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異世界放浪

ジャンル: ホラー 作者: 渚
目次

### 01

「おぎゃーおぎゃーおぎゃー・・・?」


「よ~しよし。可愛い私の子。お腹でも空いたのかしら?」


優しく俺に話しかけてきたのは、今の世界で俺の母親となった女性。
俺はまだ生まれて間もなく、目も耳もうまく機能していなかったが、認知機能だけは成人並の能力を持っていた。何故なら、俺は今まで数々の異世界をたくさん旅してきたからだ。

何度も転生を繰り返してきた俺は、過去に転生してきた全ての異世界で起こった記憶を引き継いだまま何度も人生をやり直している。やり直しているといっても、転生が異世界ばかりだから、どの転生人生も初めての事ばかりだ。

一番最初の異世界転生は人間の姿のままだった。最初は異世界転生してきた事もわからず、気が付くと草原にたった一つの大きな木の下に座ったいた。その後、異世界転生者らしく見ず知らずの人間達を救うために魔王を戦って欲しいと言われ、俺は胸が躍った。異世界転生なんて夢のような新生活が俺を迎えてくれた。そう思った俺は数々の苦難を乗り越え、魔王と対峙したが、結果あっけなくやられてしまった。

俺は何のために異世界までやってきたのだろうと考えながらゆっくりと死を待っていた時、突然謎の声が俺を呼んでいる事に気が付いた。それからというもの、最弱モンスターになったり昆虫や動物の姿に転生したこともある。何度目かの転生でやっと人間の姿に生まれ変わったと思ったら、今度は勇者を見送る村人A。これって転生する意味あるのか?

それでもゆったりまったりな村人Aの生活らしく、平凡で充実した暮らしを謳歌しそのまま人生の最後を迎えるはずだった。がしかし、さらに魔法や剣で戦う世界や宇宙人と戦ったり、そんなこんなで普通の人生では味わえないほど何度も転生を繰り返している。

ということで異世界生活を転生し続け来た俺は、今回もまた新たな異世界に転生されてきたらしい。



いやぁ~とりあえず、転生した姿が人間でよかった。昆虫とかモンスターとか、人間に襲われるような姿で転生した時は毎回死ぬかと思うことばかりで大変だったからな。普通の人間の普通の赤ん坊として転生した俺は、きっとこのまま平凡な人生を謳歌していくんだろうなぁ。

そして、俺は平凡な転生後の現在の生活を難なく過ごし、気が付けば10年の月日が経っていた。そう、明日は俺の生誕祭!まぁ簡単に言えば誕生日。毎年誕生日には豪華な食事が並び、家族みんなで楽しい時間が過ごしている。

いや~、こんな裕福な生活が俺を待っていたなんて。俺の転生人生もコレで終わんないかな。

そしてその夜、夜中の12時を越えて10歳となった俺は、重大な事に気が付いた。



「わ!!」


突然、手から炎のようなモノが出てきた。

あれ?俺って・・・魔法、使える?・・・

この世界に魔法は存在しないはず。だって、両親や村の皆は普通に暮らして、魔法とかを使っている所を見たことがない。しかも、学校の授業でそれらしいこともやってない。

魔法が使える世界では、必ず魔法に関する科目を学校で勉強するのに、それらしいことは今まで聞いたことない。そもそも誰かが魔法を使っているところすら見たことない。

これはいったいどいう事だろう?とりあえず、明日それとなく両親に話を聞いてみよう。

落ち着かないままベッドで横になり朝を迎えたが、俺は結局まともに寝ることは出来なかった。そして考え続けいた俺は、日が暮れている事に気が付かなかった。台所で母親が晩ご飯の準備をしている。そうか、今日は俺の誕生日。誕生日のごちそうを楽しみに気分を入れ替えよう。そして、それとなく聞いてみよう。
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