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桃色パンプキン

原作: その他 (原作:デスノート) 作者: 澪音(れいん)
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にじゅっこめ


「真夜中の学校に忘れ物を取りに来たA子は、不気味な雰囲気に気負いながらもゆっくりと廊下を進んでいきました。ぴとん、ぴとんと水道から出る水滴がシンクに落ちる音が異様に響いて聞こえる校内で、A子は懐中電灯を持つ手を震わせながら最上階にある自身の教室を目指してゆっくりと歩いていきます」

「そ、そもそも何でそんな真夜中にそんなとこ行くんだよ!?A子ォ!」

「バカですね、マット君。行かなきゃ話にならないじゃないですか。まだまだ序盤だというのに震えたりしてみっともないですよ」

「それ俺の服引っ張るのやめてから言ってくんない!?」

「お構いなく」

「伸びるわァ!」

日本人は、真夏の夜の定番として蝋燭の灯りの中で怪談を語り合うそうですよ。
なんてにこやかに言ったワタリの提案のもと、仕事がひと段落した後に捜査本部はうっすらと灯る蝋燭の光の中、行われた肝試し。

Lがどこからか仕入れてきた怪談話にマットはあからさまに震え上がり、ニアは平気そうにしながらマットの服を後ろから引っ掴んでいた。

蝋燭の灯りを顔のしたから当てているLの顔はそれほど子供組には恐ろしく見えたらしい。

もはや怪談の内容なんてマット以外は聞いていない。

「メロ君も離れてくれませんか?後ろでブツブツ言われると怖いです」

メロは最初は平気そうな顔をしていたがLの怪談をアシストして青い火の玉が飛ぶ仕組みの器具を用意したワタリのせいで、がたがた震えながらSの背中に貼りついている。

時折「幽霊なんて科学的にも証明された存在ではないし奴らに俺が恨まれることなんてひとつも…したことが…ない、はず…」なんてブツブツ言いながらマットが叫ぶたびにSを引っ張るものだから、Sは違う意味で真っ青になっていた。

「続き話してもいいでしょうか」

「何でそんな乗り気なんだ、L」

「案外話し手は面白いですよ、ここまで反応を示してくれると特に。月君もやってみますか?」

「遠慮しとくよ」

蝋燭の灯りで顔を照らしながらこちらを見るな、とでもいうように手でLの顔を押し返す月にLは不満げだ。

「では続きを話しますよ」

「ちょっと待ってェェ!ニア、今話してないのに何で俺の服そんな引っ張るんだよ?!」

「お構いなく」

「お構いするから!!」

「お構いなく」

「多分、ニアは話というよりLの顔が怖いんですよマット君。許してあげましょう」

「アリーさん顔真っ青!?メロのやつどんな怪力で引っ付いてんの!?」

「そして私の顔が怖いなどと失礼ですよS、私のどこが怖いのですか」

「鏡で今の顔を見てから言ってください」

クールに「そんなもの下らない」とでも言いそうな2人組のキャラ崩壊具合にマットが声を張り上げると「ジャパニーズホラーは別物」だとメロの叫びが響いた。

海外の人間からするとどうやら日本のじわりじわりと来る恐怖がどうやら苦手らしい。

「L、2人も怖がっているし電気をつけたらどうだ?そろそろ解散にしよう」

「3階にたどり着いたA子は、自分の教室の前にある黒い人影に足を止めました」

「聞いちゃいない」

「ひたり、ひたりとこちらにゆっくりと歩いてくるそれは月明かりの中では何なのか良く見えることもできず、「当直の先生かな?」と思ったA子は自身も一歩前に足を出しました。自分以外の誰かの存在がわかると人間は少しの安堵を感じるもので、A子はホッとしながらそちらに歩いていきました。」

窓が風に揺れてカタカタ、と小さな音を立てて雰囲気を盛り上げる。
その時、遠くのほうでキイ、と何かが開く音がして、一瞬にして空気が張り詰めた。

「先生ならば教室まで一緒に来てもらおう、事情を説明すればきっと大丈夫そう思いながら歩いていくと先生が何かをブツブツと言っているのが聞こえます。A子は不思議に思いながら耳を澄ませると前の部分が何かに邪魔されているようにノイズがまじっていて「…ってるの?…ってるの?」と良く聞こえません。」

「ど、どうせこんな夜中まで残っていたのか?とか聞いてたんだろ?ア、アハハ」

「A子は痺れを切らし少し早歩きで先生の下へ駆け寄っていくと、人影だと思っていたものがゆらりゆらりと揺れて何かの影だったことに気づきます。あれ、でもさっきはちゃんと人だったのに。でもこの影一体どこから」

「廊下に立っているように見えた人影は、どうやら別の場所にいる影だったらしく。不思議に思いながら教室の中かな?と首を傾げたA子は上を見上げて大きな瞳を更に見開いて恐怖で引きつった顔で言いました」

「だァー!聞きたくない!もう聞きたくない!」

「マットうるさいですよ、きっとあれです。先生はスパ●ダーマンのように天井に張りついていてですね」

「それはそれで怖いんだけど!?何で天井に張り付いてんだよそいつ!」

「それで?どうなったんだよ、L」

「何でお前はそんな平然としてんだ夜神!?」

「A子が見上げたそこには耳元まで唇が裂けたそれはそれは恐ろしい女が」

バッターン!

「竜崎―!みんなもまだ居たんだね、暗闇だったからもう解散しちゃったかなって思ったんだけどみんなにアイスを買ってきたよ!」

「松田は本当に空気を読む天才ですね、ちょうど暑さといつもより多めに喋ってしまって喉が渇いていたところです。ありがたく頂きます」

「切り替えが早いな…いつの間に蝋燭消したんだ?ワタリも通常業務に戻っているし」

「私は怪談よりもデザートの方が大事なので。」

「夏場はやっぱりかき氷だよね~って…みんな何してるの?テーブルの中に入っちゃって。防災訓練かなにか?」

「松田は気にしなくてもいいですよ。それより早くアイスを下さい」

その後暫く子供組に冷たくされた松田でした、めでたしめでたし。

「めでたくないんだけど!?」


おまけ

「結局あれは幽霊だったのか?」

「ああ、あれですか?昔は電球がそのまま吊るされていてそれが外の光の加減でそのように見えたとかそんな話が歪曲して出来たものですよ。その影が人型に見えたのかは多分見た人間が「幽霊が居る」という思い込みか何かでしょうけど」

「なんだ作り話か」

「月君は流石ですね、怖がらせられると思ったのですが微動だにしてませんでした。」

「日本人はそういう話には耐性がある人多いんじゃないかな、逆にそっちのホラーに慣れてないかもしれないね」

「またやりましょう。今度は洋ホラーのほうで」

「アハハ…お手柔らかにね」

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