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You Are My Sunshine

原作: Fate 作者: こさき
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only you

今日も今日とて平和なカルデア。
いつの間にやら料理長の座を揺るぎないものとしていたエミヤが取り仕切るキッチンに、本日集うはケイローンとアキレウスの師弟にアタランテを加えたギリシャ勢と、牛若丸に坂田金時の計5名である。
シミュレーションルーム帰りの西洋組は遅い昼食代わりにシェフおすすめのボリュームたっぷりなアフタヌーンティーセットを、あとの2人は牛若丸が以前からリクエストしていたという菓子をそれぞれ味わっていた。
なんでも生前会津に立ち寄った際に知り大変美味だったという飴で、黄金に光り輝くその色から連想した金時にぜひとも教えたかったのだとか。
飴といっても煮詰めたもち米と麦芽に寒天を加えたシロモノなので柔らかく、舐めるのではなく噛んで食べすすめるのが正しいらしい。

「いかがですかゴールデン殿?」
「おぅ、こいつはゴールデン美味だぜ。弾力のある食感も面白いし、何より色が素晴らしいな!」
「喜んでいただき光栄です!」
「私としても苦労して作った甲斐があるよ。」

ちなみに、さしものエミヤも牛若丸の説明だけを頼りに再現するのは難しく、自称弁慶の協力を得ようとしたものの結局役に立たなかったため完成までに時間を要した・・・という事実は日々虐げられがちな郎党の為ほんの一部の者しか知らない。

「穀類を分解させただけでこれほどまでに甘いとは驚きですね。海草から抽出した成分が使われているというのも興味深い。」
「モチモチ・・・プルプル・・・いやプニョプニョ・・・?せっかくだから姐さんもホラ、1口。」
「あぁ、うむ・・・。」

盛り上がる日本出身の英霊たちにつられてケイローンとアキレウスがまずご相伴にあずかるが、「その色の甘い食べ物にはトラウマが」と呟いていたアタランテはあまり気が進まないようだ。証拠に2つの耳としっぽがピクピクと落ち着かなげに動いている。
彼女の逡巡を知ってか知らずかなおも食べさせようとするアキレウスをそろそろ諫めるべきか・・・とケイローンが思ったところで、意を決したらしいアタランテがパクリと飴にかじりついた。
ほんのわずかな緊張が矢のようにその場に走る。

「・・・おいしい。」

一瞬の沈黙の後、思わずといった風情でこぼれでた言葉に、それを聞いた男性陣がいっせいに安堵の息を吐いた。
牛若丸は金時の感想を得てすぐ他の者へも配るのだと駆けて行ってしまったし、厨房には珍しくブーディカもキャットも不在だったため、現在食堂にいるのは平均身長185センチな4人の男とアタランテのみ。ぱっと見華奢な印象を受ける彼女が、ゴツい男達に取り囲まれ注視されている現在の絵面は少しばかり異様だ。
しかし、当人たちは無論知るよしもなく、普段クールで見た目の年齢相応な振る舞いをすることのないアタランテが、素朴な甘味が気に入ったのか無邪気に瞳を輝かせている様子に各々心和ませていた。
特に動物会話Cの金時は前を向いた耳としっぽがピンと立っているのを見て微笑ましい気分になり、うっかりその頭を撫でてしまった・・・ところを偶然通りかかった玉藻の前に目撃されたのが、波乱な展開の幕開けだった。

「ちょちょ、ちょっとちょっと金時さん!!」
「ん?おっ、ちょうど良いところに。珍しい飴があるからフォックスもどうだ?」
「そんなことよりなにしてやがるんですかその手は!?」
「手??・・・うおおっ?!」
「そちらから勝手に触れてきておいて失礼な反応だな。」
「さすが坂田くん、やはり無意識だったか・・・。」
「なにそれズルい。」
「タマモちゃんというこの上なくラブリーでシルキーなケモノがありながら他のモフモフまでもッ・・・金時さんも所詮平安ボーイってわけですね!」
「いや、色とか位置とかフォックスに似てたから・・・ついクセで。」
「んまぁ!ソレって本気で言っちゃってくれてます?私の身長は男性の理想どストライクな160センチ!対して彼女は166・・・金時さんとの差は30センチvs24センチですよ!」
「・・・ほぼ同じじゃん?」
「完っ全なる別物です!!それにしっぽは私のほうがフワッフワでございますから!」
「姐さんのしっぽだってしなやかでスベスベで、やみつきになる手触りだぞー。」
「張り合うな。」
「クマのしっぽも丸っこくてゴールデンおすすめだぜ!」
「坂田くんはもう少し空気読もうか。」
「あっ、先生のしっぽも・・・俺は良いと思う!」
「余計な気遣いは無用ですよアキレウス・・・。」
「あーもうッ、とにかくッ!」

騒々しい外野ととんちんかんな金時の受け答えにいよいよキレた玉藻の前が、一歩前へ進み出る。
距離を詰められた金時が反射的に身を引こうとするも、すかさず彼の手をとった玉藻がそれを許さなかった。

「金時さんがこの手でモフって良いのはあなたの信仰する女神たる私だけですから!!肝に銘じておいてくださいねっ!?」
「顔がちけぇ・・・。」
「お返事は?」
「えー・・・わかりました・・・?」
「渋谷にある専門店で新発売の温タピをごちそうしてくれたら許してさしあげます。」
「強欲なフォックスだなぁ。」

唐突に始まり唐突に終わった痴話げんかに、遠い目をしたエミヤがため息を吐く。そうして彼がもらした呟きに、アキレウスはともかくアタランテとケイローンまでが思わずハモってしまったのは・・・仕方のないことと言えるだろう。

「信じられるか?こいつら、これで付き合ってないんだぞ・・・。」
「「「えっ。」」」
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