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I'm cat

原作: 僕のヒーローアカデミア 作者: May
目次

デカいキバタン

俺の名前は猫、黒猫の猫だ。これは別に某名作のオマージュでは無く所詮今だけの名前である。

以前の記憶の無い俺だがここ数日の忙しなかった日々を振り返ってみようと思う…。

1.デカいキバタン

─響くサイレン、眩しい光。なぜ俺はこんな所に居るんた…五月蝿い、早くここを離れよう。…身体が動かない、あぁ…俺は怪我をしているのか…。

ヴィランが暴れているとの通報を受け警察とヒーローが駆け付けたその場には気を失い捕縛されたヴィラン数人、多少の血液と──プロヒーローイレイザーヘッドのコスチュームのみが残されていた。
駆け付けたプロヒーローの1人、ボイスヒーロープレゼントマイクは謎の残る同僚であり同期、大切な友人の行方を声を張り上げ探していた。

「イレイザー!!おい、イレイザー!どこ行ったよお前!!!」

残った衣服から見るに己の友人が余程の変態で無い限り個性事故としか考えられず、かつ個性は不明だ。これが声を張り上げ探さずには居られようかと入れるわけも無いであろう物陰まで探してしまう。するとマイクは1つの黒い塊が横たわっているのを見付けた。
──黒猫だ…それも瀕死の、急いで手を伸ばすと何処でこんな傷を負ったのか小さな身体を覆い尽くす美しい黒い毛並みは血に滴っていた。

結局イレイザーヘッドの捜索は一時切り上げ、マイクはその足で動物病院へと駆け込み黒猫は一命を取りとめた。
傷は勿論だが栄養失調での衰弱が酷かったようでしばらくは療養が必要なようだ、だがマイクは寮住まいであるしラジオDJ、教師、プロヒーローと3足のわらじで多忙の身。発見現場は野良猫の居ない土地という事もあり迷い猫の捜索を出しつつ1-Aの寮で保護をする事になった。担任の行方不明と直面する彼らへのアニマルセラピーを兼ねて…。

目を覚ますといきなり黄色いトサカが眼前へと飛び込んできた。

「お、やっとお目覚めか〜?具合どうだ?つっても分かんねェよな、今日からしばらくお前はここの子だぜ。良い奴ばっかりだ、ゆっくりしていきな」

キバタンに似たそれは大声でそう俺に伝えれば誰かを呼びに行った、トサカに見えたそれはどうやら高くセットされた髪のようで彼は人間の様だ。では…自分は?
思う様に動かない身体をなんとか起こしてみると黒い毛、フニフニとした肉球が目に入る…これは猫か…?
自信が猫であると分かると同時にこれまでの記憶が無いことに気付く…腹の痛みから怪我をしている事にも。
あの五月蝿い人間はしばらくは居ていいと言っていた…色々と謎は多いが傷が治るまではここで生活させてもらおう、そう考えているとザワザワと人が集まってくるのが分かった。

「プレゼントマイク!あの子目が覚めたんですね、よかったぁ…」
「ya-!まだ休ませねェとだけど一先ず安心ってな、さっき説明したけどしばらく頼むぜリスナー!」
「俺猫飼うの初めてなんだよな!寮入ってから飼えるとは思ってなかったぜ」
「アンタに世話なんか出来るの?まぁみんなも居るし大丈夫か…」「なんだとー!?」

騒々しい…これが今日から自分が世話になる面々だと分かっていても、静かに寝た振りをしてしまうのは仕方ない事だとは思わないか。

「あら、猫さんまだ眠っているようですわ。皆さんお静かに…」
「What!?さっき起きたんだけどなァ、やっぱまだしんどかったか〜。」
「マイク先生が1番うるさいんだよなぁ…」

狸寝入りの自分を見た人間達は少し声のトーンを落とし自分の周りへと腰掛けた、どうやらここはソファーに囲われたテーブルの上に簡易的な俺のベッドが置いてあるらしい。そして話を聞いていると学生寮のようだ、寝たフリをしながら時折鼻や耳をヒクヒクさせながら雑談から情報を仕入れていく、少しずつと名前と声も一致してきた。以前の記憶は無いが俺はどうやら頭の回転と記憶力は良かったようだな。

俺は怪我をしていた所を保護された事、この寮で療養させてもらう事。
どこかの飼い猫かもしれないので迷い猫の保護として張り出されている事、名前が分からないこと。
そして時折この学生達の担任が行方不明という話題も上がっていた。
そういった事を話しながら傷に触れぬよう優しく撫でる何人かの手の感触、ここは安心してもいい場所なんだろう。と言った事が分かった。

「でもさでもさ!ここにいる間この子なんて呼ぶ?名前考えよーよ!」
「良いね〜、黒猫だからクロちゃんとか?」
「えー、安直過ぎね!?もっとなんかさー!」
「…漆黒の…「ケロ、そうね…男の子のようだから何がいいかしら」
「やっぱ男ならかっこいい名前がいいよな!!」

どうやらこれから自分の名前が決まるようだ、以前の名前を覚えていないので仕方ない事か…

「るせェぞカス共、どうせ傷が治ったらどっかやンだし猫で良いだろ。コイツはしばらく猫だ!」
「えぇ〜バクゴーセンスなーい!」
「黙れやクソピンク!飼い主ンとこ戻ったらコイツにも名前あンだろーが、変な情沸かしてんじゃねェぞカス!」
「それもそうですわね…、少し寂しいですけれど猫さんが混乱してしまわないためにも…」
「うん、そうだな。爆豪君キミは口は悪いが本当に良く考えている。という訳で皆!この子は当面猫君ということで行こう!」

こうしてしばらくの俺の名前が決まった。

俺の名前は猫、黒猫の猫。
オマージュや雑に決まったのではない。愛され、想われ決まったいい名前だ。

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