前編
【Case1 3-A担任教師 山田明子】
3-a・
私はこのクラスの担任教師であり、この私立上東高校で現代文の教師をしている。
この上東高校が偏差値の低い高校だからか、はたまた昨今の高校生がそうだからなのか……まともと呼べる生徒は殆ど居ない。
どいつもこいつも馬鹿で低能な奴等ばかりだ。
会話の内容や喋り方、制服の着方から顕著に窺がえる。
今の時代、厳しい指導をしようものならば所謂モンスターペアレントが学校に文句の電話を掛けてきたり、最悪の場合は乗り込んで来る。
だから、私は例えどんな仕打ちを受けたとしても生徒からいじめられる悲劇の教師を敢えて演じている。
小説やドラマ、映画等でもそうだが、悲劇のヒロインというものは同情を得やすい存在だ。
私が教師を目指したきっかけは高校時代の恩師である星野貴志先生の影響だ。
クラスに馴染めず、不登校気味。おまけに素行も良くなかった私を熱心に時には厳しく、そして優しさも忘れず向き合ってくれた恩師だ。
見放されてもおかしくはない私を決して見放さずに根気よく真っ直ぐな道へと導いてくれた。
私は星野先生の様な教師になりたいと言う想いの一心で苦手だった勉強とも必死に向き合い大学へ進み、教員免許を取得して、更に勉強を重ねて晴れて高校の教師となった。
しかし、蓋を開けてみれば星野先生とはかけ離れ過ぎた教師となってしまっている。
私の授業をまともに聞いている生徒は大学進学を希望している安達さんとクラス内ヒエラルキーの底辺に所属している生徒達くらいか。
教師が生徒を「底辺」と表現している時点で私はきっと教師失格なのだろう。
特に問題児とされている早田遼、賀川映美。
この二人は本当にタチが悪い。
早田遼は両親がPTA会長、役員を務めている事、多額の寄付を学校にしている事を良い事に立場が弱い生徒達等から昔の不良がやっていたかの如くカツアゲ等もしている様だ。
勿論、他の教師は早田の両親の影響力を恐れて何も出来ない、言えない始末だ。
賀川映美に関しては女子生徒達のトップに立ち、陰湿ないじめの主犯格である。
それだけではない。裏では援助交際をしていると言う噂も流れている。
自分が援助交際をしているだけならまだしも、援助交際を友人やいじめのターゲット達にも斡旋していると言うから性根が腐っている。
そんな生徒達の事を、私は一人ずつ事細かにノートに付けている。
生徒達の事をよく知って真面目に向き合おうと思って付け始めたノートだが、このノートが役に立つ日が来るとは思っても見なかった。
【Case2 早田遼】
俺に逆らえる生徒はこのクラス、否この学校には一人も居ない。
教師もまた然りだ。
PTAの会長なんやらをしている親のお陰、多額の寄付をしている親のお陰……あんなクソ親でも役に立つものだ。
俺はその立場を利用するしかないと思い、俺なりの青春時代を謳歌している。
元々校則なんて気にする気も更々ないが金髪でピアスも幾つか付けている。それなのに教師は誰も俺を注意しない。少しくらい注意された方が張り合いが有って良いとは思うが面倒臭いから別に今のままで良い。
支配者は俺だ。
俺に逆らう奴、俺に指図する奴は絶対に許さねえ。
金には困ってはいないが、俺の力を周りの奴等に示す為に少々金を拝借している。
まあ、返すきなんざ無いんだけどよ。
男子生徒達は俺にビビって逆らえず、俺の顔色を窺いながらご機嫌取り。女子達は媚を売ってくる奴も居る。
自分で言うのもなんだが、顔が良く生まれた事もクソ親父とクソババアに感謝するべきなのか?
