第29話
「……貴女、鳥頭ですの?」
「う……っ!」
そういえば、これはさっき聞いたっけ。
夢を叶える。世界のリセットをする、って。
「なら、なんで世界のリセットがお前の夢なんだよ! この世界に恨みでもあるのか?」
「ええ、そうです。正確に言えば、わたくしの夢=世界のリセット、ではないんですけどね」
「どういうことだ?」
「……貴女、世界にどれだけの不幸と、どれだけの幸福があるか、知っていますか?」
「……?」
「この世界には、星の数ほどの幸福があって、星の数ほどの不幸があるのです」
「…………」
「何故、だと思いますか?」
「……わからない」
「正解です。そう、わからないのですよ」
「……は?」
どういうことだ?
わからない?
そんなあたしの思考はお構いなしに、綾瀬川奈々子は言葉を続ける。
「なら、椎名飛鳥さん。もうひとつ、質問です」
「……なんだ?」
「もし、この世界に神がいるのならば、何故、世界をもっと幸せに創らなかったのでしょうか?」
「…………」
段々と、綾瀬川奈々子が言いたいことがわかってきた。
そして、それを肯定するかのように、綾瀬川奈々子はさらに言葉を紡ぎ続ける。
「わたくしは、幼少期から酷い人生を送ってきました。それは、世界で一番不幸、とまでは言いませんが、それなりに不幸でした。
両親は、わたくしが物心つく頃に他界。その両親が残した遺産は親戚に食いつぶされ、挙句虐待されていました。そして、わたくしはなんとか親戚の家から逃れ、孤児院で暮らすことになりましたが、そこでも色々とありました……。
わたくしは、世界に絶望しました。人が人の上に立つ、この愚かな世界に。だから、わたくしは世界をリセットするのですわ。不幸を減らすために、すべての人間を、平等にするために!」
「……モザイク化計画を実行して、どうやって世界をリセットするんだよ」
「もっともな質問ですわね。たしかに、モザイク化計画によって男を操り、世界を混沌に包むことはできるでしょう。そうなれば、新たな不幸を生み出すだけですわ」
「なら……っ!」
「わたくしは、一言もモザイク化計画によって世界をリセットするなんて言ってませんわよ? モザイク化計画によって、世界を支配する、とは言いましたけど」
「……一緒じゃないのか?」
「違いますわ。世界を支配するのは、あくまでリセットのためのステップです。世界をリセットするのは、わたくしではなく、神ですわ」
「神……?」
「ええ。絶対神への反乱のことは、知っていますでしょう?」
「……ああ」
『絶対神』とかいう、あたしたちの世界で俗にいう神様。その絶対神に仕える神様の7割が、絶対神へ反乱を起こした。
その反乱軍、とでも呼ぶべき神様たちをなんとかするために、シャルはこの島に来た。
最初シャルに出会ったときに聞いたことだ。
「絶対神を倒し、反乱軍のリーダー的存在の神が、新たな絶対神となる。それが反乱軍の目的ですわ。その目的が達成された暁には、わたくしの願い、この世界をリセットするという取引をしたのですわ。この世界の支配をするのは、反乱軍の戦力増強など、反乱の成功率を上げるためですのよ」
「…………」
ああー、つまり。
1、 エロマンガ島を支配する。
2、 この世界を支配する。
3、 この世界を拠点にして、反乱軍が神様たちの住む『楽園』とかに戦争を吹っ掛ける。
4、 戦争に勝利したら、反乱軍のリーダーが新たな絶対神になる。
5、 この世界をリセット!
で、おk?
『うむ、それで合っておるぞ』
あたしの心を読んだのか、シャルがそう肯定する。
「次は、こちらが質問させていただいてもよろしくて?」
と綾瀬川奈々子。
時間がないけど、質問に答えることで、新たなる可能性が出てくるかもしれない。
あたしは、少しの逡巡の後、頷いた。
「しからば。貴女、なんでそこまでして、わたくしの計画を止めるんですの? この世界に、満足しているのですか?」
「……満足は、してないよ」
それは本心。
両親が他界。財産を残してくれ、綾瀬川奈々子のように親戚に食いつぶされることはなかったけど、それでも、決して裕福とは言えない。
それだけじゃない。
智まで、とはいかないけど、あたしだって、自分がレベル2だというのにコンプレックスを抱いている。
世界をリセットすれば、今度は、もっと幸せな人生を送ることが、できるかもしれない。
でも、
「それじゃ、駄目なんだよな」
満足できないから世界をリセットするのではなく、満足できるような世界に変えていくことこそが、大事だと思う。
かの偉人は、こう言った。
『諦めたら、そこで試合終了ですよ』
「う……っ!」
そういえば、これはさっき聞いたっけ。
夢を叶える。世界のリセットをする、って。
「なら、なんで世界のリセットがお前の夢なんだよ! この世界に恨みでもあるのか?」
「ええ、そうです。正確に言えば、わたくしの夢=世界のリセット、ではないんですけどね」
「どういうことだ?」
「……貴女、世界にどれだけの不幸と、どれだけの幸福があるか、知っていますか?」
「……?」
「この世界には、星の数ほどの幸福があって、星の数ほどの不幸があるのです」
「…………」
「何故、だと思いますか?」
「……わからない」
「正解です。そう、わからないのですよ」
「……は?」
どういうことだ?
