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黄色頭に恋をした。

原作: その他 (原作:鬼滅の刃) 作者: のばのば
目次

実らない恋

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善逸との出会いはもうどれくらい前だっただろう。



あの頃は確か、任務中に鬼に遭遇したときだった。
いつもの鬼よりも手強くて、手こずっていると、

ついバランスを崩してしまって転んでしまい、
その隙に鬼が瞬時に私に襲いかかってきた。



あぁ。もうおしまいなんだ。

人間て不思議なものでもう死ぬと思った瞬間、
幼少期などの記憶が一気に脳裏に浮かんできた。

いわゆる走馬灯ってやつで、
人は死ぬ直前に記憶が一気に映し出されるらしい。


キュッと強く目を瞑ると、なぜか目の前の気配が変わったのに気づいた。

…あれ、痛くない。

『(なんで、)』

恐る恐る目を開けると、そこには黄色頭をした剣士が眠ったまま私に背を向けて立っていた。


そしてその先にはもうすでに首を斬られている鬼が倒れている。


うそ……。

驚きでいっぱいでしばらく思考が追いつかなくて停止していると、

「…んあ!…え!え!?ちょっと!なにこれ!?どーゆう状況!?もういやァ"ァーー!」


黄色頭の男の子は目を覚ました様子で、この状況にわかっていなかった(私も状況に追いついてないんだけど、)




あの頃、私は善逸の強さに驚きでいっぱいだった。


「俺は我妻善逸だよ!君も同じ鬼殺隊だよね?」

『え、と、…私は桜子です。あの、先程は助けてくれてありがとうございます、』

そんな私に善逸は、なにやら嬉しそうで、

「あーもう!!やっぱり可愛い!!可愛いよォ〜!!」

なんて言いながらバタバタしている善逸に
とても変わった人だな。と第一印象はそう感じていた。


でもその後炭治郎たちとも交流し、
みんなと一緒に行動していくうちに、

善逸は普段はヘタレで泣き虫で、


でも、人一倍心が優しい。

そんな善逸が魅力的でいつの間にか惹かれていて、
気づいたら好きになっていた。


だからこそ、知っていることもある。


善逸は女の子なら誰でも好きだけど、


でも禰豆子だけは、特別で、


善逸の一番好きな人だってこと。







『ねぇ、しのぶさん』

鬼殺隊の今日の任務が終わり、
鬼との闘いで腕に怪我を負ってしまった私は

しのぶさんの屋敷で治療してもらうことにした。


私の腕を消毒してくるくると包帯を巻いていくしのぶさん。

「なんですか?」

『…禰豆子は人間に戻れるんですか?』

炭治郎は妹である禰豆子を人間に戻す為に鬼殺隊に入ったと本人から教えてくれた。

「どうでしょうねー。今のところ人間に戻す治療薬もありませんし、これからできるのかどうかもわかりません」

もし、この先禰豆子が人間に戻ることができたら、
炭治郎はもちろん喜ぶけど、

きっと善逸もものすごく喜ぶんだろうな…。


禰豆子のことは私もすごい好きだし、
早く人間に戻って欲しいけど、


『(あーもう、私はひどい人間だな…)』

素直に喜べない自分がいるのも事実なわけで。



なんて考えごとをしていたら、
感の鋭いしのぶさんは、


『桜子さんは、物好きですね〜』


どうやら私の気持ちに気づいてたみたいだった(え!恥ずかしい!)


『そ、そうですよね、あはは』

バッと立ち上がり、キレイに包帯も巻いてくれたのでお礼を言ってその場から立ち去ろうとしたとき、



「でも、人を好きになることは悪いことじゃないですよ」

そう言ってにこっと笑うしのぶさんに、


初めて自分の恋心を認めてくれたような気がして、

思わず泣きそうになったんだ。





しのぶさんの屋敷を後にして、
私はみんながいる所へ戻った。


炭治郎たちがいる屋敷の玄関を開けると同時に、

なにやらギャーギャーと賑やかな声が聞こえてくる(あ、伊之助が炭治郎追いかけてる)(またなにか怒らせたんだな)


「あ、桜子ちゃん!怪我大丈夫!?くーそー!!桜子ちゃんを怪我させた鬼許せん!!」

ほら、いつもこうやって善逸は
私に気づいてくれる。

『はは、大袈裟だな〜(笑)しのぶさんにお薬ももらったし大丈夫だよ!』


だから 嫌いになんかなれないんだ。


「桜子、女の子なんだから無理したらだめだ。怪我が後に残ったらどうするんだ」

『炭治郎は相変わらず紳士だねー!』

「おおいっ!!権八郎!まだ勝負は終わってねえぞ!!」

「だから俺の名前は炭治郎だ!!」

そう言いながらまた二人の追いかけっこが始まっていった。



その光景にオロオロと心配そうに見守る善逸。

そんな善逸を横目で見守る私。


私は 善逸 が 好きだ。

例え、他に好きな人がいても。



今は、傍にいれるだけでいい。




すると騒がしい声に目を覚ましたのか、木箱から
カタカタと音が鳴った。

『あ、禰豆子起きたのかも!』

木箱の扉が開くと同時に、
さっきまで心配そうに見ていた二人を他所に

「禰豆子ちゃーーーーーん!!」

ものすごく速いスピードで禰豆子のもとへ走る善逸の姿。


『(相変わらずだなー)』


少しくらい善逸の目に、

私の姿が映っててもいいのになー。

そんな気配をまったく感じないのはやっぱり悲しい。

でも 善逸の笑顔をみると、

やっぱりこっちまで嬉しくなっちゃうし、


それと同時に、

こんなに善逸を笑顔にさせれるのは



やっぱり禰豆子だけなんだろうなー。


なんてそんなことを思い、

なんだかズキンと胸が締め付けられる痛みを隠しながら、

善逸が禰豆子に向けて嬉しそうにしている姿を見て微笑んだ。


この恋はきっと実らない。

それでも、




今日も私は あなたに 恋をしている。






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