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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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思惑

「第三者のあてはあるのですか?」
 朱は話を脱線させることなく続けた。
「まあな。だが、コウも被害を被っているとなると、俺のあてははずれているってことだ」
「征陸さんのあてとは、狡噛さんの組織の誰か……と思っていたということですね?」
 朱の答えに征陸は黙って頷く。
 すると狡噛が「冗談じゃない」とボヤく。
 はなっから主犯は自分たちの組織だと思われていたことに腹をたてているらしい。
「まあ、そう怒るな、コウ。仕方がないだろう。おまえたちの日頃の行いが悪いんだから」
「あのな、別に俺たちは他人を殺したりしてないし、これといって犯罪的なことはしてないだろう。なんだって目の敵にする?」
「バカをいうなコウ。おまえたちが単独で世界を行き来していること自体が違反行為。さらに行った先の世界の秩序に関わることは犯罪だ」
「弱き者の味方になるのが犯罪ね。これだから警察は……」
「なあ、コウ。どの世界にも弱者はいる。それらに手を差し伸べたってな、そう簡単に世の中が変わるみんじゃない。その世界にない力や知識を授けたって、使う者が間違えればさらなる悪化になるだけだ」
 正義への定義は人によって違い、その正義を悪と見なす者もいる。
 今、目の前で繰り広げられている会話が、いい例だろう。
「おふたりの抱く正義定義はわかりました。征陸さんの思う第三者のあてが違うのだとしたら、狡噛さんは誰だと思いますか?」
「そうだな……東金財団あたりが怪しいと思っている。たしか、こっちの世界にも存在していたな。こっちでは医学に特化していたと記憶しているが、俺のいる世界での東金財団は政界や技術関係にも根強い関係を持ち、会社の買収や人員育成にも力を注いでいる。私設軍も持っていたんじゃないか? それに相対する関係にあるのが縢家だ。だとすれば、縢家のボンボンがこっちの世界に飛ばされたのにも理由がなんとなくわかってくる」
 朱にとって、東金の名はあまり耳にしたくないものだった。
 この世界では諸悪の根元の存在はないが、財団としてはまだ維持し続けている。
 しかし、だからといってなにかを使用と動きを見せる様子はない。
 だが、狡噛たちのいた世界での東金は、こちらの世界で得た力よりも強大らしい。
「コウ、そうなるとぼっちゃんを連れて戻るのは危険だな」
「だからっておとなしく飛ばされたまんまでいる気はないが? 俺の存在を終えないとわかった時点で、俺の組織も動いているはずだ。だとしたら、警察はもっと早く動いていると考えていい。待っていれば向こうから向かえがくるかもしれないが、それを待つってことは敵の来訪も待つってことだ。それは刑事としてとっつあんの正義に反するんじゃないか。こっちの世界の人を巻き込むのはルール違反なんだろう? まあ、すでに巻き込んでしまっているから、戻れたとして、どんな処罰が待っていることやら……てところだな」
「おいおい、コウ。こっちの不幸を楽しんでいるんじゃないよ。そっちも、こっちの世界までおまえの迎えが来るとして、代表自らとか、参謀自らってなると厄介なんじゃないか? なんせ、もうこっちの世界ではいない人物なんだ」
「……まったくだ。とりあえず、迎えがくる前に戻る。あっちで準備して事案を片づけてからもう一度こっちにきて、縢のボンボンを連れ帰るってのが妥当と考えるが?」
「その案に乗った」
「了解した。ということで監視官。俺たちが自由に動いても問題ないよう計らってくれ」

※※※

 ひとまず、こちらも考えたいことがあるといい、一旦退出をした朱と宜野座。
 宜野座は終始眉間にしわを寄せ小難しい顔をしていた。
「常守、あいつらの話を鵜呑みにするのか?」
「追々、裏付けはとります。こちらとしても長居はしてほしくないという本音がありますから」
「一旦聞き入れるってことか。行動を共にしていれば自ずとわかるだろうということだな」
「そういうことです」
「だが、どうするつもりだ?」
「少し、考えがあります。この件は私に預けていただけませんか?」
「それはかまわないが。ひとりで抱え込みすぎじゃないか?」
「そんなに私って、なんでもかんでも抱えています?」
「ああ、十分すぎるほどにな」
「でも、私にもできることとできないことがあるし、大丈夫です。一度上に報告をだし理解してもらえたら、みなさんに仕事を割り振ります。宜野座さんはみなさんと合流して休憩してください。では、のちほど。分析室で」
 それだけをいうと、朱はひとり上にいくエレベーターに乗った。
 向かった先は局長室、今更報告もないだろう、局長はすでにだいたいのことは知っているはずだからだ。

「それで、すべてを黙認しろと?」
「はい。一係以外の目は誤魔化します。ただ該当キャナーを回避するのは難しい。そこで、縢秀星、狡噛慎也、征陸智己のデータには見て見ぬ振りをしてほしいの。できないことはないでしょう? 彼らを追ってさらに厄介な人が来るのはシビュラとしても望まないことでしょう? あなたがたの求める秩序は根底から崩れるわよ」
「確かに、死んだ人間が生き返ったなどというバカげた噂がでるのは困る。また潜在犯でも逃げきれるというのも困る。だからといって、一方的に了承はできかねる。ということで、期限を設ける。猶予は一ヶ月、その間に来訪者を元の世界に戻せるよう尽力することだ。それともうひとつ、逃亡中の元執行官狡噛慎也の確保だ」
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