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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
目次

飢えた愛

※※※

「おまえはいったい、なにがしたいんだ」
 連続殺人事件の犯人が息子であると直感した当主は、息子に真意を訊ねる。
「なにがって、しようがないよ。これ、遺伝じゃね?」
「……遺伝?」
「あのさ、あんたは使用人を信頼しているのかもしれないけどさ、心ないことを平気で噂する連中もいるんだよ。俺の母さんを追い出したのは、あのババアなんだろう? 父さんはさ、俺と腹違いの弟、どっちを愛してた?」
「……子を愛さない親はいないだろう」
「どうかな。あのババアは最初の頃は俺に好かれようとしていたけど、なんていうか、目つきが差別てきなんだよ。俺の母さんが身分に釣り合わないからって、その子供を育てなきゃいけないなんて。だからババアの味方して母さんを悪くいう奴を見せしめに殺した」
「……知っていた。不憫と思った。だが、遺伝で片づけるな。おまえの母は法に反することはしていない」
「隔世遺伝ってやつだろ」
「……?」
「知っているんだ。母さんの先祖に罪人がいること。それでじいちゃんが反対した。俺を引き取るのはいいが後は継がせるな。俺を育てる代わりに用意した女と結婚、跡継ぎを生ませろ。ああ、いいんだ。そういう世界もあるよな。とにかく、俺の中には罪人の血が流れている。衝動は抑えられない」
「……そうか。ならば、もう一度手術を受けてもらう」
「は?」
「脳以外のすべてを捨て、新しい体に入れ替わる。殺した時の感触も体が変われば違ってくる。また今よりも小さくなれば、殺したくても安易には殺せないだろう」
「父さん?」
「書類上、おまえはわたしが用意した女性と結婚をし、秀星という子供が授かる。その過程で用意した妻には消えてもらい、そしておまえも不慮の事故で死んだことに。だが、立て続けでは怪しまれる。ほとぼりが冷めるまでしばらく身を隠し時期をみて発表をする。おまえは自分の子供、秀星として生きるんだ」

※※※

「けどさ、俺、妻になる女を見たこと、ないんだよね。でさ、気づいたら、こんな体の中に入っていたわけ。だからピンときた。ババアの時の試作品が改良されつづけ立派なクローンを成功させたんだって。でも不可解なこともあるよね。クローンてさ、元になる細胞がないと無理っていうじゃん。このクローンの元ってどこで手に入れたんだろうな。俺の世界で秀星は生まれていない。となれば、別世界の秀星の細胞から造ったんだってね。ずるいよね、父さんたちもさ。別世界に行けるならそっちに逃がしてくれてもいいものなのにさ」

 ここまで告白してくれればあとは容易に想像できる。
「ありがとう、ここまで話してくれて」と朱。
「とんでもない。なにか解決口を見つけられた? ていうか、そもそも、なんの事件解決で動いてるのさ。そっちの征陸刑事は俺の殺人事件かなとは思うけどさ、こっちの世界は事件なんてないでしょ」
「そうかしら? 私たちはパラレルワールドの存在を知らなかった。別世界の人が当然のように入り込んでいるのは問題よ。さらに、入れ替えているなんて、大問題だわ」
「……ああ、そっち。でもさ、入れ替えはないんじゃないかな」
「どうしてそういえるの?」
「そもそも、東金朔夜も東金美沙子も、そして俺も。そっちの征陸さんだってそう。この世界ではすでにいない存在だ。入れ替わって生き続けたら問題だよ。そんなの、俺にだってわかる」
「そうね。今の名前だけならね。狡噛さんのことはどう説明するの? あなたがいろいろ邪魔をしたのよね?」
「そうだよ。子供の姿にされて畜生って思ったけど、まあ、慣れればこの体も案外住み心地はいいんだよね。たいていは子供のしたこととして許されるし、子供というだけで優しく甘えさせてくれる。さらに、子供のいうことは信憑性がないって、本当のことを言っても聞き入れてくれないから、嘘をついても気づかない。世界を移動するっていのは、時空をこえるってことで、時空をこえられたらわずかな歪みで瞬間移動も可能なんだよ。ほかにもさ、結界って超昔の術が見直されててさ、結構便利。順番は、結界をはる、瞬間移動する。そして再び結界をはった場所に戻るってわけ。結界ははったものにしかわからないものがあってさ、感知しやすいんだ」
 この仕組みを理解し問題視するのは、征陸たちの方だった。
「一般化されたら犯罪の宝庫になるぞ、これは」
 まいったな……と頭をかく。
「今度は私の見解の答え合わせをしてほしいのだけど、いい?」
「いいよ。おもしろそう。というか、僕を飽きさせないうちはつき合うよ」
「ありがとう。さっそくだけど、あなたがパパと言った相手、それってあなたの実の父親よね?」
「そうだよ。秀星には父親はいない。脳だけの俺だけど、父親はいる」
「なぜ、朔夜の体を共有しているの?」
「あのさ、朱ちゃん。答え合わせなんだから、質問は禁止。考えてよ。そっちの執行官とかと相談していいからさ」
 すると狡噛が朱にいう。
「考えるな、常守。俺にやらせろ!」
 今度は宜野座が反応する。
「バカをいうな。部外者にこれ以上好き勝手させるか!」
「狡噛さん、宜野座さん、私なら大丈夫。だから任せてほしい」
「常守……」
 と狡噛と宜野座の声が重なる。
「ということだから、続きをしましょう、縢くん」
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