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山姥切国広極めたらもう一人増えました

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: レジス
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演練2


ごめんなさい、と謝ると二人は再び膝から崩れ落ちた。
その姿がまるでコントのようで笑いそうになってしまう。
「あの、貴方達のものになることはできないですけど……お友達にならなれます」
「国姫?!」
いいの?と祭さんが聞いてくるので頷く。
この二人は完全に悪い人に見えない。
なら仲良くしても大丈夫だろうと思えたからだ。
私の判断に長義は呆れたようにため息をつく。
「今求婚した相手にそれを言われるのはダメージがすごいと思うよ」
「そうだな」
「え?あ、そっか」
山姥切国広にも言われて自分が結構酷いことを言ったと思い至った。
慌てて謝罪すると男性はそれを遮る様に
「謝らないでください。失礼なのはこちらなのにお友達になってくれるなんて優しい心の持ち主である貴女に酷いなんて言ったりしませんから。なぁ三日月?」
「うむ、そうだなぁ。残念ではあるが友人になってくれるというなら喜んで」
「ありがとうございます」
二人の優しさにお礼を言うと男性も三日月も微笑みを浮かべる。
「さて、さっきは失礼しました。俺の名前は暁(あかつき)です。何か力になれることがあれば連絡をください」
そう言って男性、暁さんは名刺のようなものを祭さんに渡した。
祭さんもそれを受け取って、代わりに自分の名刺を渡す。
「私は祭です。もしもの時は遠慮なく連絡するんで覚悟していてください」
「手厳しいなぁ」
「もちろんお友達料金で動いてもらいますからね」
「はは、わかったよ。じゃあ行くぞ三日月」
先ほどとは違い和やかなムードでやりとりをして暁さんは三日月を連れて離れて行ってしまった。
私は祭さんに謝る。
「すみません」
「いいのよ、貴女を連れてくるって決めたのは私なんだから。これくらいは予想内よ」
むしろ軽い方、と言って祭さんは笑った。
「問題は次の演練相手だから」
「え」
「国姫には言ってなかったけど私って結構上位のランカーなの。ランカーは時々演練に来てやらなきゃいけないことがあるのよ」
祭さんがランカーとは驚いた。
つまり審神者として強い人ってことだよね。
「やることですか?」
「そう、素行不良の審神者の相手をして審神者適正を見極めるっていう役割があるの」
「つまりこれから対戦する相手の素行は悪いってことですね」
私が言えば祭さんは頷く。
「もしかしたらもっと嫌な思いもさせちゃうかもしれないけど大丈夫?」
「大丈夫です」
「ありがとう」
そう話して私たちは演練の場所へ向かうのだった。

****

「刀剣女士なんて珍しいもん見せびらかしてんじゃねーよ」
対戦相手の審神者は高校生くらいの女子だった。
彼女は祭さんの隣にいる私を見てそう吐き捨てる。
「まぁうちのダーリンたちに敵うわけないけどぉ」
あはは、と笑って挨拶もせずに演練場の指定席に行ってしまう。
祭さんはおもいっきり顔を顰めている。
「あの、主……」
「あぁ、国姫には見えちゃった?」
その言葉に私は頷いた。
女の子を見た時、彼女に絡み付く沢山の色とりどりな糸が見えたのだ。
あれはよくない、そう直感が告げている。
祭さんは困ったように頭をかいて自分も指定位置に移動した。
行ってきまーす、と演練メンバーが戦場に入っていくのを私と長義と山姥切国広は見送る。
「あれだけの量の糸が絡まっていると神隠しされるのも時間の問題なのよね……」
ボソリと祭さんが呟いた。
その言葉にぎょっとする。
神隠し、そんな言葉をここで聞くとは思わなかったのだ。
「そう、あれは刀剣男士たちから審神者に与えられた加護の数。その数が多ければ多いほど彼女の本質が人ではなくなっていく」
「それは、危ないんじゃ……」
人が人じゃなくなるなんてそんなこと本当に起きるんだろうか。
分からないけどそれが本当なら彼女は今かなり危険な状態だということになる。
「危ないわよ。すぐにでも隔離しなきゃいけないほどにね」
「じゃあ演練なんてしている場合じゃないです!」
「それがそうでもないんだよ国姫」
私を安心させるように長義が言った。
「演練場内と外では一時的に結界で遮断される。つまり今彼女はお供の刀剣男士以外との縁は薄れている状態なんだよ」
「そうなの?」
「そうさ。つまり彼女を保護するなら今しかないってことだね」
その言葉の通りか、彼女の元に審神者とは違った制服を着た人達が集まっていくのが見えた。
一言二言話したと思ったら彼女は連れていたお供から慌てたように離れる。
「ほら、保護が始まった」
「やっぱり望んで神隠しを受けようとしていたわけじゃないみたいね」
私はその様子をじっと見ていた。
お供の刀剣男士がニタリと恐ろしい笑みを浮かべる瞬間を。
ビクリと刀を持った手が何かを警告するように震える。
その衝動のまま私は走りだした。
後ろでは長義たちが慌てたように私の名前を呼ぶ。
でも立ち止まれなかった。
まるで手に持つ山姥切国広があの審神者を守ってあげろと言っているようだ。
私は反対側の演練席にたどり着くと彼女の前へ。
驚いている彼女を無視して、彼女からお供の刀剣男士に向かって伸びる糸を掴んだのだった。

途端に意識が暗転する。
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