加速して避けるのか?お前なら、そんなロケット、どうやっても避けられるだろうが―――その避け方を、見せてもらうぞ……私の右目になッ!!

 『フェネクス』は接近して来るそのロケット弾をギリギリまで避けることはなかった。限界まで引きつけてから、姿を消す。一瞬のうちに、500メートルは右に移動している。

「……もはや、瞬間移動に等しいスピードだがッ!!私の右目には見えているぞ、シナンジュ・スタインッ!!」

 シナンジュ・スタインが、その手足を広げるようにしながら宙で回転する。

 機体を軌道の流れに乗せながら、無理やりに捻ることにより、一瞬で敵影を追いかけるような体勢へと至る。高等なテクニックであるが、サイコミュと強化人間の組み合わせなら容易い芸当だ。

 赤い右目は『フェネクス』を睨みつけたまま、ハイ・ビーム・ライフルを再び射撃する!!

「死ねええええええええええええええええッ!!」

 殺意を込めて、宇宙に吼える。必殺の角度で、破裂するほどに暴れるエネルギーの奔流が獲物へと向かって行く―――『フェネクス』はそのテクニックにあふれた機動に対して、無防備であった。

 瞬間移動直後の自分を捕捉されるとは、『彼女』は思ってもいなかったのだろう。だが、『フェネクス』の翼が素早く動き、主を守るかのように交差する。ビームがそれらの防御に衝突すると、光と灼熱は拡散し、冷たく黒い宇宙で七色に輝いていた。

「……反射するか」

『……ゼリータ・アッカネン大尉、あの機体の金色は、高度な対ビーム用のコーティングのようです。ビーム兵器を反射して、その威力を大きく減らしてしまう』

「……なるほどな。そいつは、良く出来ているじゃないかァ!!……ムダに、派手な金色をしているというわけじゃないらしいな、不死鳥おおおおおおッ!!」

 シナンジュ・スタインはすでに次のマニューバを打ち込んでいた。

 高速で飛翔するゼリータの愛機は、狂ったような加速を使い、『フェネクス』との間合いを消していく。

 ビームの奔流から本体を守った金色の翼が開き、『フェネクス』の顔があらわになる。

「攻撃してみるかァ?戦艦のブリッジを一瞬で潰したその威力、見せてくれよッ!!」

 しかし、接近する敵に対して、『フェネクス』が選んだのは、またしても回避であった。

 『フェネクス』は急加速することが出来るが―――燃料を燃やしてはいないようだ。なかなかに不可思議なことではあるが、斥力そのものを操っているらしい……。

「スペシャルだな!!……私たちに対する、嫌味かよ?……だーが……逃げるのなら、どうして、もっと遠くに逃げない?……光の速さはどうしたよ?……そんなチマチマした逃げ足じゃあ……シナンジュ・スタインに、撃破されちゃうぞお!!」

 灰色のモビルスーツが宇宙で踊り、ハイ・ビーム・ライフルの底部に付けられたロケット・バズーカを再び放つ。『フェネクス』は再び動くが、そのスピードには翳りが見られる―――。

「―――疲れているのか?……動く度に、そのスピードが減っているじゃないか、不死鳥!!銀河旅行は、お前を疲弊させたのか!?……それなのに、何故、戻った?……待っているのか?何かを期待して、地球圏に戻ったのか?そんなに美しいモノなんて、ここらには何一つありはしないんだけどねえ!?エリク!!」

『了解!!砲撃、開始ッ!!』

 エリク・ユーゴ中尉が率いるギラ・ズール5機が、一斉にビーム・ライフルを『フェネクス』に対して撃ち放つ!!

 『翼』を動かして、『フェネクス』は守りの姿勢に入る。ビーム・ライフルがその装甲に反射していく……。

『……バカな!?直撃しているのよ!?』

『バケモノめ……ッ』

「……ああ、バケモノだ。正真正銘のオーパーツだ。この世に在るはずのない力……それを見せつけるか!!だからこそ、欲しくなるぞ、お前のことがなああああッ!!」

 
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