ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

I'm cat

原作: 僕のヒーローアカデミア 作者: May
目次

緑谷出久の部屋

あれから数日、俺は猫と呼ばれ生徒達のそれぞれの部屋へと日替わりで寝かされている。

たまにあのキバタンに似た変な男が様子を見に来たり病院へと連れて行かれもするが徐々に身体の自由も効くようになって来ていた。あのとても不快だったエリザベスカラーもなんとか外させ(暴れ)誰が作っているのかは知らないが毎日手作りの飯も食わせてもらっている。

ここで過ごすうちに気付いたことが2つある。
以前の記憶が無い俺は比べようも無い事だが猫としての本能は多少はある様で警戒心も残っているがここの人間は不愉快な事はしてこない、根の人間の良さがあるのだろうが俺が怯えるような…警戒するような事をして来ないのだ。
五月蝿さはあるが過剰に構われずかと言ってほっとかれる事もない、触る時は声を掛けて下から…など。
よく分からんがキバタン人間が冊子を配っていたな、もしあれで勉強したのならば勤勉な生徒だ。きっといい学校なんだろうなと思う。

そしてもう1つは何とも学生らしいが所謂リア充な関係の人間が多いようだ、俺にはあまり関係の無いことだが部屋を点々とするうちに知ってしまう事も多い。
今日はその中の一室での出来事を思い返そうか…。

2.緑谷出久の部屋

「お待たせ猫くん、今日は僕の部屋の番だよ!ちょっと物が多いけど…それでも片付けたからゆっくりして行ってね!」
生徒達が学校へ行っている間、俺の定位置となりつつある談話室テーブル上のふかふかとしたベッドへとクセのある緑髪の少年…緑谷出久が近付いて来た。
小さく返事の様に鳴けばにこりと笑い俺を抱き上げる、ここの生徒は療養中の俺を気遣ってか当たり前のように俺を抱き移動させる。怪我をしている猫なので当たり前かもしれないのだが何故か落ち着かないというか気恥しい気もしてしまう…何故だろうか。

今日も少しソワソワとしながら抱かれたまま生徒の部屋へ辿り着く、緑谷出久の部屋は確かに物が多いようだが一つ一つが大切に管理されている様だ。というかこれは同じ人物の顔が描かれてるものだらけだな…この少年はこの人物のファンなのか…と眺めながら部屋を進むと緑谷が早口気味に語りかけて来た。

「いらっしゃい猫くん!僕の部屋ほんとちょっとだけオールマイトが多いんだけど…あ、オールマイトって言うのはね!────」
オールマイト…なんだか聞き覚えのあるような気もしたがそれよりも段々鼻息荒くヒートアップして語り聞かせてくれる緑谷が少し怖い…と言うかその話長くなるのか?長くなりそうだな…寝るか。
語りたいだけでもある様な緑谷の話を流し聞きながらベッド横のクッションにもたれ丸くなり眠る姿勢を取る。
「─で─で─なんだけどね─…ハッ!猫くん流石だよ!そのクッションは限定の──」長くなりそうだ…。

オールマイト語りを子守唄にしばらく寝ていると扉をノックする音で目が覚めた、緑谷がスグに対応したようだったからまだ眠っていても大丈夫だろうと目を閉ざしたまま柔らかな限定品とやらのクッションに体を沈ませる。

「轟くん!どうしたの?今日なにかあったっけ?」

どうやら部屋へとやって来たのは顔の整った寡黙な少年のようだ、心無しか緑谷の声が先程のオールマイトを語る時とは違うベクトルの嬉しさを醸し出したのは勘違いでは無いだろう。この2人はそういう関係のようだからな…。

「別に用事は無かったんだが…今日の猫当番緑谷だったのか。来ちゃダメだったか?」
「うぅん、そんな事ないよ!上がって上がって!今猫くん寝ちゃってるけど凄いんだよこの子、オールマイトの限定クッションに───」

おっと、また始まったらしい…が轟は慣れている様で緑谷と共に俺の隣に座り時折相槌を打ちながら律儀に聞いている。と言うよりキラキラとしながら表情のよく変わる緑谷の顔を見て楽しんでいる様だ、俺には分からない気持ちだがお熱いな…。

「─でね!─だから─なんだよ!わっ!?ととと、轟くんっ!?」
「うん、続けてくれ」
「も、も〜!今日は猫くん居るからちょっとだけだよ!」
「あぁ…」

緑谷のオールマイト語りの最中リップ音が聞こえると慌てるような声が聞こえる。俺が居るからこの程度の触れ合いなのかも知れないが動揺の仕方は学生らしくて微笑ましいなと思いながらこれ以上聞き耳を立てるのは野暮だと思い再び寝入った。

「──みたいでプレゼントマイクもずっと捜索してるみたいなんだよね。」
「現場に謎は多いし個性を発動した本人も自分の個性について詳しくはないみたいだな…。」
「個性登録内容が間違ってたみたいだよね…その内容が分かれば相澤先生がどうなってるかも早く分かるのに…心配だね。」

いつの間にかベッドで2人横になりながら真面目な話になっている様だ、相澤先生…相澤消太とは彼らの担任教師で現役プロヒーローらしいが現在行方不明のようでこうしてよく生徒達の話に上がっている。
俺に対していつも明るい顔しか見せない彼らが悲痛な表情を浮かべる話題…早く解決するといいな。

元気になれば俺も彼らの為になにか出来たら良いのにと考えながら傷を治すため猫は今日もよく眠った。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。