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You Are My Sunshine

原作: Fate 作者: こさき
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call me

一見平和なある日のカルデア。の、中にある体育館。
その一画には様々なトレーニングマシンが設置されており、自称ゴールデンな男・坂田金時はそのスペースの常連だった。マスターから声がかからない限りは必ずと言って良いほど足を運んでいるため、有名な某フィットネスクラブの名称をもじって『ゴールデンジム』などとこの場を呼ぶサーヴァントもいるとかいないとか・・・。

「金時さんって、私の真名はご存知ですよね?」
「おうっ、勿論だぜフォックス!」
「言ったそばから・・・では、きちんと名前で呼んでみて下さいまし。」
「えっ・・・今か?」
「今です!思い立ったが吉日と申しますでしょ?」
「えー。フォックスの方がクールじゃん?」
「そのセンスには断固同意しかねる。」
「なんだよ~。なんでいきなりそんなこと・・・、」
「なんでもクソも御座いません。古今東西過去も未来も美女の要求に理由や理屈など必要ないと相場が決まっておりましょう?」
「ゴールデン理不尽・・・。」
「さぁさぁさぁ金時さん、いい加減その6つに割れた腹を括りなさいませ!」

そんなわけで『金時に用がある場合は彼に割り当てられた私室より先にこちらを覗くべき』というのがマスターの言であり、ただ今休憩中の金時にからんでいる玉藻の前も、これまでの経験からそう判断してやって来たらしかった。
ただしいつもの装束ではなくトレーニングウェアに豊満なその身を包んでいるあたり、金時“で”遊ぶのが主目的であることに違いはなかろうが、この施設を正しく利用しようという気持ちは一応あるようだ。

「フォックスはその丸出しの腹を隠してくれねーかな・・・?」
「第二段階からボタンが存在意義を失って、最終再臨では上半身すべてが丸出しになっちゃう方には言われたくねーです。」
「あー。」

ちなみに金時から見ればデンジャラスな本日のタマモちゃんコーディネートは、潔くスポーツブラとレギンス(いずれも人気ブランドの最新モデル)のみ。これでストレッチなどされた日にはトゥーシャイシャイボーイ金時でなくとも目のやり場に困る、なかなか攻めた格好である。

「つーか、わざわざ着替えてるってことは自主トレしに来たんだよな。いったいどこを鍛えたいんだ?」
「いえ、その・・・今年はずいぶん豊作だったみたいで?女神たるもの捧げられた供物を無駄にしてはいけないと・・・。」

問われて、それまで前のめりだった体を急にしおらしく引いてみせた彼女の様子から金時は悟った。コイツは“女性に聞いてはいけない数字トップ2”の話だ・・・!と。
玉藻の前からはイケモンと分類されてしまっているが、育ての親の影響か女性に対するマナーは最低限身についているのだ。
彼の場合その後のフォローがド直球すぎていろいろ台無しにしてしまうのだが、権謀術数渦巻く世界に慣れきっていた玉藻にとってその愚直さは新鮮で、好ましくさえ感じていた。

「あんま気にすんなよフォックス!たとえどんなに丸くなろうとアンタの魅力と美しさはこれっぽっちも損なわれないぜ?」
「二重の意味でそういうトコですからね金時さん?!」

そもそも、天性の肉体に整った顔立ち、さらに金髪碧眼と外見だけなら金時は文句の付けようがない逸材だ。本人なりのこだわりファッションは少々クセがあるものの、服装などいつでも・いくらでも変えられる。
肝心の中身だって、根っからの秩序・善な彼に人間としての決定的・致命的な欠点はこれといって見当たらない。反対に美点ならば容易く列挙できるのだから、イケてる魂認定しても差し支えないはずなのだ。
が、

「なんなんでしょうこの惜しさ・・・まさにイケメンの無駄遣い・・・。」
「ん?なんか言ったかフォックス。」
「いーえっ。そもそも金時さんが素直に名前を呼んでくれないのがいけないんですよ!」
「うっ。」
「最初は“相手の同意を得ず独特なあだ名を付けたあげくそれを決して改めない系キャラ”か、もしくは“人の名前を覚えられないがゆえに特徴を捉えた呼称でその場その場を凌いでる系のキャラ”かと思って許してあげてましたけど。」
「あ~、マンガとかでたまに見る。」
「マスターへの大将呼びは別格として、あなた私以外のことはちゃんと呼んでるじゃないですか!どうしてこの私だけ・・・!?」

そこまでを勢いこんで言ってから、ふと気付く。
生前や他の世界線ではともかくとして、今このカルデア内で金時との距離が近い者のなかで名前で呼ばれていないのは、おそらく彼女・・・玉藻の前のみ。

(私だけ他の方々とは違う・・・それってそれってもしかして、私だけ『特別』ってことでは・・・?!)

突然黙ったかと思えば何故か顔を赤くして固まってしまった玉藻の前に、金時ははてと首を傾げた。
声をかけても反応がないので軽く肩でも叩こうかと思うものの、いつもと違って二の腕までむき出しな状態に触れるのが躊躇われてしまう。

結局1時間ほど後、体を動かしにやって来た空気の読める男・ロビンフッドが嫌そうにしながらも助け船を出してくれるまで、第三者からすればイチャついているようにしか見えない体勢で2人はフリーズし続けていたのだった。
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