ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

山姥切国広極めたらもう一人増えました

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: レジス
目次

山姥切長義の告白


ひやりとした感触が額に触れているのが分かる。
「国姫……」
心配そうに私を呼ぶ声が聞こえた。
あぁ、長義だ。
そう思ったら意識が覚醒してくる。
瞼を開けると心配そうに私の顔を覗き込んでいる長義と目が合う。
「っ!!」
長義は驚いたようで慌てて離れる。
「長義……おはよう?」
「もう夜中だよ」
「えぇ?!おやつ食べ損ねた……」
「好評だったよ」
「一切れくらい残しておいてよぉおおおお……」
「短刀たちを前にしてそれを言えると思うか?」
「無理だ……」
あの可愛い短刀たちの口に入ったと思えば我慢できるか……
「まぁじゃんけんで勝ち取ったのは俺だけどな」
「大人げない!」
短刀と張り合うなよ……と非難の目を向ける。
「そ、それよりも体は大丈夫か?倒れたと聞いて驚いたんだぞ」
露骨に話をそらしてきた。
「……別に、異常はないよ」
あの時の頭痛も今は特に無い。
しいて言えばあぁ来てしまったかという気持ちだ。

短刀の姿をした骨喰藤四郎。
それは山姥切国広の本丸にいた被験者の一人だ。
最近夢を通して山姥切国広の記憶を見ることが多く、その中に骨喰藤四郎もいた。
審神者は意図的に亜種を創りだせないかと呪術と刀剣男士を使って実験を繰り返している。
資材を多く使うため手入れもろくにしてもらえないような劣悪な環境に山姥切国広はいたんだ。
そんな状況に気が付いた長義が本丸を摘発しようとしたのが事の始まりだった。

「なぁ……何があったんだ?」
長義が聞いてくる。
迷惑をかけたくない。
口を閉ざすこともできたが長義の目が「話せ」と言っていた。
私は観念して口を開く。
「私は……元々別の本丸の山姥切国広だったんだ」
私の言葉を予想していたのか驚く様子は無い。
「……そこでは酷い実験が行われていた。骨喰のように姿を変えられたものから失敗すれば刀剣男士の存在を歪めるようなものまで……世に言うブラック本丸、というやつだろう」
「その体はそのせいで?」
その問いには少し悩んだが首を横に振る。
では何故?と問いかけられてどう答えたものか悩んだ。
「私は、純粋な山姥切国広じゃないんだ……半分、人間の女性の魂が同化している。そのせいでこの体になっている」
何故か長義には不思議と全てを話す気になる。
私の答えを聞いた長義はさすがに驚いたのか息をのむ。
「それは、大丈夫なのか?」
「あぁ、特に問題はないよ」
夢で彼の記憶を共有しているのと山姥切の器に染みついた経験以外はとくに問題は無い。
ふいに長義の手が伸びてきて私の横顔を撫でた。
その優しい手つきにドキリとする。
「……純粋な山姥切国広は折れた。そして色々あって死んだ私の魂と出会ったの。そこで彼に仲間を助けて欲しいと頼まれて、私は承諾したわ。そして気が付いたら眼の前にここの山姥切がいた」
「待ってくれ、その言い方だと今表に出ている人格は取りこんだ女性の魂のほうになのか?」
その言葉に私は頷いた。
「彼の記憶と経験だけを受け取って私はここにいる」
そう言えば長義は参ったように天を仰いだ。
「なんてことをしてるんだ偽物くんは……!」
「彼を責めないであげて、私も危険は承知でお願いを聞いたんだから」
「そうじゃない!いやそうだけど、そうじゃないんだ……!」
長義の様子がおかしい、一体どうしたんだろう。
「まぁ、このままここにいては主に迷惑がかかるだろう……だから、夜が明ける前には出て行くよ」
「ま、待つんだ!」
私をその場に縫い止めるようにガシ、と肩を掴まれる。
「主も俺も、誰だって君が何者だろうが気にしないし迷惑だなんて思わない!」
「でも……」
そうは言っても私がここにいることであの本丸の事に巻き込んでしまうのは確実だ。
迷惑がかからないわけがない。
今私にできる一番の行動はここを去ることだと思ったんだけど。
「でもじゃない!君がブラック本丸から来たことくらい主は分かってた。そのうえで受け入れると決めたのは主だ」
「え」
まさかのバレていた。
そのうえで受け入れてくれていたなんて気が付かなかった。
「私は……ここに、いていいの?」
「いい」
そう断言されて肩に入れていた力が抜ける。
それを確認したからか長義の手が肩から離れた。
「……俺だって君の力になる。だからいなくなるなんて言わないでくれ」
「長義……」
「それに君が完全な偽物くんじゃないと知って少し安心もした」
「ん?」
なにやら話が違う方向に向かい始めた気配がする。
長義を見れば何かを吹っ切ったようないい笑顔を見せていた。
「俺が好きになったのは山姥切国広ではなくその中身の魂のほうだったんだな」
「ええ?なんて??」
今長義らしくない言葉が聞こえた気がするんだが。
私が困惑していると掬い上げるように片手を取られる。
何をするのかと困惑していると持ち上げた手に流れるように口付けてきた。
「?!?!?」
一体何が起こっているんだろう。
私の思考回路はショート寸前。(古い)
「俺は、君が好きだよ」
「え、好き?え?なんで??」
「しいて言うなら性格が好みだったから、だな」
あの長義が私をSUKI?何を言っているのか分からない。
混乱していると長義は言った。
「素直に全部話してくれてありがとう。返事は聞かないけど逃がさないから覚悟しておいてくれ」
え、私はいったいどうなってしまうんだろうか。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。