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ピロピロピロピロピッ



『ん"ーー…』



祐一は今日も、携帯のアラームに起こされる。




平凡を絵に描いたような男、神谷 祐一は、大学に行くために重い腰を上げた。




高校では、すぐに就職したくなかったので、なんとなく今の大学を受け、かれこれ2年目である。



特にやりたいこともないので、安定の公務員である、教師でもやろうかと考え、それに向け授業を取っていた。



その授業は１限目にあることが多く、朝ゆっくり寝ることがあまりできないでいる。



受け始めて、そのことに気づいた祐一は、今からでも変えようかとここ最近、毎日考えていた。



そしていつも通りの時間に家を出て、大学へ行く…はずだった。



そう。はずだったのだ。



祐一が大学へ行くために、家から出した第一歩目は、地面につくことなく闇に吸い込まれていく。




『…は？』




祐一は声もあげることなく、その闇の中へ消えていった。




そして、祐一を飲み込んだ闇は、祐一を完全にのみこんだあと、静かに消えた。


まるで何事もなかったかのように…




そして、祐一は唖然としていた。




落ちると覚悟し、次に来る衝撃に備え、目を閉じできるだけ身体を小さくした…が


なかなかその衝撃が来ない


おそるおそる目を開けると、そこには…




"烏野高校"




『…いやいやいや、俺の家の前は学校なんてなかったはずだが…

どうなってんだ？』



状況を確認すべく周りを見渡してみる。



何度見てもここは高校のようで、生徒たちが門を目指し歩いているのが見える。


そして、もう一つ気づいたことが…


自分の服装だった。


先ほどまでは、オシャレとは程遠い、無難なパーカーにジーンズという、どこにでもある服装だったにも関わらず、今祐一が身につけているのは…



『…何で学ランなんだよ…コスプレじゃねぇーか…』



祐一は考えた。


あの空洞に落ちた時一体何が起こったのか…


家を出ればいつの間にかあった空洞、目を開ければ見知らぬ学校の前、そしてそこの学生服らしき学ランを着ている自分。


ただでさえ、パニックなのに処理する必要のある情報が多すぎで混乱し始めた祐一は…



『…はぁ…めんどくせ。』



考えるのをやめた。