地味ーズ
てっきり、殺されたものかと思ってた。
「ああ、何か有力な情報を持っているかもしれないからね」
その言葉を聞き、アリスは少し顔を輝かせた。
「よかった・・・・・・生きてるんだ」
アリスの顔が少し輝いたのとは正反対に山崎の顔は曇りだした。
どうしてこの人は、自分をあんな目に合わせた人のことを、そういうふうに思うことができるんだろう。
「優しすぎるよ・・・・・・アリスちゃんは」
「え?何て?」
「なんでもないよ」
山崎の小さな呟きがアリスの耳に届くことは無かった。
「あ、それでね。記憶喪失の女性がこの屯所にいるってことが知られてたら、アリスちゃんが危ないなって。どこから情報が漏れて、どこまで君の情報が広がっているかわからないし。だから・・・・・・しばらくは、万事屋の旦那のとこに君を預けようって話しになったんだ」
山崎が早口で説明をする。
「え、でも真選組の仕事が・・・・・・」
真選組隊士としての私はどうなるの、といったアリスの心境。
「その怪我じゃ、どっちみち無理はさせられないよ。だからとりあえず、怪我が治るまでってことで。ね?」
そう言われアリスはこくりと頷いた。
「さっきも言ったけど、局長もアリスちゃんに合わす顔がないって言ってたし、まあその、丁度いいんだ。急な話しで悪いんだけど、今から行ける?体動かせる?」
「あ、うん」
本当に急だな、と思いつつ返事をするアリス。
「とりあえず私、着替えたいんだけど」
「へ?うん」
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
出ていってほしいってことなんだが、伝わらないようだ。アリスは苦笑混じりに
「着替え、見てく気?」
と言い放つと、山崎はようやく理解し、顔を真っ赤にして謝りながら部屋を出ていった。
着替えもすませ、昼食も食べ終え、山崎と一緒に万事屋へと向かうことになった。
万事屋へはすぐに到着し、山崎は早速事情を銀時に説明した。
「・・・・・・話しはわかったけどよぉ、何で俺が真選組の言うことなんか聞かなきゃいけないわけー?ふざけんなよコノヤロー」
「旦那ぁ、そんなこと言わずに!アリスちゃんと面識もあるし、こんなこと頼めるの旦那だけなんですよ!」
2人のやり取りを見てアリスは、ああ、やっぱり私は。どこに行っても迷惑をかけるのか・・・・・・と落ち込んだ表情をした。その表情を見た銀時は
「ま、アリスちゃんに免じて今回はその頼み聞いてやるよ。ただし、報酬はたっぷりもらうからな」
「ありがとうございます旦那ぁ!・・・・・・あの、できれば報酬の方はちょっと・・・・・・」
「あぁん?こちとら生活が・・・・・・わ、わーったよ。いらねーよそんなもん」
再びアリスの申し訳なさそうな表情を見て、言葉を訂正した銀時であった。
「しかし、屯所に攘夷志士が堂々と来て?気づかないってどういうことなんだよ、警備とかいろいろよぉ、そんなんで大丈夫なのかよお前ら」
「それは、局長も気にしてるんで言わんでください!俺、そろそろ帰らないと副長に怒られるんで、戻ります。では、頼みましたよ」
山崎は一礼した後、アリスに手を振り、万事屋を後にした。
「というわけで・・・・・・しばらくよろしくお願いします」
アリスの言葉を聞き、銀時は優しげに微笑んだ。
「いいってことよ、こんぐらい。ただし、俺のためにパフェ作ってくれよな」
「パ、パフェ?」
「銀ちゃん、そんなにパフェ食べたいならどっか行くヨロシ。そして二度と帰ってくんな」
「え、ちょっと神楽ちゃーん?なんでいきなり毒舌なのぉ?銀さん傷つくんだけどぉ」
銀時と神楽のやり取りを横目で見ながら、新八は口を開いた。
「しかし、ひどい話しですよね!女の子の記憶喪失を悪質なことに利用するだなんて、許せませんよ」
新八は怒っていた。
「・・・・・・新八君」
「? なんですか?」
「そういう風に言ってくれるだなんて、優しいのね」
にこっとアリスが微笑みかけると、新八の怒りの表情はみるみると照れた表情に変わっていった。
「いやぁ、だって。当然の感情ですよ。というか、そんなに見つめないでもらえます・・・・・・?なんだか照れちゃいます」
新八がアリスから目を背けようとした時
すちゃっ
新八の眼鏡が外される音がした。
「へ?あれ?いきなり何するんですか?僕のメガネ・・・・・・」
するとアリスは新八のメガネを手に持ったまま
「メガネ、なくてもかっこいいね」
と言いくすっと笑った。
か、かっこいい!?かっこいいなんて、女の子に初めて言われたかも・・・・・・!ていうか
なくても ってことは、メガネかけてる普段の僕のことかっこいいって思ってくれてるってこと!?え、ちょ、待っ、えぇぇー!?
新八は頭から煙を出し後ろにばたんっと音をたてて倒れた。
「あら、どうしたのかしら」
なんて呑気に言いながら新八のメガネをかけてみるアリス。
「アリスぅ!メガネ似合うアルな~銀ちゃん見てみるネ!可愛いと思わないアルか?」
「あ、ああ・・・・・・なかなか似合うな」
銀時は照れたように頬をかきながら答えた。
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