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となり

原作: その他 (原作:ハイキュー‼︎) 作者: haru
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となり(春・夏)


満開の桜、澄んだ青空。
あんたの隣に並んだ日と同じ景色。

木兎 光太郎。中学3年、推薦を貰った高校の中からどこに行こうか迷っていた時、あんたを見て俺の高校3年間が決まった。
初めてスパイクを打つ木兎さんを見た時、“スター”だって思った。そのくらい衝撃的で、それほどまでにキラキラ輝いて見えた。
梟谷学園は都内でも有数のバレー強豪校で、例え推薦を貰って入ったとか、入部してしまえば関係ない。練習はとてつもなくハードで、通常の練習終わりに「自主練―!」とピョンピョンしてるのなんて木兎さんくらいだ…。
始めの頃は正直、練習後は歩くのさえ辛かったけど、初めて自主練に誘われた時は嬉しかった。いや、でも木兎さんの「ちょっと」はもう信じないと決めたけど。ほんと規格外だな、あんた。
木葉さん達に心配されたりもしたけど、木兎さんにトスを上げるのはやっぱり楽しくて。高さもタイミングを上げれば上げるほど合っていく。そんな風に自主練をこなし、ベンチ入りし、いつのまにか木兎さんとセット扱いされることが増えた。木葉さん曰く「お前木兎の世話焼きすぎw」
なんだそうだが、いや…先輩方が木兎さんの面倒をきちんと見てくれれば…なんて言葉は何百回と飲み込んだ。
まぁ、でも…。皆んなが俺を“木兎係”と呼んで、“ほんと木兎は赤葦がいなきゃダメだな”なんて言うけど本当の本当はその逆だったりする。いつでもどこでも、教室と校庭くらい離れてたって。「あかーしー!」って。俺を呼ぶあの声が聞こえないと調子が狂うのは俺の方だ。木兎さんには絶対言わないけど。でも言わなくてもきっと分かっている。あの人はそういう人だ。
俺が2年に上がる前、3年生の卒業式が終わって、卒業式の日は体育館は使えませんからねって一ヶ月も前から言い聞かせてたのに「バレーしたい!!!」て騒ぐミミズクを宥めて一緒に帰る途中。あの人は俺に言ったんだ。

「あかーしって、なんでいっつも俺の後ろ歩くの?」
不意打ちだった。意識してたわけじゃない。でも何となく、心のどこかで、バレー以外でこの人の隣を歩くのは俺じゃないって思っていたことを見透かされた感じ。
「後ろの方が木兎さんの行動を予測しやすいから…ですかね」
「さすがに俺迷子にならないよ⁉︎」
「あかーしもさ、もう副主将じゃん?俺の右腕じゃん?梟谷のベストコンビじゃん?」
「丁重にお断りしたいです」
「たまにはノってきて!!!」
「じゃなくて!俺はもうずっと前から隣!空けてるんですけど‼︎だから…あかーしもそろそろ覚悟決めて?」
あぁ。あんたのその目とその声に、俺は逆らえない。逆らうつもりもない。光のようなあんたを見つけてから、俺の3年間は決まってしまったんだから。それなら…例え、今だけだとしても。俺は…。
「!…これからもよろしくな!あかーし‼︎」
そう言って隣で笑うあんたの後ろで満開の桜が風に揺れていた。


赤葦 京治。あかあしけいじ。あかーし。
この1年とちょっとで多分俺が一番呼んだ名前。きっとこれからも。

やっと待ちに待った夏休み!夏休みと言えば合宿だ。ここ数ヶ月、俺の調子は右肩上がり。ブロックもよく見えるし、ストレートも決まる。何より、あの卒業式の日から赤葦が当たり前のように隣を歩いてくれるようになった。もう俺最強―!!!って感じ。そりゃぁ夏合宿も今まで以上に気合いが入るってもんだ。まだ赤葦が1年の頃、自主練に誘った時のあいつの目を見て俺はピピーンときた。何て言うか“俺のセッター”って思っちゃったんだよね。こんなこと言うと木葉には「お前のじゃねーだろ!どんだけ赤葦独り占めする気だよ!」って言われるけど。でもそういうのって感覚的なもんじゃね?上手く言えないけど…そう、なんていうか…こう、俺の本能が告げたんだ!ってこれはいつだったか、黒尾にあのかけ声を作った時の話を聞いた時にあいつが言ってたんだよな。黒尾の気持ちが今なら分かる。とにかく!俺の本能は間違ってなかった。技術はもちろんだけど、毎日のように俺と最終下校ギリギリまで自主練をこなす体力と根性。あと、あかーしはとにかく周りをよく見る。梟谷のことはもちろん、相手チームの状態や雰囲気を観察してプレーを予測する。俺には到底できないそれを、あいつは何でもない顔してやるんだ。すごくね?むしろ俺の調子とか体調に関しては俺よりあかーしの方が分かってる感じする!
夏合宿は朝から夜までずーっとバレー。俺は夢の中でもバレーしてるから、文字通り寝ても覚めてもバレー!ちょーたのしー。日中はもちろん、自主練終わった後も主将ミーティングに出て部屋に戻ってからあかーしと去年の春高の動画見ながらバレーの話する。寝るまであかーしと一緒。ちょーしあわせ。
「…とさん?木兎さん、聞いてました?」
あっ。幸せに浸って聞いてませんでした。
それよりも。
「あかーし眠い?」
あかーしは眠くなるといつものキリッとした雰囲気が少しほわっとするんだ。皆んなはあんまり分からないみたいだけど、俺はすぐ分かる。
「おかげさまで、できれば1秒でも早く布団に潜りたいです」
おっ。今ちょっとだけ俺が気づいたことにびっくりしたな〜。自他共に認めるポーカーフェイスが崩れてんぞ。と言うか、結構分かりやすいんだけどな、あかーしって。
今日もいっぱいありがとう。
「おやすみあかーし。また明日もよろしくな」
「はい木兎さん。また明日」
2人一緒に眠りにつく。
俺はね、あかーし。これからもずっとお前とこうして一緒にいたいんだ。
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