わからない?
そんなあたしの思考はお構いなしに、綾瀬川奈々子は言葉を続ける。
「なら、椎名飛鳥さん。もうひとつ、質問です」
「……なんだ?」
「もし、この世界に神がいるのならば、何故、世界をもっと幸せに創らなかったのでしょうか?」
「…………」
段々と、綾瀬川奈々子が言いたいことがわかってきた。
そして、それを肯定するかのように、綾瀬川奈々子はさらに言葉を紡ぎ続ける。
「わたくしは、幼少期から酷い人生を送ってきました。それは、世界で一番不幸、とまでは言いませんが、それなりに不幸でした。
両親は、わたくしが物心つく頃に他界。その両親が残した遺産は親戚に食いつぶされ、挙句虐待されていました。そして、わたくしはなんとか親戚の家から逃れ、孤児院で暮らすことになりましたが、そこでも色々とありました……。
わたくしは、世界に絶望しました。人が人の上に立つ、この愚かな世界に。だから、わたくしは世界をリセットするのですわ。不幸を減らすために、すべての人間を、平等にするために!」
「……モザイク化計画を実行して、どうやって世界をリセットするんだよ」
「もっともな質問ですわね。たしかに、モザイク化計画によって男を操り、世界を混沌に包むことはできるでしょう。そうなれば、新たな不幸を生み出すだけですわ」
「なら……っ!」
「わたくしは、一言もモザイク化計画によって世界をリセットするなんて言ってませんわよ? モザイク化計画によって、世界を支配する、とは言いましたけど」
「……一緒じゃないのか?」
「違いますわ。世界を支配するのは、あくまでリセットのためのステップです。世界をリセットするのは、わたくしではなく、神ですわ」
「神……?」
「ええ。絶対神への反乱のことは、知っていますでしょう?」
「……ああ」
『絶対神』とかいう、あたしたちの世界で俗にいう神様。その絶対神に仕える神様の7割が、絶対神へ反乱を起こした。
その反乱軍、とでも呼ぶべき神様たちをなんとかするために、シャルはこの島に来た。
最初シャルに出会ったときに聞いたことだ。
「絶対神を倒し、反乱軍のリーダー的存在の神が、新たな絶対神となる。それが反乱軍の目的ですわ。その目的が達成された暁には、わたくしの願い、この世界をリセットするという取引をしたのですわ。この世界の支配をするのは、反乱軍の戦力増強など、反乱の成功率を上げるためですのよ」
「…………」
ああー、つまり。
1、 エロマンガ島を支配する。
2、 この世界を支配する。
3、 この世界を拠点にして、反乱軍が神様たちの住む『楽園』とかに戦争を吹っ掛ける。
4、 戦争に勝利したら、反乱軍のリーダーが新たな絶対神になる。
5、 この世界をリセット!
で、おk?
『うむ、それで合っておるぞ』
あたしの心を読んだのか、シャルがそう肯定する。
「次は、こちらが質問させていただいてもよろしくて?」
と綾瀬川奈々子。
時間がないけど、質問に答えることで、新たなる可能性が出てくるかもしれない。
あたしは、少しの逡巡の後、頷いた。
「しからば。貴女、なんでそこまでして、わたくしの計画を止めるんですの? この世界に、満足しているのですか?」
「……満足は、してないよ」
それは本心。
両親が他界。財産を残してくれ、綾瀬川奈々子のように親戚に食いつぶされることはなかったけど、それでも、決して裕福とは言えない。
それだけじゃない。
智まで、とはいかないけど、あたしだって、自分がレベル2だというのにコンプレックスを抱いている。
世界をリセットすれば、今度は、もっと幸せな人生を送ることが、できるかもしれない。
でも、
「それじゃ、駄目なんだよな」
満足できないから世界をリセットするのではなく、満足できるような世界に変えていくことこそが、大事だと思う。
かの偉人は、こう言った。
『諦めたら、そこで試合終了ですよ』
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