とにかく俺は俺の道を突き通してこの学校の支配者として過ごしてやる。
【Case3賀川映美】
男は皆馬鹿ばかりだ。
学校の男子なんて、ちょっとだけ優しくしてやれば鼻の下を伸ばしてちやほやしてくる。
童貞の奴なら尚更。キモいけど笑顔を作って「おはよう」って挨拶をしてやればへらへら媚びる。
大人の男も同じだ。
身体さえ売れば大金をくれるし……本当にくだらない。母子家庭で働いてもいない母親の血をちゃんと受け継いだのか、受け継いでしまったのか……。
女の武器である身体と女子高生というブランドを使えばロリコン趣味がある男を釣る事は簡単だ。
くだらない世の中。
そんなくだらない世の中へのフラストレーションを私はクラスでおとなしいグループに所属している、佐藤綾香や清水梨乃へぶつけている。罪悪感なんて全く感じていない。
私はそれほどまで歪んだ人間になってしまったのか。自分で自分がおかしくて笑えてくる。
佐藤綾香も清水梨乃も私にやられっぱなしじゃなくて少しくらいは反抗した態度をしてくる方が良い退屈凌ぎになるのに、こいつ等は完全に私の言いなり、駒となっている。
ほんと、この世の中くだらないし、つまんねーな。
3-a・
私はこのクラスの担任教師であり、この私立上東高校で現代文の教師をしている。
この上東高校が偏差値の低い高校だからか、はたまた昨今の高校生がそうだからなのか……まともと呼べる生徒は殆ど居ない。
どいつもこいつも馬鹿で低能な奴等ばかりだ。
会話の内容や喋り方、制服の着方から顕著に窺がえる。
今の時代、厳しい指導をしようものならば所謂モンスターペアレントが学校に文句の電話を掛けてきたり、最悪の場合は乗り込んで来る。
だから、私は例えどんな仕打ちを受けたとしても生徒からいじめられる悲劇の教師を敢えて演じている。
小説やドラマ、映画等でもそうだが、悲劇のヒロインというものは同情を得やすい存在だ。
私が教師を目指したきっかけは高校時代の恩師である星野貴志先生の影響だ。
クラスに馴染めず、不登校気味。おまけに素行も良くなかった私を熱心に時には厳しく、そして優しさも忘れず向き合ってくれた恩師だ。
見放されてもおかしくはない私を決して見放さずに根気よく真っ直ぐな道へと導いてくれた。
私は星野先生の様な教師になりたいと言う想いの一心で苦手だった勉強とも必死に向き合い大学へ進み、教員免許を取得して、更に勉強を重ねて晴れて高校の教師となった。
しかし、蓋を開けてみれば星野先生とはかけ離れ過ぎた教師となってしまっている。
私の授業をまともに聞いている生徒は大学進学を希望している安達さんとクラス内ヒエラルキーの底辺に所属している生徒達くらいか。
教師が生徒を「底辺」と表現している時点で私はきっと教師失格なのだろう。
特に問題児とされている早田遼、賀川映美。
この二人は本当にタチが悪い。
早田遼は両親がPTA会長、役員を務めている事、多額の寄付を学校にしている事を良い事に立場が弱い生徒達等から昔の不良がやっていたかの如くカツアゲ等もしている様だ。
勿論、他の教師は早田の両親の影響力を恐れて何も出来ない、言えない始末だ。
賀川映美に関しては女子生徒達のトップに立ち、陰湿ないじめの主犯格である。
それだけではない。裏では援助交際をしていると言う噂も流れている。
自分が援助交際をしているだけならまだしも、援助交際を友人やいじめのターゲット達にも斡旋していると言うから性根が腐っている。
そんな生徒達の事を、私は一人ずつ事細かにノートに付けている。
生徒達の事をよく知って真面目に向き合おうと思って付け始めたノートだが、このノートが役に立つ日が来るとは思っても見なかった。
【Case2 早田遼】
俺に逆らえる生徒はこのクラス、否この学校には一人も居ない。
教師もまた然りだ。
PTAの会長なんやらをしている親のお陰、多額の寄付をしている親のお陰……あんなクソ親でも役に立つものだ。
俺はその立場を利用するしかないと思い、俺なりの青春時代を謳歌している。
元々校則なんて気にする気も更々ないが金髪でピアスも幾つか付けている。それなのに教師は誰も俺を注意しない。少しくらい注意された方が張り合いが有って良いとは思うが面倒臭いから別に今のままで良い。
支配者は俺だ。
俺に逆らう奴、俺に指図する奴は絶対に許さねえ。
金には困ってはいないが、俺の力を周りの奴等に示す為に少々金を拝借している。
まあ、返すきなんざ無いんだけどよ。
男子生徒達は俺にビビって逆らえず、俺の顔色を窺いながらご機嫌取り。女子達は媚を売ってくる奴も居る。
自分で言うのもなんだが、顔が良く生まれた事もクソ親父とクソババアに感謝するべきなのか?
とにかく俺は俺の道を突き通してこの学校の支配者として過ごしてやる。
【Case3賀川映美】
男は皆馬鹿ばかりだ。
学校の男子なんて、ちょっとだけ優しくしてやれば鼻の下を伸ばしてちやほやしてくる。
童貞の奴なら尚更。キモいけど笑顔を作って「おはよう」って挨拶をしてやればへらへら媚びる。
大人の男も同じだ。
身体さえ売れば大金をくれるし……本当にくだらない。母子家庭で働いてもいない母親の血をちゃんと受け継いだのか、受け継いでしまったのか……。
女の武器である身体と女子高生というブランドを使えばロリコン趣味がある男を釣る事は簡単だ。
くだらない世の中。
そんなくだらない世の中へのフラストレーションを私はクラスでおとなしいグループに所属している、佐藤綾香や清水梨乃へぶつけている。罪悪感なんて全く感じていない。
私はそれほどまで歪んだ人間になってしまったのか。自分で自分がおかしくて笑えてくる。
佐藤綾香も清水梨乃も私にやられっぱなしじゃなくて少しくらいは反抗した態度をしてくる方が良い退屈凌ぎになるのに、こいつ等は完全に私の言いなり、駒となっている。
ほんと、この世の中くだらないし、つまんねーな。
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