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少女は小さな夢を見た

原作: その他 (原作:銀魂) 作者: 澪音(れいん)
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2話

「大体さァ、お前みたいな子供が一人で夜道をうろついているのが可笑しいと思うんだけど銀さん。なに?お宅のご両親は放任主義なわけ?子供が夜道うろついてても怒らないのか?オイ。そりゃよくねぇと思うよ?銀さん。夜道には危ない奴がゴロゴロいるからね」

「例えばあなたみたいな変態とかですか?」

すりをされたか確認するためだった、と正当化したことを掘り返された銀時は食べようとしていたパフェを一旦置くと先程から冷めた目でこちらを見ている少女に深い溜息を吐いた。
そもそもがそんな子供にパフェを奢らせようとしている時点で大人な対応をしていないのだが、子供の胸に触った男というレッテルを貼られるのだけは御免だった。

ならばファミレスの会計は大人である彼がすべきだと思う人間もいるだろうが、前回語られた通り彼は食費代ですっかりと財布の中まで極寒地帯になってしまって小銭しか入っていない。

だからこそ相手の機嫌を損ねぬようにと笑顔で話しかけようともしたが、くすりとも笑わない子供らしからぬ目の前の少女についその対応をしようと思っていた意識がどこかへ飛んで行ってしまった。

「オイオイ、やめてくんないかな。聞き捨てならないこと言うの。銀さんそんな趣味ないから、大人の女性にしか興味ないからそんなゴミ見る目で見るのやめてくれないかね。第一歌舞伎町において銀さんみたいな善良な市民を変態呼ばわりしてたら生きていけないよ?お宅何、もしかして上京してきたとか?」

「田舎の母に見知らぬ人には素性を明かすなときつく言われているので」

「ああ、そう。田舎の娘ならしゃーねぇな。子供一人で江戸まで出てきたのか?おいおい最近の親は放任主義の度合いを間違えてねぇか?もう帰ったほうがいいよ、この町はお嬢ちゃんが生きていけるほどあまきゃねぇよ」

見た目からするにきっと神楽よりも年下だろう。
身長からするに13,14歳くらいだろうか。
そんな少女が紅茶を頼んでいる様子に「まぁこの年頃は無駄に背伸びしたがるからなぁ」と先程食べ損ねたパフェを口に含みながら思っていた。

家にいる彼女より幾らか年上の少女は今頃ミロでも飲みながら、新八と一緒にテレビでも見ていることだろう。お腹が空いたと拗ねていたから自分の帰りを今か今かと待っているかもしれない。しかし銀時はそれよりも優先順位は目の前のパフェに向いていた。
悪いな神楽、パフェ食べ終わって心が温まってから帰ります探さないでください。

「なんだか誘導尋問に引っかかったような気分なので謝罪してもらっていいですか?」

「何の話?背伸びしたがっても別にいいと思うよ。子供と言えど自分がそうしたいように生きていくのが一番さ」

「あなたが何の話をしているんですか?さっきの会話からどうしてそこに繋がるんです」

「さっきの話ィ?…あーあれね、田舎娘なのがバレた下り?勝手に引っかかったのはお前だから銀さんは謝りません」

「大人げないですね、変態さん」

「変態って呼ぶのやめてくんねぇかな、銀さんか銀ちゃんでいいよ。特別に」

「わかりました変態さん」

「おーいもしもーし?あれ可笑しいな、お宅コミュニケーション取れない系の人?」

顔の前で手を振ると、嫌そうに振り払った少女に銀時は気にも留めずにパフェに意識を戻す。
実際彼女がひとりで上京しようが銀時は気にも留めていなかった。
神楽のようにひとり違う星にやってきた娘もいるし、それぞれの家庭には事情ってものがある。
そもそもこうして知らない大人と一緒でも毅然としているところを見ると、江戸に来てからそれなりの日数も経っているのだろう。だからと言ってこんな時間に出歩くのは良いとは思えないが。

自分の恩師であれば拳を振り下ろされていたとこだろう。
あの時の自分よりは年齢は上だろうが未成年は未成年だ。

「奢らせておいてこういうのもあれだけどさ、知らない大人に着いていくのもどうかと思うよ。これで銀さんが悪い大人だったら今頃ドナドナされてっかんね」

「ここ私の奢りなんですね」

「当たり前だろうが、人にかかと落とししといて済まされるほど世の中甘くないからね」

「人の胸触っといて人の非ばかり咎めるのは大人として如何なものでしょう」

「あのさ、それは銀さんの財布すってないか確認しただけって言ったでしょうが。どうしてそんなに疑い深いの?過去になんかあったんですか?コラ」

「普通すりにあったかと思えば自分の懐を確認します。」

「確認の仕方は人それぞれだろうが。自分が正しいって思っていることがいつだって正しいってわけじゃないからね。世の中正義がいつも勝つわけじゃないから」

「……………」

「そうやってすぐに黙って睨むの良くないと思いまーす」

「睨んでません、こんな大人が平然と生きているから世の中うまくいかない事ばかりなんだなと悟っているところです」

「それって俺の人生全否定してる?勝手に人を例にとって悟り開かないでもらいいかな」

「あなたの言う通り遅くまで出歩いているのも危険のようなのでそろそろ帰ります、何はともあれ助けてもらってありがとうございました。次からはもっと心優しい大人の方に助けてもらうようにします」

「銀さんが優しい大人じゃないって感じに言うのやめてくんない?それとまたあそこで引っかかるの前提なんだ。」

「それじゃ」

さらりと去って行った彼女に、彼女の座っていたところを見るときちんと並べておいてある代金。そう言えば彼女の名前を聞くのを忘れてしまったが、この広い江戸できっともう会うことはないだろう。

パフェを口に運んだ彼は背後から近付いてきた何かに蹴り倒された。


つづく
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