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桃色パンプキン

原作: その他 (原作:デスノート) 作者: 澪音(れいん)
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じゅうきゅうこめ


大抵の人はこうだった。

私が少し子供らしからぬことを言えば、どこか気を使った様子を見せながらも結局私と関わることで自身が不快な思いをすることを避けるように自己防衛として私を避ける。

そんな大人を見てきた私は、冷え切っていた。

だからどうせ彼らも、私が変わらずに突っぱねる態度を取っていれば飽きてどこかへ行ってしまうだろうと。

心に何重も鍵をかけてその中に引きこもった。

そうすることでしか、自身を守るすべを知らなかったのかもしれない。

けれど、どんなに冷たい態度を取っても、時には彼らを無視してしまった時でも、彼らは次の日には変わらずに接してくれたんだ。

最初は同情かと思った。
人は同情しあって生きていく。
ここの子供は皆孤児であり、その中で自分よりも「哀れ」な人間を見つけては自分はまだ大丈夫だと安堵を得て生きているのだと思っていた。

けれど、どんなに冷たい態度を取っても、彼らは私に対する態度をこれっぽっちも変えやしなかった。

同じ部屋に居たとしても何かを会話するわけでもなく、お互いに好きなことをしているだけだというのにそれを嫌だと思わなくなったのはいつのことだったか。

彼らが部屋に来ない日は何かあったのかななんて心配し始めたのは何がきっかけだったのかなとか。

ふっと今考えるとわからないことだらけの不思議な関係は、きっとあの日から彼らと私が作り出したもので、それを私は軽んじていたのかもしれない。

彼らの気持ちを知るのが怖くて目をつぶっていただけなのかもしれない。

私はあの頃と何ら変わっていなかった。
あの頃から進んでいるようで、心はどこかに置き去りのままだったのかもしれない。

きっと彼はあの時の約束なんて覚えてないと、勝手に決めつけて約束を破ったのは私だった。

「すみませんでした、メロ。約束を破ってしまったのは私の方でしたね。怒られて当然です」

黙っている彼は顔を俯けて、その姿があの日雨の中に立っていた彼と酷似して見えてそっと彼の頭を撫でた。

「会いに来てくれてありがとうございます。迎えに行けなくて、約束を破ってしまってすみませんでした」

あの時よりも随分大人びたメロが、勝手にあの時と違ってしまったと思ったのも私だけ。

メロはあの時と何ら変わらない真っすぐなままだった。

外見が変わってしまったけれど、中身はあの当時と変わらない、可愛い私の弟分のままでしたね。

さあ、未だに拗ねてしまっている弟分の好きなチョコレートを持って行きましょうか。

そうして、離れていた8年間の話でもしましょうか。

にこ、っと笑った私にメロの表情は顔を俯けていて良く見えなかったけれど、わずかに見えた口は緩んでいて私も自然と笑顔になった。

「アリーさん」

小さく聞こえた彼の声に耳を傾けた。

「生きてて、よかった」

この胸にじんわりと広がっていく、くすぐったいようなそれでいて心地いい何かを言葉に表現するならばなんというのでしょうか。

ちらりと私の方を見たメロは、私の顔を見て照れ臭そうに眼を逸らしてから、また私の目を見てくしゃりと笑った。

それを見た私はまた、胸に熱を持つのが分かった。

「はい、私も今実感しています。生きてメロ君に会えてよかったです」

彼と私の関係性はなんなのだろうか。

友人、とも少し違う気がする。
もっと近しいような、親しみを持ったような。
それじゃあ親友なのだろうか。
それもどこか彼とは違って見えて。

でも今すぐに彼との関係性に名前を付ける必要はないのかもしれない。

目の前で嬉しそうに8年間のことを話すメロ君を見て、私は早急に答えを出すことをとても惜しく感じたから。

メロ君の後ろからパタパタと駆け寄ってくるマット君と、その後ろから歩み寄ってくるニア君を目に止めながら私は少しの休息に浸ることにした。


* * *
おまけ

(LとS)

「メロと揉めていたようでしたが、大丈夫でしたか?」
「おや気付いていながら見て見ぬふりをしていたのですか?世界の名探偵ともあるお方が」
「あの場合はそっとしておくというのが日本人の美徳だと学んだ気がしたので」
「君はいつから日本人になったのですか?」
「郷に入っては郷に従え、ですよ。S」
「あなたがいつ日本の風習に従ったのかじっくりと聞きたいところですね」

(Sとメロ)

「そう言えばアリーさん、俺ってハウスに居た時とどこが変わったと思うんだよ」
「何ですか藪から棒に。」
「マットの奴が、アリーさんがハウスの時とは変わった俺の事を見て、あの時を懐かしんでたって言うから。」
「ああ…そう言えばそんなこともありましたね。大人になったら誰しもが変わるものですよ、メロ君。例えば素直で可愛らしい男の子が8年後に会ったらロックでも歌いだしそうな見た目に変わっていたりだとか」
「?ロックを歌いだしそうな奴…マットか?」
「あの子は……」
「お、予約してたゲーム明日くんだな。仕事帰りに取りにいこーっと…なんだよ、アリーさんもメロもこっち見て、あ!もしかして俺に見惚れてた?!」
「変わらねぇな/変わりませんねぇ」

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