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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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協力者

「唐之杜、考えたくはないが、あながち想像程度ではないかもしれないぞ。裏切り者、協力者、内通者、言い方はあるが、まず、こっちの東金財団は確実に協力者だろう」
 掴みかけたことに光が見えた気がした宜野座が高揚する。
「監視官は東金財団に連れて行かされた可能性がありますね」と、須郷。
「美佳ちゃん、すぐに東金財団に連絡をして」
 と六合塚が叫ぶ。
「え? わ、私が?」
「監視官にしかできないことよ。なんでもいい、理由をつけて今すぐ家宅捜査できるようにして」
 いつになく強い口調で言われた霜月は、言われるまま東金財団に連絡をいれる。
 宜野座がいっても動かないが、六合塚がいえば文句をいいながらも動く。
 六合塚は美佳の扱い方を心得ていた。

「協力者、東金財団の中にいるのは確実とおもっていいのではないか?」
 宜野座が考えを口にすると、狡噛が否定する。
「いや、そうと決めつけて動くのは危険だ。俺たちのいた世界の誰かが紛れ込んでいる。となれば、今現在、東金財団に関係している者と入れ替わっていることもありえる。そうなれば、協力者という言い方はふさわしくない。俺はもっと大きな力が働いているように感じずにはいられないな。俺の組織のトップと連絡が取れれば、もっと的確に情報が入るんだが」
「なあ、コウ。おまえのところの調査員がこっちに来ている可能性はないのか?」
「たぶん、いる。だが、連絡のとりようがない。はじめから飛んだ先で落ち合うなどの場合は、それなりの準備をする。それはとっつあんも同じだろう?」
「そうだが。お堅い警察とは違い、自由度があるだろう」
「自由ったってな、そこまで都合よく……いや、待てよ。方法はあるか。おい、分析官」
「分析官って私のこと? ちょっと慎也くん。私には唐之杜志恩って名前がね。せめて、頼みごとをするならこっちをいい気分にさせてよ」
「それもそうだな。こっちの狡噛慎也とはいい関係だったのか?」
「さあ、どうだったかな。忘れちゃったわ」
「そうかい。じゃあ、分析の女神様とでも崇めればいいか?」
「あら、偶然ね。慎也くんって住む世界が違っても、煽て方って同じなのね」
「へ~、そうかい。芸がなくて悪かったな」
「ぜんぜん、悪くはないわよ。で、なにを調べればいいの?」
「そうだな、街頭スキャンのデータの中から、ここ最近、行動パターンが変わった奴をピックアップしてくれ。人はだいたい大幅に行動パターンはかえない。それが突然変わるっていうのは、なにかがあったからだ」
「コウ、その中の誰かが入れ替わっているというわけか」
「ああ。だが、入れ替わっているだけではないかもしれない。たとえば、ここのところまったく街頭スキャンで色相チェックされなかったのに、突然行動的になった、というのも疑わしい。入れ替わるというよりは」
「そうか。生死さえわからない者が突然行動し始める。しかし色相が濁っていなければ、シビュラは反応しない」
「そういうことだ、とっつあん。で、どうだ、分析の女神様」
「ああ、もう急かさないでよ。待ってね、ちょっとそれだとまだ量が多いから……もっと絞らないと」
「コウ、警察の人間はここにはいない。断言してもいい。だが、俺みたいに無理矢理飛ばされていたらわからないが、それならそれで目立つ動きはしないはずだ」
「わかった。だとすれば、俺の組織だな。調査員の行動パターンがわかればな」
「コウ、おまえが調査を任されたらどうする?」
「俺か? そうだな、やはりターゲットの近くに潜むだろうな。すり替わるか、無関係の人物で近づいて関係を築くか」
「それってどんな人物だ?」
「接触しても怪しまれない……そう、今日の映画館のスタッフのような……そうか、職業だ。人と接触する仕事だ、分析の女神様」
「OK、今やってる。だけどもうひと声ほしいかも。ターゲットはなに、東金財団でいいの?」
「いや、俺たちの組織がこの世界で警戒しているのはシビュラだ。だから公安局の面々のことはよく調べている。そうか、公安局だ」
「あ、いい感じ。ねえ、こんなのはどう?」
 と唐之杜が出した。
 それをみた宜野座は、
「こいつ……」
 となにかを思い出す。
 さらに須郷が、
「彼ならよく秀ちゃんの近くに。たしか常守監視官が気にかけるようにと話されていました」
 というと、
「唐之杜、そいつは今、どこにいる?」
 と宜野座が緊迫した声を発した。
「もうやってる。えっとね、ちょっと、こっちに近づいているみたいなんだけど。あ、今、そこの扉の前……!」
「みんな、ドミネーターを構えろ!」
 宜野座が叫ぶ。
「秀ちゃんはこっち。征陸さん、狡噛もこっちに」
 六合塚が機敏に動く。
 須郷と雛河が一歩前に出て、来訪者を守るふたりの執行官の盾になるように立ったその時だった。
 まるでスローモーションを見ているかのように扉が開き、そこにモニターにある姿と同じ人物が立っている。
 その顔はなぜか笑顔で、
「いやですね、狡噛さん。ずっと近くにいたのに気づきもしないなんて。緊急事態が起きそうだってあの人に言われましてね、先に潜入していました」
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