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夢恋

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 渚
目次

夢恋2

母親の口癖である“気を付けてね”というフレーズを背中に受け、僕はそのまま学校へ向かった。でも、やはりいつもと少し違う気がしてしょうがない。その理由はもちろんわかない。
違和感だらけの朝は、どうにも常に地面から2mmほど浮いているような感覚だった。
いつもより時間に余裕を持って学校へついた僕の下駄箱に、見慣れない紙が1枚置いてある。しかし何故だろう、この手紙は見たことがある気がする。
なんだろう?
中身を見る事に少しワクワクしている自分に、さっきとはまた違った違和感を感じていたが、僕は二つ折りにされ上靴の上に置かれていた紙をゆっくり開いた。

『今日の放課後、話したいことがあるので一緒に帰りませんか?
ダメでも校門で放課後待っています。』

は!?
こっ、これは、俗に言うラブレターというヤツじゃないか?!
なんて古典的なやり方だろうと思いながら、こんな手紙をもらったのが初めてだった僕は、見知らぬ女性から好意を持たれている事が単純に嬉しかった。
でも、いや、まてよ。
前にもコレと同じモノをもらった事がある気がする。でも、いつのことだろう。
人生でこんな経験は1度もないはず。それのに、何故か前にもこんな事があった気がするが、朝から続いているデジャブの続きのようなモノなのだろう?
デジャブは、自分の記憶の中にある似たような思い出がフラッシュバックして起こる仮想現実と言われている。しかし、1日中そんな事が続くのだろうか。正直不思議でしょうがない。それでも、初めてラブレターをもらった事に落ち着かない僕の、待ちに待った放課後がやってきた。
誰かに会う緊張とは少し違った緊張もあったが、僕は見知らぬ誰かからの手紙にワクワクしていた。
そして、おどおどしながらキョロキョロしている僕に、一人の少女が話かけてきた。

「ちゃんと来てくれた。ありがとう。一緒に帰りませんか?」

「ひっ、人違いじゃ、ないですよね?」

「私は君に手紙を渡しました。だから間違いじゃありません。」

敬語なのに強きな発言をする彼女は、驚くことに僕がずっと片思いをしている相手だった。何故彼女が僕なんかに声を、というか手紙をくれたんだろう・・・
そんな事よりも、この会話も以前何度か交わした気がする。
何処で彼女と話したのだろう。
いやいや、まともにしゃべるのは今日がほぼ初めてじゃないか。僕は彼女を見るだけで幸せだったんだから、こんな近距離でしかも顔を見て話すなんて事1度もなかったはず。
それなのに・・・
一緒に歩いていたが、お互い話に詰まり沈黙が続いて15分くらいたっただろうか。道外れにある公園を見つけた彼女は、公園を指差した。

「少し座りませんか?」

「はぁっ、ぁはぃいぃ。」

急に話しかけてきた彼女に驚いた事と、初めて肩を並べて歩いている状態に緊張した僕は声が裏返ったまま返事を返してしまった。そんな僕の返事が面白かったのか、彼女は手で口元を隠しながら笑っていた。
あ~・・・やっぱり可愛いなぁ。
僕と彼女は、そのまま公園のベンチに腰掛けた。

「あのね。実は言いたい事があって・・・」

「うん。」

「実はね・・・私、君の事がずっと気になってて・・・」

「ちょ、ちょっと待って!ぼ、僕もずっと君の事が・・・」

僕は、間が悪く彼女の言葉を遮るようにしゃべってしまった。話続けるきっかけを失った僕は、急激に早まる鼓動に後押しされ頭が真っ白になってしまった。そして、後悔と期待で手汗も凄い事になっている。
お互いが沈黙してから多分時間にして1分もないだろうが、3時間は経過しているような感覚だった。
そして、そんな沈黙をかき消すように僕は勢い任せに言葉を放った。

「ぼ、僕は、!!」

「ちょっと。ちょっとまっ・・・!」

「僕は君の事がす・・・」

ジリリリリリ・・・・・・
眩しい日差しが、カーテンの隅から僕の顔を照らしている。そして、横には僕の眠りを妨げる為の凶器と言える目覚ましが、激しく鳴り響いている。
僕を不機嫌にしかさせない苛立たしい目覚ましを見たとき、いつもより1時間以上早い目覚めだった事に驚いた。
寝ぼけた頭をそのままに、いつもより早起きし過ぎた僕はいつもよりゆっくりと学校へ行く為の身支度を始めた。

「あら、今日は早いのね?」

「うん。変な夢見みちゃって。なんだか目が覚めちゃったんだ。」

「そう。じゃぁ今日くらいはちゃんと朝ご飯食べていきなさい。」

「あれ?昨日も僕、早起きだっけ?」

「何言ってるの?昨日もいつも通りギリギリの時間でしたよ。いつもこれくらい早く起きてくれたら助かるんだけどね。それより朝ご飯食べちゃいなさい。」

「そうか。なんか前も同じ事言われた気がするけど・・・・」

「何言っているの?
いつも早起きしてくれたらお母さんは文句なんか言いませんよ。」

僕は、どうにもデジャブのような感覚が抜けなかった。それは、久しぶりに母親が作った朝食を口にした後もずっと続いていた。

「やっぱり・・・」

「どうかした?」

「いや、なんでもないよ。久しぶりに食べる母さんの朝ご飯が美味しかっただけ。」

「おかしな子。」

何故だろう。この会話も前に何度かあった気がするし、この朝食も何度も食べているような気がしてならない。

「いってきます。」

「気を・・・・」

「気を付けるよ。」

「あらそう。行ってらっしゃい。」
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