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神様はアタシの胸に

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: 山科
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第31話

 さながら、モーゼが海を割ったときのようだ。
 あたしたちは、何の障害もなく、綾瀬川奈々子の眼前までやってきた。
「アダム……っ!」
「お久しぶり……ということもないですかな、奈々子嬢?」
「……何故、貴方はわたくしを裏切ったんですの? 貴方の願いは、叶えると言ったでしょう?」
「奈々子嬢。確かに、貴女の罵りは気持ちいい。私も、それを望んでいた」
「だったら!」
「だが、智嬢をあんな風にしたのは、さすがに許せないんですよ。智嬢には、一種の情が芽生えていましてね」
「情?」
「ええ。情です。簡単に言えば、私は1年ほど前に妹を亡くしましてね。智嬢は、妹によく似ているんですよ」
「妹……」
 そうだったのか。
「ええ。妹のおかげで、こうして人に裸を見られる喜びを知れたので、まあ悲しいことばかりではないのですがね」
「…………」
「……飛鳥嬢? 何故そんな変態を見るような目で私を見つめてくるのですか? 確かに気持ちいいですが、そういうのは後にしてもらえたら……」
「あんた、気持ち悪いな」
「うぉうふぉう! ……とにかく、気付いたんですよ。人の犠牲の上に成り立つ快楽なんて、本当に気持ちいいものではないものだとね」
「……いい台詞のように聞こえるんだけどなぁ」
 言ってることは、気持ち悪い。
「そんなの、ただの理想論ですわ」
「どこが!?」
「世界は、一度リセットするべきなのです。邪魔をするなら、貴方には死んでもらいますわ!」
 パチン、と、綾瀬川奈々子が指を鳴らすと、今度は綾瀬川奈々子の背後にある壁が割れていき、そこから黒光りするマッチョたちが現れる。
 ただ、数は10人ほどと少ない。もう、綾瀬川奈々子の手下は打ち止めなのだろうか?
 そうであってほしい。
「さあ、飛鳥嬢! こいつたちの相手は私に任せて。貴女は早く奈々子嬢を! くらえ! 『巨大な息子(ビッグ・マグナム)』!」
 変態は、下半身を露出して、現れた奴隷たちに突撃していく。
 あたしの周りには、奴隷やゾンビたちの姿はなくなっていた。
「これで、あんた一人だな」
「……そうだとして、貴女一人で、何ができるというのですか? それに一人ではありませんわよ」
 綾瀬川奈々子の横から、にゅっと、翔平太が現れる。
 さっきの腹パンのダメージから回復していたらしい。
「……しかし、アダムといい宮島涼太といい、どうして皆私を裏切るのかしら」
「……さあな。本人に聞けばいいさ」
「そうですか。なら、この島を手中に収めた後、ゆっくりと聞きますわ」
「……どうしても、モザイク化計画を続けるのか?」
「当たり前ですわ。何をいまさら」
「そうか……なら」
 あたしは、徳元先生から貸してもらった警棒を握りしめ、綾瀬川奈々子に向かって突撃する。
「甘いよ、お姉ちゃん」
 だが、あっけなく、翔平太の持つ盾に防がれてしまう。
「くっ!」
 態勢を立て直すため、あたしは一旦退いて、綾瀬川奈々子の後ろに広がる無数のコンピューターによってできている迷路の中に逃げる。
 ある程度距離を取ったら、あたしはその場に座り、コンピュータに背を預けた。もう、あたしの体力は限界に近い。少しでも休まないと。
「どこに逃げても無駄ですわ。それに、あと数分で計画が発動する。そうすれば、世界は終焉を迎える!」
 コツコツ、と靴が床を叩く音が聞こえてくる。音から察するに、複数いるようだ。奴隷の何人かも連れてきたのかもしれない。
 あたしがいる場所まではまだ距離がある。その間に対策を考えないと。
「シャル! まだ体力は回復してないのかよ!」
『うむ……先の戦いでかなりのダメージを受けたということもあるのでの……まだなんじゃ……』
 どうするか。もう時間はない。
 と、横から声。
「見つけましたわ」
 そこには、綾瀬川奈々子の姿。傍には数人の奴隷が控えていた。
「くっ!?」
「もう退屈な鬼ごっこは終わりにしましょう。捕まえなさい」
「「「「「ヤッ○デカルチャー!」」」」」
「それ、意味わかって言ってます?」
 綾瀬川奈々子たちがそんな会話を繰り広げているうちに、あたしは再び逃げようとする。が、すでに奴隷たちに囲まれており、簡単に捕まってしまった。
「は、離せっ!」
 必死にもがくけども、四肢を捕まれ、逃げられない。
「さて……チェックメイトですわね」
 笑みを浮かべる綾瀬川奈々子。
『飛鳥を離せ!』
 あたしのおっぱいが、激しく揺れて抵抗する。
 シャル、正直、ちょっと痛いからやめて。
そんなあたしのおっぱいを見て、綾瀬川奈々子が怪訝な表情をしながら問いかけてくる。
「……貴女は神様。椎名飛鳥さんの胸は、たしかに能力を発揮するのに相性はいいかもしれませんが……代わりはいくらでもいるでしょう? なぜそこまで必死に守ろうとするのですか?」
『フンッ! 決まっておろう。飛鳥と一緒にいるうちに、飛鳥のことが好きになったのじゃよ』
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